海の都市アクアガーリー
タイトルと中身のギャップ半端ないです。タイトルが違和感ないのは途中までです。
検問所を通過する人達の列に並ぶとバルドさんが、
「ここまで護衛して下さってありがとうございました。それで、レン殿はこれからどうするつもりですかな?」
と、言ってきた。
「とりあえず今日は宿を探してそのまま寝ることにします。つぎの日から正式な冒険者になるためギルドに行ってみたいと思います。バルドさんは?」
「なんと!まだ冒険者の方では無かったのですか!それであのゴブリン達から傷1つ負わずに…今後に期待が持てますな!お金に余裕が出来ましたら是非うちの店をご贔屓に…
おおっと、私の今後の予定でしたな…私はこれから奴隷商の元に行ってあの娘達を降ろす予定ですな。私はこれでもアクアガーリーに籍を置くバルディ商会直属のバルディ奴隷商の店長をしているので、また奴隷が欲しくなったり、不要になったら是非。
色を付けさせて頂きますので。」
とバルドさんはニッコリ笑って言った。バルディ商会は店長も出張に行かせるアクティブな商会なんだなーと思ったが、それを言っても仕方が無いので、
「こちらこそ、その時は宜しくお願いします!」
と、応えた。
そう言えばまだウィーネリアがまだ荷馬車の荷台に乗っているから、
「バルドさん、ウィーネリアを荷台から降ろしてもいいですか?」
と聞くと、
「いいですとも。おーい、ウィーネリアは降りてきなさい!」
と、バルドはウィーネリアを呼んだ。
「ただいま行きます!」
とウィーネリアは応え、荷台から降りて俺の元へ来た。
「すいません、そろそろ検問所の近くまで来たのでウィーネリアさんの通行料もありますから一緒に、と思ったので…」
「そうでしたか、お心遣い、ありがとうございます。」
と言ってウィーネリアはぺこりと頭を下げた。
するとバルドさんが、
「いえいえ、レン殿とウィーネリアの通行料もお払いします。護衛料の意味も込めてですので。」
と言ってきた。
俺もそこまで金は無いので、
「すいません…ありがとうございます。」
と言うとバルドさんは笑って、
「ホッホ、期待が持てる冒険者に投資させて頂くまでですよ。」
と言ってくれた。本当に良い人だ、お店にもちゃんと行かなきゃな、と心の中で決心した。
ほどなくして順番が来ると、バルドさんに通行料を払ってもらった。その後すぐにバルドさんと再会の約束をして別れた。
検問所を通り過ぎると目の前には綺麗な海が広がっていた。波が夕日によってオレンジ色にキラキラと輝いている。
検問所はちょっとした丘で、それでいて町には高い建物が無いので湾が一望出来る。そしてその光景は大航海時代のカリブの港町を彷彿とさせ、好奇心がくすぐられる。
少し興奮気味になりながらウィーネリアに、
「凄いねウィーネリア!海がめっちゃ綺麗だなー!」
と言うと、ウィーネリアも感動したらしく、
「はい!凄く綺麗です…!海とはこんなに綺麗なものだったんですね…」
と、うっとりした表情になった。
そんなウィーネリアの表情にドキッとしながら、
「ウィーネリアって海を見るの初めて?」
と聞くとウィーネリアは
「はい、故郷は内陸の方ですので。」
と応えた。
「ご主人様は初めてではないのですか?」
とウィーネリアが聞いてきたので、
「うん、港町って訳では無いけど車…いや、徒歩1時間で行けるとこだったんだよね。まあこんなに綺麗では無かったけど…」
と、応えると、
「それではご主人様は船というものに乗ったことはありますか?」
と聞いてきたので、
「あるよ、あの湾に泊まってる船よりもおおきいのにも乗ったことあるなー。護衛艦…まあ軍艦だけど」
と応え、
「あとウィーネリア、『ご主人様』はちょっとやめて欲しいな。そういう立場になったこと無いからなんかこそばゆい。レンって呼んでよ。」
と言うと、ウィーネリアは少し顔を赤らめて、
「い、いえ、奴隷ごときが呼び捨てなんて…せめて『レン様』でお願いします。」
と言ってきたので、それでオーケーした。
アクアガーリーの本通りはかなり人が多いのでウィーネリアと手をつなぎ、歩いて宿を探していると、すぐに良さげな宿を見つけた。名前は「潮風の波止場亭」で、日本語では無いのだが何故か読める、という変な気分だが、まあいい、早くご飯を食べて休みたかったのでドアを開けると、
「いらっしゃいませー!ギルド公認のこの町で1番格安の『潮風の波止場亭』へようこそ!1食5アットのご食事になさいますか?それとも1泊朝食夕食付きシングル30アット、ダブル59アットのご宿泊ですかー?」
と、横からマシンガンのような早口で受け付けらしき少年が用件を聞いてきた。
「朝夕食事付きのプランで。一応一週間分。とりあえず先に飯で、部屋の案内は後でお願いします。あ、それと部屋はシングルの二部屋で。」
と、勢いに乗せられて、若干コミュ障が入っている俺とは思えないほど早く注文する事が出来た。
「かしこまりましたー!それでは適当なテーブルに座ってお待ちくださいませー!」
と大きな声で言うと、厨房に走っていった。すると後ろにいるウィーネリアが、
「レン様、一部屋ではなくて良いんですか?その方が安いですよ?奴隷に気を使わなくても大丈夫です。それとご飯は宿の主人に言えば奴隷用のを作りますから。」
と言ってきたので、とりあえず近くのテーブルに座らせて、
「ウィーネリア、確かに今の君の立場は奴隷だよ。でも少なくとも俺はウィーネリアを『人』…まあ『狐人』だけど…とにかく普通に接するから。だからご飯は同じもので、な?それにいきなり今日出会ったやつと一緒の部屋で寝ろなんて落ち着かないっしょ?しかも一部屋って事は、推測だけど、床にでも寝るつもりでしょ?今まで読んできた本でも大体そんなんだったし。同じ部屋ってのは、とりあえずまずはお互いの事を知ってからにしましょ。」
と言って説得した。
(やっぱこの世界も奴隷の扱いはそんなに良くないっぽいなー。バルドさんはかなり優しい部類に入るのかもしれない。)
と考えていると、ウィーネリアが泣いていることに気づいた。
「ほわっ!?どうした!?」
と聞くとウィーネリアは嗚咽を交えながら、
「うっ…す、すいません…奴隷になっ、たら…もう普通と同じ生活に戻る事なんて出来ないと思っていました、から…こんなに優しくされるなんて、ましてや前よりもいい生活が出来るとは、ひっく…思ってもみませんでしたから、つい、感極まってしまって…すいません、もうこんな歳なのに…」
と言って肩を震わせていた。
俺は静かに、
「こんな時に掛けるベストな言葉が思い付かないけど…その…なんと言うか…もう大丈夫だから、な?」
と言うと、ウィーネリアはこくんと頷いた。
少年によって料理が運ばれる頃にはウィーネリアも泣き止み、二人一緒にご飯を食べ、食べ終わった後、お互いの事を知るために、それぞれの身の上話をすることにした。
湿っぽくなってしまいましたが、早いか遅いかの違いですので…
2/6修正・加筆しました。