山越え
まだ日が登りきっていない頃、俺はリーシャより先に起きた。膝にはまだ幸せそうな顔でリーシャが寝ている。頭を数度撫でた後、ゆっくりとリーシャの頭が乗っている俺の膝と枕を交換し、立ち上がり伸びをした。ボキボキと体が鳴る。とりあえず飯を作るために、火を起こす。火種はまだ残ってたので楽だった。
買った調理器具と野菜を水で静かに洗う。洗い終わると簡易テーブルに置いて虫が寄らないように布で覆い、マジックポーチから牛乳、卵、砂糖それとパンを取り出し、フレンチトーストを作るための準備をする。リーシャさんは結構食べる人なので俺の分以外に、パンを2枚大きく切った。
パンを液に浸してテーブルに載せ、布を被せる。
俺はマジックポーチから10cm位のソーセージ2本を取り出し、小さめのフライパンに載せ焼く。ジューといい匂いと音を出しているところでリーシャが起きた。
「おはようございますリーシャさん。少し待って下さいね。あともう少しで朝食が出来ますから。リーシャさんも食べますよね?」
「あ、ああ!是非頂こう。何か手伝える事は無いか?」
俺はもう少しですからとリーシャの申し出をやんわりと断り、焼けたソーセージを取り出した大皿に載せてテーブルに置く。
浸しておいたパンを大きめのフライパンで焼き、焼き終えると先程の大皿に載せる。後は野菜をちぎり、塩を振って皿に盛り付けたら完成だ。牛乳(牛的な家畜から取れる乳)も忘れない。
椅子を取り出してテーブルのところに置き、リーシャを座らせて朝食を食べた。
特に甘いフレンチトーストが気に入ったようでペロリとたいらげていた。
朝食の後、すぐに俺達は支度を整え山を登り始める。一応リーシャに気を使い、蛇行しながら登山することにした。山を登っている最中、しきりに何かを拾っていたので聞いてみると、採っているのは薬草らしい。高価なのもあるらしくホクホク顔だ。うん、可愛い。
モンスターにも会わず3時間程登ると頂上に着いた。そして目の前には今いる山より一回り大きい山々が連なっている。予想以上に早く登ることが出来て嬉しい誤算だ。まあ標高も1000m行かない位だからこれくらいが妥当なのかも知れないが。
頂上で水分補給をし、おやつ(余ってたウィートボール)を食べ、今度は下山する。登山の時とは違い、30分に1、2匹の間隔でモンスターと遭遇した。遭遇したのはファンタジーでお馴染みの
オーク(D級)
ロングテールスコーピオン
カモフラージュウルフ(C級)
だ。カモフラージュウルフは名前の通り、地形に溶け込むような毛の色で、ここでは緑色だった。他にも様々な色の種類があるそうだ。それらを狩って素材をマジックポーチに入れつつさらに山を下る。
下山し終わる頃には真昼になっており、このまま疲労が溜まった状態で亜龍討伐に行くと俺はともかくリーシャが危ないので今日はここで一夜を過ごす事にした。
「それじゃ、今昼食のサンドウィッチを作るんで、少し待ってて下さいね。」
と言って俺は簡易テーブルを出し、昼食の準備をする。
「む、私の事は気にしなくていいんだぞ?私も一応食糧を持っているぞ?」
「それはいざと言う時に残しておいて下さい。今ぐらいはちょっとでも手の込んだ料理を食べましょう。」
「本当にレン殿はお優しいのだな...ありがとう。」
そう言ってニコッと微笑む。俺はいえいえと照れ気味に応え、マジックポーチからパン、チーズ、ハムとレタス(的な野菜)を取り出してちゃっちゃとサンドウィッチを作る。それだけだと物足りないので、まだ残ってあるシチューを温め直して皿に盛る。
昼食を食べ終わった後は、特に何もすることがないからリーシャに薬草学を学ぶ事にした。リーシャは人にものを教えるのが好きらしく嬉々として俺に薬草学を教えてくれた。
「これはヨロロイ草と言って、やけどに効く。だが大量に摂取すると体が少し痺れるから注意してくれ。それでこっちのは...」
とリーシャと俺のマンツーマン授業をしていると俺のレーダーが反応した。距離は約500m、時速までは分からないがここに到達するのに2分は掛からないだろう。というかそいつの察知範囲は500m位あるのか...だとするとウルフ系か、もしかしたらワイバーン、ドラゴン系かもしれない。...この速さは飛行系かもしれない。俺は得意気に薬草の説明をするリーシャの口を手で少し強引に塞ぐ。その時目を見開いて何故か顔を赤くしてたのは追求しないでおこう。
「しっ...あと少しでここにモンスターが来ます。一応戦闘の準備を。敵が現れてからゆっくりと俺から離れてください。その間俺が引きつけるんで。それまで俺から絶対に離れないでくださいね。」
俺がそう言うとリーシャはこくこくと首を縦に振り、左手にダガーナイフを、右手は俺の左手をぎゅっと掴んだ。俺は大太刀を手に取り、地面に含有している鉄を生成し、針と球状にして敵が現れるのを待った。




