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遠出

港の方がうるさいのをバックに、俺はトボトボと家に帰り、ドアの鍵を開けて入った。するとドアの前にはオリヴィアがいた。俺の帰りを待っていたらしい。


「一応ほぼ全ての戦艦は沈んだから。一応ここの防衛に必要な最低限の戦艦は軽い損傷で残しておいた。」


「本当にありがとう...感謝のしようがない...」


ちょっと涙ぐんでいるオリヴィアの頭を撫でて落ち着かせ、もう夜が遅いからとオリヴィアを部屋に行かせて俺も自室に向かい、すぐに眠った。




目を覚ましたのは昼前だった。皆は俺に気を使って起こさないでくれたらしい。


自室のドアを開けると、ちょうどティーとテュイがいたので二人を両肩に乗せダイニングルームへと向かった。ケイトを除く皆におはようと言いつつ、ティーとテュイを下ろしテーブルに座った。




朝食を食べ終わると俺はすぐに外出の支度を整える。鎧を込み、ギルドに行ってきますと言って家を出た。


そろそろ金を稼がねば...


そう思いつつ買い食いをしながらギルドへと向かった。




「やあケイト。」


「こんにちはレンさん。今日はどのような依頼を?」


ふざけてA級の討伐依頼をと言ったが、ケイトに笑われながら、


「そんなに頻繁にA級は出ませんよ。」


と言われてしまった。気を取り直してB級の依頼を見てみると



「亜龍(小)の討伐 一体につき1万アット 素材の買取 可」



というのを見つけてこれをやりたいとケイトに言った。少し微妙な顔をされて理由を聞くと、なんでもこの亜龍がいるのはここから北東にある一つ山を超えた所にある山脈の中腹で、亜龍の他にも上位種が沢山いるらしい。あくまで「らしい」なので依頼は出されていないそうだ。




少し渋っていたケイトだったが、なんとか説き伏せて依頼を受けることが出来た。最後に3日は帰らないと伝えて小金貨を数枚渡し、ギルドを出た。


携帯食料と水、簡単な調理器具と食材、それと温かくて肉がゴロゴロ入っているシチューを鍋一杯に買い、マジックポーチに入れた。マジックポーチに入れてれば冷めないし腐らないし、本当に便利だ。




北門を抜け前方に見える山に向かい歩き続けて5時間...たまに通り過ぎる商人に手を振り、ちょくちょく襲ってくる鷹のようなモンスターを狩り続けてやっと山の麓まで到着した。この頃には空も藍色とオレンジ色が混ざったような色合いだった。



とりあえず山越えは明日にする事にし、火を焚いて携帯食料の干し肉を炙って(かじ)る。そしてシチューで流し込む。それを数度繰り返してから、俺は地面を見る。地面に鉄がまばらにあるのをイメージする。それを魔力を注ぎながら一つにまとまる感じにイメージする...すると


「出来た...!」


俺の目の前には鉄の塊が浮かんでいた。やはり出来た。ウィーリから貰った物質魔法が使えるようになる素質を貰っていたから、もしやとは思っていたがこうも簡単に出来るとは。

俺は鉄の塊を針状に成形する。水や氷とは違い、ある程度硬い固形を変形させるので多少魔力を多く使う。だがそれも微々たるものだ。対モンスターに致命傷を与えやすくなる事を考えれば逆に氷魔法よりコスパがいいかもしれない。


俺が気分良く干し肉を齧っていると、俺の左側数十メートル先に1人、人がいるとレーダーが反応した。レーダーが反応したという事は相手さんが意識してこちらに来ているという事だ。焚き火の煙を見つけたのだろう。



一応大刀を足元に置いて肉を齧っていると、敵対する意志はないような振る舞いで歩いてきた。片手をこちらに振っている。よく見るとそいつは全身をオリーブ色のマントに身を包み、顔はターバンというか、布を目以外の部分にグルグルと巻き付けていて、ランドセルくらいの大きさのハンドバッグを肩にかけている。武器らしいものは見えない。多分ダガーをマントの下に仕舞っているのだろう。


「こちらに煙が見えたものでな。貴殿の他には仲間はいないのか?」


おおふ、まさか女性だとは。


「いいえ、単独でモンスターの討伐に来ているので。ここで朝を待とうかと。」


俺がそう応えると、


「それは丁度良い。済まないが朝までここに居てもいいだろうか?」


と言ってきたので、良いですよ応えるとありがとうと言ってマントを脱ぎ顔の布を取った。布の中身は...ダークエルフだった。銀髪のロングヘアーだ。装備は内側に湾曲した胸当てしかなく、小さめの地味な服を着ている。同い年位の顔立ちだが、ダークエルフなので年齢は俺より上だろうと推測する。年上扱いしとこう。身長は俺よりちょびっと、ほんっのちょびっと高い。


そして...うん!Eかな!しかも多分下着を着けていない。垂れてなければ良いが…



俺が地面に敷くタイプのクッションを渡すとありがとうと言ってニコリと微笑み座り、干し肉と硬そうな黒パン(ライ麦パン)を取り出した。女性が食べるには少し優しくないなと思い、俺は予備の皿に盛ったシチューとスプーンをどうぞと言って渡した。すると満面の笑みでそれを受け取り、美味しそうに食べ始めた。美女が美味しそうに物を食べるのを見ているとこちらも口角が上がってくる。特にゴロっとした肉を頬張ってるお姿はもう...!眼福です。




二杯目のおかわりを渡したところで、ダークエルフは自分の名前を名乗った。


「私の名前はリーシャだ。貴殿は?」


「レンです。リーシャさんはなぜ一人でこんなの所に?」


「私は王都に魔族軍の密偵として潜入していた一人なのだが、王都の警備がかなり厳しくなってな。上司からこれにて任務完遂、各自解散!軍に見つからないようにバラバラで帰れよ、と突然言われてそれから何の援助も情報もなしに王都を脱出する羽目に…とりあえず魔族への待遇がマシなアクアガーリーに行こうと思ってたら貴殿と出会った。いやー、運が良い。」


とさらりと自分が魔族軍の密偵であると暴露した。俺は慌てて、


「それって俺に教えたらマズいんじゃあ...」


と言ったら、リーシャに何でだ?と言われた。


「レン殿は我が軍のエキドナ種と何らかの友好的な関係を持っているだろう?そのエキドナ種が付けた、暗号化された魔力の紋章が額にあるし、魔族軍の軍香に従えばレン殿は『魔族に大してかなり友好的な人物』であるから言っても大丈夫だ。と判断した。」


良くわからないが、オリヴィアが俺に魔族に対して友好的だという何かしらの細工をしていて、それがリーシャがこちらに近づいてきた理由らしい。




「そうだ、今夜のお例もあるし、私もレン殿の討伐依頼を手伝おう!」


と俺の手をとって言ってきた。


「いえ、目的はB級の亜龍なので危険です。」


と言うと、


「そ、それだと私の実力では少し厳しいな...」


と言って俺の横に座りショボンとなったがすぐに顔をあげて、


「それなら雑用をやろう!こう見えても後方支援なら自信があるのだ!密偵になる前は軍の後方部隊にいたからな!レン殿が亜龍と戦っている時は素直に隠れるぞ!」


と、胸を張って来たので俺も折れて、連れていくことにした。依頼の亜龍意外にも金になりそうな上位種を狩ろうと思ってたが、まあ出来たらにしよう。美女ダークエルフの命には変えられない。




しばらくして俺の肩に寄りかかるようにして寝落ちしてしまったリーシャの頭をゆっくりと俺の膝に置いて、リーシャの体に毛布を被せて俺も眠った。腰が痛いし膝以外が少し寒いが仕方あるまい。帰ったら予備買わなきゃな...


そしてそのあとリーシャは、無意識だろうが俺の腰に両腕を回してきた。役得役得...

登場させたかったんじゃ^~


軍香というのはこの小説オリジナルのものです。狼煙みたいに燃やす使い方や吹き付ける使い方があり、鼻が良い魔族の連絡用、信号用として使われます。様々な形状があり、ロウソク、タバコ、香水等があります。ちなみに主人公は、オリヴィアによって軍香の匂いをつけられました。何話の時でしょうか...?


2/15修正・加筆

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