家購入
「入りなさい。」
ケイトがドアを3回ノックすると、遠くまで響き渡りそうな低い声がドアの向こう側から聞こえた。
「「失礼します。」」
ガチャリ
部屋の中に入ると金属鎧を着込んだ30代後半の男性が仁王立ちをしてこちらを見ている。その表情は、ニカッ!っと表現出来るほど爽やかなスマイルだった。
「よく来たな!さあさあ二人とも、そこの椅子に座りなさい。」
俺たちが座ると、ギルドマスターは向かい側の金属で出来た椅子にドカッと座った。
「レン殿、対面するのは初めてだな!私は冒険者ギルドアクアガーリー支部支部長兼南方ギルドマスター、キースだ。これからよろしく頼む。」
「レンです。こちらこそよろしくお願い致します。」
俺がぺこりと頭を下げると、それでは早速本題に入ろうと言って後ろのテーブルから1枚紙を取ってまた椅子に座った。
「先日、A級昇格を伝える為に人を送ったのだが、その件は聞いているだろう?」
「はい、聞きました。」
「あれは嘘だ。」
(えっ?コ○ンドー?)
キースの言葉にとっさにあの映画を思い出したが、そんな事は知らないキースは笑いながら、
「というのも、私の提案が伝令を出した後すぐに却下されてしまったのだ。こんなにも早くA級に特進したのは過去例がない。そうなると当然他方から反対の声が上がるのは目に見えている。というのが理由だ。レン殿も面倒事に巻き込まれたくはないだろう。だが、ワイバーンとリヴィアサンを倒した者がそのままB級だとこちらも困る。だから過去に例がある、特別B+級特進に決定した。B+級であれば、もう一度功績を上げれば何の問題もなくA級に上げることが出来るからな。」
キースはそう言うと立ち上がり、俺も立って欲しいと言ってきた。俺が立つと今度はギルドの登録証を手に持ってくれと言われ、言われたとおりに登録証のドッグタグを手に持つと、キースは自身の右手をドッグタグを持っている俺の右手の上にかざし、
「私、南方ギルドマスターキースの権限において冒険者レンをB+級へと特進させたい。是か否か。」
そう呟くと、どこからともなく、
「「「是」」」
と聞こえ、その瞬間登録証が白い光に包まれ、光が消滅し、右手を開いてみると、黄銅鉱っぽい登録証が黄金色になった。鑑定してみると、案の定「金」だった。
「これで昇格の儀は終わりだ。おめでとう!そのタグはA級になると金のままでもう少し厚みと大きさが増すからな。それでは最後にギルドからのリヴィアサン討伐報酬を授与する。」
キースはそう言うと鎧の隙間に手を突っ込み、小さい袋を俺に渡した。袋はほんのりと温かい。
「中身は100万アットだ。小金貨は需要が多いので渡せん。すまんが大金貨1枚で貰ってくれ。リヴィアサンの件が落ち着いてきたら両替にでも来るといい。」
「ありがとうございます。それでは、キースさんはこれから何かとお忙しいでしょうし、この辺で失礼します。お時間を取って頂きありがとうございました。」
「おう、スマンな気を使わせて。それではまたな!」
俺とケイトはその後すぐに退出し、ギルドを出た。今日のシフトだとケイトは午後の仕事が無いらしい。ケイトは金になった登録証をとても気に入っていて、渡してやると太陽にかざしたり自分に着けたりしていた。ケイト曰く、
「この形でこの色だから良いんですよ~!」
だそうだ。
そして俺とケイトはこのままバルディ不動産へと向かった。目的は、俺たちが住んでいる家を買うためだ。というのも、そろそろ部屋数を増やしたいのだ。もちろん今の人数だと不満は無い。だがこれから人が増えると何かと手狭になるだろう。それならそうなる前に増築しちゃいましょうと俺は考えた。もちろんついさっき思いついた。この事をケイトに話したら、
「今後もちゃんと私にも構ってくださいね!」
と言ってきたのでとりあえず抱きしめた。衆人の目があったが気にはするまい。
バルディ不動産を訪ねると、前回契約をした男性店員が出迎えてくれた。
「今日はどのようなご要件で?」
「今住んでいる家を購入し、その後すぐにでも増築したいのですが...」
「分かりました。少々お待ちください。」
そう言うと家の見取り図を取り出し、何やら計算をし始めた。30分程待つと、計算が終わったようで、
「それでは、まずは家と土地の希望販売額ですが70万アットです。」
「その値段で買いましょう。」
俺はそう言って、先程ギルドマスターから貰った大金貨一枚を渡した。店員は大金貨を確かめると、
「それでは30万アットのお返しです。」
と1枚1枚丁寧に数えながら俺に手渡した。渡し終えると今度はメモ帳と我が家周辺の地図を取り出し、
「それでは増築の件についてご相談させて頂きます...!」
そう言って期待に満ちた目で俺の発言を待っている。
この人ってワーカホリック...?
2/9加筆・修正




