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殿(しんがり)

「レ、レン君!」



俺の体は悲鳴をあげていた。多分傍から見れば子鹿の如く足が震えているのが分かるだろう。


俺は、


(ウィーリに貰った能力があるから毒では無い…だとすると瞬間高速移動の反動みたいなもんか…!)


体の痛みに耐えながら


「ッ!? もう一匹いたの!?」­­


「瞬間高速移動!」


俺はもう一度高速移動を発動させた。なぜならもう一匹のロングテールスコーピオンがメアリー目掛け尻尾を振り下ろそうとしていたからだ。


「了解。貴方は現在の魔力だと2秒高速移動する事が出来ます。それでは…GO」


「うあああっ!」


俺は悲鳴をあげる体に鞭を打ち、脇腹にスコーピオンの針を刺したまま、区間を走り終えた駅伝ランナーのようなヨロヨロとメアリーの元へと駆け寄った。



「『瞬間高速移動』終了。」


武器も盾も持っていなかったので、俺はメアリーの前で腕を広げた



ドスッ



俺は腹でもう一匹の針も受け止め、腹に力を出来るだけ込め、針が抜けないようにした。



「そ、そんな…あいつらの毒を2回も食らったら…」


そうメアリーが呟いた。



なぜ、メアリーがそう呟いたか…実はこのロングテールスコーピオンの甲殻はとても柔らかく矢で難なく貫通し、大体一撃で殺すことが出来る比較的弱いモンスターだ。だが、その尻尾についている針から注入される毒は自然治癒する事はなく、高価な薬もしくは低級以上の治癒魔法でしか解毒する事が出来ない。


そして即死する訳では無く、大人であれば1度刺されてすぐに薬を服用するか治癒魔法を受ければ生存率は80%以上だと言われている。


しかし薬の服用又は治癒魔法を受ける前に2度刺されると急激に生存率が低下し、殆どの場合手遅れになって死に至ると言われているのだ。普通の人間や毒に耐性の無い亜人なら、もう死亡が確定したようなものだ。


そんな今にも泣きそうな顔のメアリーを尻目に、2匹のロングテールスコーピオンが、


「「キシキシキシキシッ!」」


と鳴き始めた。


レイが、


「マズイ!仲間を呼ばれました!すぐ近くに仲間がいるのでしょう!メアリー様、レン様退避を!」


そう叫んだ。



「だ、ダメよ!早く解毒しないと!」そうメアリーが返すと、アルが、


「しかしメアリー様!レン様はもう二度も毒を注入されています!も、もう手遅れです!」


「うるざいっ!手遅れなんがじゃないっ!」



そうメアリーは叫ぶと俺に向かって治癒魔法を掛け始めた。その間にも5匹のロングテールスコーピオンが迫ってきていた。俺は仕方なく


「すまんなメアリー…アルさん任せた!」


俺はそう言うとメアリーに思いっきり平手打ちをし、治癒魔法が中断したところで2匹のロングテールスコーピオンの尻尾を持ち、ひきずりながら五匹の増援の足止めをしに行った。


後ろで


「おねがいだがらもどっでぎでよ~!うええ死んじゃうよ~っ!」と、悲痛な叫びが聞こえたが、それもどんどん小さくなっていった。きっとアルが担いで行ってくれたんだろう。



すぐに俺は五匹の増援と対峙した。


キシキシと尻尾を振り回しながら威嚇している。


「キシキシキシキシ…うるさいんだよっ!」


俺はそう叫ぶと引き摺ってきた2匹のロングテールスコーピオンを増援に向けて叩きつけた。



叩きつけると手に持っていたのも含め4匹がグシャっと潰れた。それに伴って体が軋む。


俺は持っていた尻尾を握りつぶすと、毒液らしい液体が全身に降りかかった。


他の三匹の元へ行き、何度か刺されながらも拳骨で残り三匹の甲殻を破壊した。


最後のスコーピオンの甲殻から手を抜くと頭の中に



「シチュエーション・アングリーにより、シークレットアビリティ01『鋼鉄の体』を獲得。連君の為の冒険応援セット『ウィーリ装備』の獲得条件①を満たした為、連君専用武具『深緑の(つるぎ)』を獲得。獲得した武具は自動でマジックポーチに送られます。」



そんな声が頭の中で響いた。しかし俺はもう限界だった。体中に激痛が走り、とてつもない疲労感が俺を襲う。


だが、こんな森で寝られる訳もなく、俺はヨタヨタと来た道へ引き返した。

ロングテールスコーピオンの猛毒はたまに暗殺に使われます。しかし、決定的な弱点があります。それは匂いがかなり独特なのと時間です。匂いに関してはまず料理に混ぜるのはバレるから不可能レベルです。よく貴族の子供達は教育、暗殺防止のためにロングテールスコーピオンの毒液の匂いを嗅がされ、その匂いを叩き込まれます。

ロングテールスコーピオンの毒はなんと二日で抜けてしまいます。長持ちしません。匂いはそのままですが。


2/7修正・加筆

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