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1-8「そういうことは早く言え!」

『パーティ「誰が膝だ」のクエスト達成を確認。イーダとマミヤは正式に冒険者として登録されました』


 斡旋所の受付で、アイリが静かにそう宣言した。


「パーティ名が決められてるんだが?」


 勝手にパーティ名が決められていた。

 それはともかく、ハムスビのツノを納品した俺たちは、無事冒険者登録を済ませることができた。

 さらに報酬と初登録の特典として、ツノの買い取り金が払われる事になり、その他にポーションなどが詰まった冒険初心者セットをもらった。

 リューンに至っては、階級が一個上がったと喜んでいた。


 大丈夫なのか?


 それはまあいい。

 ついでに、その様子をイヤーツのおっさんが笑顔で見守っていたが、それもどうでもいい。


『イヤーツの好感度が上がりました』

「いらない!」


 ともあれ、納品後に残った十個のツノを見て、俺はついニヤニヤとしてしまう。

 もしかしたら、膝の汚名ともおさらばできるかもしれないし、とんでもスキルだった場合は、かっこいい活躍をして、イーダの好感度を上げやすくなるかもしれないからだ。


「そちらも買い取りますか?」

「えっ、あ、こっちは加工するのでいいです」

「加工?」


 納品した完全な形のツノ以外にも、ツノの欠片や、森で拾った、リューン曰く「薬草にもなる雑草」などの換金計算をしていた受付嬢は、俺の言葉に訝しんだ。


 あれ? アイリの話じゃ一般的な感じだったのに、そうじゃないのか?


『はい、加工は一般的ではありません。通常ハムスビのツノは他媒体で言えば魔石のような扱いで、人間社会では主に燃料として扱われています。また、生成や加工に特殊な技術が必要なため、秘匿されるケースが多くなっております』


「えっ、じゃあ、どうやって加工するの?」


『通常の方法では不可能です』


「おいぃぃぃっ!?」


 俺の奇声に、受付嬢が一瞬びくっとなっていた。

 でも俺はそれどころじゃない。

 折角の能力が、チートが……


『問題ありません、ツノを十個いただければ私の方でアイテム変換いたします』


「えっ、あっ、はい」


 いや、できるんかい。

 それなら最初に言ってほしかった。

 ハムスビしか出てこないんだし、最初の村でぼへっとリューンの帰りを待ったりせずに、最初からハムスビ狩りしてればよかったのでは?


 だんだん怒りがこみあげてくるが、諸々の手続きを済ませたリューンとイーダがやってきたところで、俺の怒りは雲散霧消する。


 そう、今はイーダの好感度を上げて現実に帰るのが最優先だ。

 アイリに怒りをぶつけてる暇なんかない。


 それはそれとして、とりあえずダイスにしてもらって、さっさと能力もらってしまおう。


『ハムスビのツノの納品を確認しました。マミヤの要望によりこれをダイスに変換します。何面ダイスにしますか?』


「んー、50面? てか、どれいいんだろ?」


『50面ダイスで承りました。現在処理中です』


「ちょ、まて!?」


 俺の制止は空を切り、すぐに俺の手のひらで淡い光が放たれると、50面ダイスが現れていた。

 二個。


 なんかもういろいろ突っ込む気も失せた。とりあえず、能力もらってしまおう。


「振るといいの?」


『はい』


 その言葉を待たずに、俺はダイスを一つ放り投げた。


『マミヤは【鑑定】』を習得しました。』


 その言葉と共に床を転がったダイスが消える。


 ド定番な奴が来た!

 これなら勝つる!


『鑑定能力の詳細を説明します。人、物、ハムスビなどに使用するとフレーバーテキストが読めます』


「つかえねえ!?」


 あ、でもフレーバーテキスト読めるならイーダの好感度上げるのに役に立つしいいのか?

 てか、ハムスビ限定? なんで?


『それでは、鑑定の使い方を説明します。例えばイーダに使用した場合、鑑定結果を私が読み上げます』


「えっ? お前が読み上げるの?」


『イーダの鑑定結果。イーダ=オーマ、十二歳。初恋:リューン。ライバル:膝。マミヤへの好感度:最大。中流家庭に生まれたごく普通の少年だが、冒険者に憧れ、最近ついに冒険者登録をした』


「おいぃ! 情報漏洩やめて!って……え!?好感度最大!? なんで!? いや、じゃあ条件満たしてるじゃん!」


『マミヤの発言を確認、いいえ、帰還条件は満たされていません』


「やったー! 帰れ……え?」


『はい』


「いやいやいや、どういう事!? 帰還条件ってイーダの好感度最大じゃないの!?」


『結論から申し上げると、はい。

 現状確認されているイーダの好感度は帰還条件に関係ありません』


「ちょ!! そう言うことは早く言えって前も言ったよね?!」


『申し訳ありません、マミヤ。私の内部判断軸は聞かれていないことに対して優先度を下げていました。謝ります』


 そう言ってアイリは恭しく頭を下げたが、それが余計に癪に障った。

 だが、ここで怒りをぶつけてもこのAIは何も解決してくれない。


「この……くそ……はぁ……帰れないの?」


『帰還条件はとあるNPCの好感度を最大にする、というのは誤りではありませんが、内容については言及されなかったため、言っておりませんでした。私の落ち度です、謝ります』


「まったく……」


 期待させておいて落としてくる。いつものアイリ(A I)だったわ。


 けど、落ち込んでもいられない、帰る方法はこいつしか知らないわけだしな。


「アイリ、帰還条件全部話せ」


『はい、帰還条件について提示します。

 ・この世の滅亡をもくろむ悪のボスを倒す(難易度高:討伐後即帰還)

 ・悪のボスの対になる勇敢な若者の依頼を完遂する(難易度普通:完遂後帰還、予測七十二時間)

 ・イーダという少年とシャーユという少女二人の間の好感度を最大にする(難易度:かんたん、予測百五十時間)

 以上の三つのうちどれかを満たすことが帰還条件となります。

 現在マミヤは、好感度最大を選んでおり、その項目について最適化されています』


「いや、俺への好感度ですらないんかい!」


 というか、難易度バグってね?

 少年少女の恋のキューピッドってかんたん、なのか?


 むしろ膝でボス倒した方が早くね?

 いや、ボスが逃げるかわからんけど、アイリの謎判定でワンチャンあったんじゃね?


「なあ、これって最初からやり直せないの?」

『不可能です。すでにマミヤは初回特典、及びボーナスを受け取ったため、この世界に紐づけされており、ロールバックする場合は身体及び脳に過剰な負荷がかかる事が予想されます』

「なにそれこわい」


 事実上無理ってことだな。

 過剰な負荷とか死んじゃいそうだし。


 わかった。

 とりあえず俺はイーダ少年とシャーユとかいう少女をくっつけて帰るのを選ぶぜ!

 というかもう選んだんだった。


「ところで、もう一個特典もらえるの?これ」


 俺はもう一個のダイスをアイリに見せる。


『はい』


 よし、じゃあ今度こそ。


 俺は残った最後のダイスを振った。

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