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1-7「ハムスビしか出てこないんだが?」

 パーティを結成した俺たちだったが、なぜかパーティ名の事で少し揉めていた。

 正直何でもいいと思うのだが──


「膝の団、がいいと思う。マミヤがメイン戦力になるし」


 これはリューンの意見。


 膝の団ってなに?

 俺の膝は万能じゃないんだが?

 少年も変な目で膝を見るな。


「あ、でも、お目付役はリューンさんですから、やっぱり、プリンセスオブリューンとか……」


 膝から目を逸らした少年から反対意見が出たと思ったら、すごくお花畑な案が出てきたぞ。

 大丈夫か?このパーティ。


「プリ……ちょっと美化しすぎだよー」


 くすくすと笑う彼女に、少年はまたも顔を赤くしている。


「え、えと、じゃあ、リューンの膝、とかはどうですか?」


 少年は大真面目な顔で言う。

 ……なんだかちょっと色々と掻き立てられるものがあるネーミングだな。

 てか、もはや俺の膝ですらないし。

 いい加減にしろ。


『未実装です。アップデートすれば適用できる可能性があります』

「何の話!?」


 アイリの視線はリューンの膝に向かっている。

 ような気がする。


『アップデートしますか?』

「いや、今はいいから」

『わかりました。

 アップデートする場合、再起動が必要になることがあり、保存していないデータは失われますのでご注意ください』

「いや、余計ダメだろ! セーブ? そんな機能あったの!?」

『ありません。なお、夜間、お休み中にアップデートするサービスが──』

「やめろ」

『はい』


 軽く疲れた。

 なんかこいつと話してるとAIと話してる気分になる。


 いや、AIだったわ、こいつ。


 夜も更けてきて、パーティ名の件は有耶無耶のまま少年は一度家へと帰っていった。


 今日一日、色々あったからか、リューンもその後俺に絡む事もなく、すぐにベッドで寝息を立てていた。


 翌朝。


 斡旋所の前で再び集まった俺たち三人は、パーティ名の事などすっかり忘れて、登録試練用として発行された依頼を受け、現地へと向かった。


 で、だ。

 今俺の膝にぶち当たって静かに横たわったのは、これで三匹目となるハムスビだった。


 そのハムスビの鋭利なツノを、リューンが器用にもいでいく。

 その様子に、俺はなぜか戦慄していた。


「あ、こいつのは少し太いですね」


 とか言いながら、厚手の手袋をした彼女が、無慈悲にツノを掴み引っぱると、ブチブチと嫌な音を立てて引っこ抜かれる。

 それをみていると、なんだか大事なものを引っこ抜かれるようなそんな気分になるのだ。

 隣にいる少年も、どうやら同じような気持ちになっているらしい。

 少し顔を青くして前屈みになっていた。


 というか、ここでもまたハムスビだよ。


 俺たちは今、街の近くにある駆け出しようにある程度整備されたダンジョンにいた。

 そこは洞穴の薄暗い迷路のような場所ではなく、森の木々が行手を阻むように壁になっている、少し不可解な森、といった場所だった。


 発行された依頼は、ハムスビのツノを十個納品する、というもの。

 折れているものは不可で、綺麗な死体から引っこ抜いた完全な形のもののみ受け付けるという事だった。


 というか、結構長い時間ここにいるけど、ハムスビ以外と出会わない。

 この世界のモンスターってハムスビ以外いないのか?


「ハムスビは最優先で退治することになってるし、このダンジョンは試練もかねて間引き対象になってるんだよ。ツノも結構いいお値段で引き取ってもらえるんだよ?」


 ハムスビの話しかしないリューン。


「お、俺の目標はリューンさんみたいにハムスビを確実に屠れるようになる事だ」


 リューンしか見ていないイーダ。


 いや、答えになってないんだが。


『今回の依頼に最適化されています』


「何が!?」


 アイリからはもっとわけわからない回答が返ってきた。

 まあ、いるんだろうけど、とりあえずハムスビ倒せって事か?

 ゲームとかでも群生地とかあるしな。


 そんなこんなでハムスビのツノが十本集まった。

 イーダ少年は、リューンのそばで戦闘のノウハウらしきものをレクチャーされ、多少の怪我をしながらも一匹を仕留めるのに成功。

 リューンも、この短期間に二匹同時に相手ができるようになっていた。


 俺はというと膝が勝手に倒していくから、なんの実感もない。

 正直、近くにいるのに別行動みたいな雰囲気になってて、和気藹々とハムスビ退治している二人が少しだけ羨ましいとか思ってしまった。


「そういえば、このツノってなんに使うの? アイリ知ってる?」

『勿論です。この世界構築の際に、ハムスビは最も数が多く、なおかつ最も重要な資源として設定され、人々の生活を脅かしながらも円滑に回すという役割が──』

「何ができるかだけ教えて」

『燃料であり材料でもあります。特別な素材ではありませんが、マミヤにとって有意義なものとなると、武器や特典用のダイス、または通貨を得るための手段としてそのまま売却することもできます』


「なるほどね」


 ん?

 今なんて言った?


「なあ、アイリ、今なんて?」

『ハムスビはこの世界において厄介な害獣であり重要な資源で──』

「そこじゃなくて! 何作れるって言った? 俺に有意義なとか言ってたよな?」

『はい、マミヤ。マミヤにとってハムスビのツノは、武器や特典用のダイス、または──』

「それだ!!」


 その声に、リューンとイーダの視線が俺に集まる。

 だが、もはやリューンはもちろん、イーダですら、俺が虚空に向かって話をしている状態がデフォとなっているようで、一瞥だけで終わる。


 だがそんなことはどうでもいい。


 ついにきた。

 異世界転移のチートを授かるこの瞬間こそ、異世界物最大のカタルシスと言っても過言ではない。

 それがたとえどんなスキルでも、世界を変えうるポテンシャルを秘めているのが、ザ・チート、異世界特典なのだ!


「で、アイリ。このツノをどうするとダイスに出来るんだ?」

『十個のツノを合成し、ハムスビの玉を作成します』

「……わざとじゃないよね?」

『質問の意図が不明です』

「いや、いい。続けて」

『……ハムスビの玉を、職人が丁寧に一つ一つ削り、ダイスを作っていきます。ダイス面は多ければ多いほど特典の選択肢が増えます』

「よし、リューン、イーダ。すまんがもう十個ツノを引っこ抜くぞ」


 急にやる気を出し始めた俺に、二人は首をかしげていた。

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