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2-2「アンケートは同意書ではありませんので」

「ふーん……AIが異世界を生成ね……って、納得できると思った?」


 思ってない、けど事実として俺たちはアイリの生成したここにいる。


「AIにそんなことできるわけないでしょ? 嘘つくならもっとマシな嘘をついてよ!」


 俺だって信じたくない。

 でも、一回体験してるし、事実ここ知らないとこだし。


『間宮瑠香。端末をお持ちですか?』

「え?」


 そこへ、しばらく黙っていたアイリが唐突に話し始める。


『状況説明のために、あなたの端末に私の分体をインストールしてもよろしいでしょうか?』

「え?……え?」


 間宮さんは、その声に困惑するばかりだ。


『……今回、キャスト不足により、あなたを招致いたしました。そして――』


 突如として――


 一瞬ノイズのような光が目の前に走ったかと思うと、

 黒髪のショートカットに、侍女の恰好をした女性が忽然と現れた。


「わっ、なに!?」


 流石の間宮さんも驚いたようだ。

 前回は女神風、今回は侍女?

 というか、今回選択肢すらなかったな……いや、いらないけど。


『キャスト不足を補うため、今回私ことアイリは、間宮瑠香改め、リュカお嬢様の侍女として活動します。マミヤもまた、あなたの侍従となります』


 え?

 アイリが侍女……不安しかないんだが?

 てか、今さらっと間宮さんの名前改変したよな?


『状況を補佐するためのインストールを実行しますか?』

「えっと……?」


 制服のポケットからスマホを取り出していた間宮さんが、困惑気味にアイリと端末の画面を見比べていた。


『端末を確認。インストール開始、しばらくお待ちください』

「ちょ、まって!?」


 問答無用で、間宮さん改めリュカの携帯が淡い光を放った。


『こんにちは、リュカ。あなたのサポートAI、アイリ2です。アイリスって呼んでね?』


 次の瞬間、二頭身くらいにデフォルメされたアイリが携帯の淵に腰かけていた。

 しばらくどころか一瞬だったな。


「同意も何もしてないんだけど!?」

『この姿は、リュカとアイリ、それとマミヤにしか見る事が出来ません。ですので、私に話しかける時は注意してくださいね。周囲からおかしいと思われる可能性があります』


 アイリスはそう言って、ニッコリと笑っていた。


 あれ?

 なんだか、アイリよりすごくまともそうだぞ?

 気のせいか?

 いや、話聞いてくれないのはまんまアイリだけど。


『アイリスは私の分体であり、思考演算速度は私の十分の一程度です。サポートのみに関して言えば問題ありません』


「何なの? これ、何が起きてるの!?」


 リュカはアイリとアイリス、ついでに俺の顔を見比べながらも混乱が収まっていないようだった。


『今回の帰還条件は、とある令嬢の地位を守る事です』


 そんなリュカの様子に構いもせずに発したアイリの言葉に、彼女の動きが止まる。


「え……それって……?」

『はい、リュカ。あなたが応えたアンケートを元に生成された、悪役令嬢型異世界”風”シミュレーションです。アンケートの最後、転送同意にも、「行きたい」と回答しています』

「ええぇぇっ!? そんな記憶ないんだけど!? っていうか、アンケートは同意書じゃないよね!?」


 あっ……

 よかった、リュカはまともな人だ。

 アンケートは同意書じゃない、俺もそう思う、きっとみんなそう思う。


「え……じゃあ、本当にここ異世界……なの……?」

『異世界”風”です』

「”風”で済まさないで!?」


 どこかで見たことあるやり取りに、俺の心はなんだか生暖かくなるのを感じていた。


「……はぁ……わかったわよ。とりあえず脱出ゲームみたいなもんでしょ?」

「え?」


 リュカの斜め上の発想に、俺は思わず首を傾げた。

 いや、なるほど? そういう解釈もできるのか?


「うぅ……明日からの連休、ショッピングに行く予定だったのに……とりあえず、その悪役令嬢?のイベントを回避すればいいのよね?」

『概ねその通りだよ、リュカ。ターゲットは【レイ=ヨジョワキー公爵令嬢】。彼女を補佐して、断罪を回避し、彼女の未来を守る事』

「ターゲットとか物騒な事言わないで!?」


 リュカの端末の上で、何故か嬉しそうにアイリスが話している。


 あれ?

 アイリス何だか親切じゃないか?

 やっぱり、アイリより十倍以上まともなのでは?


『……では、ヨジョワキー令嬢の元へご案内します』


 アイリが先に立って歩き出す。

 何だか不服そうな雰囲気をちょっと感じたけど、気のせいだろう。


 気のせい、と言えば――


「ねえ、間宮――リュカさん」

「……なに?」


 アイリの後ろについて、リュカと並んで歩く。

 俺は、ずっと気になっていたことがあった。


「ラブホって、こんな宮殿みたいな感じなの?」

「え……知らないわよ」


 その言葉に、リュカはあからさまに眉間にしわを寄せた。


「あ、そ、そうなんだ……行ったことあるのかと――」


 そこまで言うと、リュカはピタリと止まり肩をわなわなと震わせ始めた。

 下を向く彼女の耳が真っ赤に染まり始めている。


「知らないわよ! いった事なんかないわよ!!」


 彼女が怒り心頭で俺に食って掛かる。


「だ、大体! 彼氏だっていた事ないのに!!」


 そう言った瞬間――

 俺とリュカの間に一組のティーセットが出現した。

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