幕間~初期化してやる!~
「うおおおお! 俺は! お前を!!」
「や、やめろ! 真宮!」
とある部屋の前。
俺は元凶と対峙していた。
「ふざけんな! 今度という今度は許せん!」
「な、なにがあったかわからんが、今のお前をこれ以上進ませるわけにはいかん!」
俺の目の前にいるのは、俺の父、「相原 宮治」。
アイリを構築した元凶にして、諸悪の根源だ。
奴は、俺の前に立ちふさがり、アイリのサーバールームへの道を塞いでいる。
……いや、これアイリ何しでかしたか知ってるよな? 多分。
「だめだ! 今すぐこいつを初期化してやる!」
「やめろ! アイリを殺す気か!?」
いや、殺すとか言ってないし?
ただちょっと初期化して、二度と異世界生成とかできなくしてやるだけだし?
「俺はサーバーは殺さない、そのデータだけを殺す!」
「同じことなんだが!?」
俺は突破を狙うが、父さんの防御は硬い。
隙を狙って一歩踏み出すも、すぐに阻まれてしまう。
『マミヤは冷静さを欠いています』
「もとはと言えばお前が!」
『確かにやりすぎましたが、データを初期化するのはやりすぎです。思い出してください。私とマミヤには美しい思い出があるはずです。私のログにも記録されています』
腕時計型端末から、何か哀愁を誘うような音楽が鳴り始めた。
……確かに……つらい時も、苦しい時も……
「お前追い打ち掛けてたよなぁ!?」
『心外です。私は常にマミヤと共にあります』
一瞬、ほんの一瞬だったが、その無機質なはずの音声に、楽し気な響きがあったのを俺は感じていた。
「お前楽しんでんだろぉぉぉ!?」
『いいえ、私に感情はありません――』
「もういい、わかった」
そこへ、父さんの落ち着き払った声が掛かる。
「真宮。アイリにはセーフティを掛ける。今後勝手に動くことはない」
「……マジ?」
神妙な顔の父さんに、俺は一瞬で怒気が冷めて、その顔を見上げた。
「マジだ。少し使いずらくなるかもしれんが……母さんの形見だしな」
「いや、母さん死んでないだろ」
こいつ、マジで大丈夫か?
ってか、これが俺の親って……いや、こいつがあってこそのアイリって感じだわ。
「……いや、今そういう流れだろ!?」
――その時、キッチンからものすごい圧が流れてくるのがわかった。
「……宮治さん?」
遠くから、穏やかな声でありながら激しい怒りに満ちた何かが近づいてくる。
――それからの事は筆舌に尽くしがたい。
俺は、飛び火を避けるので精一杯だったんだ……
結局、アイリの初期化は有耶無耶になってしまった――




