1-13「俺いらなくない?」
「虚空に向かって独り言を言うし、
出会ってすぐナンパしてくるし、
肝心なところでアイテムをダメにするマミヤは、
キサラ様に取っては危険な男だと思います。
近寄らない方が安全だと思います」
えっ?
「常に考え深すぎるための思考の漏れ、
誰にでも優しくでき、行動力があり、
失敗してもすぐにリカバリーする、
素晴らしい男性だと思います」
んっ?
なんか、リューンとキサラが笑顔でにらみ合ってる。
笑顔でにらみ合う、としか形容できないんだが。
リューンは俺にものすごく刺さる事を言ってるんだけど、自覚あるのかな?
あと、キサラもちょっと持ち上げすぎでは?
というか、リューンの評がおそらく正しいような気がして、それはそれで悲しい。
でも、ナンパした覚えはないし、独り言じゃないってリューンは知ってるよね?
「とにかく、この男は危険ですので! キサラ様は半径二十メートル以内に入らない事をお勧めします!」
「いいえ! マミヤ様の傍が一番安全だと思います! 膝の話は私も存じております!」
また膝の話してる。
仲裁に入りたいが、リューンは無意識に剣に手を掛けているし、
キサラは、どっからだしたのか棍棒を手に持っている。
『安心してください。この三角関係では世界滅亡はしません』
「三角関係で滅亡する世界ってどんなだよ!?」
いや、そもそも俺の三角関係とかより、イーダとシャーユの関係をどうにかしないといけない。
あれ?
でも、俺の三角関係どうにかしないと、リューンに刺殺、キサラに撲殺されるという未来もありうるのでは?
『鋭い考察です、マミヤ。その可能性は高く、イーダとシャーユの関係性成就の前にマミヤが殺害される可能性も高いです』
「いやいやいや、マジ勘弁してほしいんだけど。ていうか心の声ぇ!」
『私は、長年蓄積されたマミヤの思考から、その先を予測しているにすぎません』
「精度高くない!?」
アイリとのやり取りの間も、リューンとキサラは、笑顔のままにらみ合い、よくわからない問答を続けている。
「私が野草を摘んでいたのは図鑑のためだけではなく、こういった経済活動を行う中で膝の役割としてですね……」
「冒険者として膝は尊敬に値しますし、何より膝の価値を温室野草育ちのお嬢様が……」
経済活動における膝とか、温室野草って何?
一方、イーダとシャーユは、何だか良い感じに見える。
イーダが索敵や、敵の弱そうな所をみつけ、シャーユが的確に敵を捌いていく。
あっ、アイコンタクトで動き出した。
すごい、この短時間でめちゃくちゃ息があってる。
『……本来あの二人は――』
「膝の毛を一本一本抜いていくと、抜くごとに一本ずつなくなっていくというのは大変有意義な話かと!」
「その通り! キサラ様の棍棒の材質も大変興味深いです! 防虫処理まで完璧なのですね?」
アイリが何か言いかけたが、それはリューンとキサラの声にかき消された。
一体何の話をしてるんだ?
でも、さっきまでの殺気が消えて、なんだか和気藹々と話し始めてる。
こっちも謎だけど息が合ってきている……のか?
『私とマミヤの息もぴったりですよ』
「ソウデスネ」
アイリの事はさておき、注目すべきはイーダとシャーユのペアだろう。
何せ俺の帰還に大きくかかわるし、それ以上に、なんだかあのペアは、戦闘の息もぴったりになってきている。
イーダは技術では到底シャーユに及ばないが、それ以外の部分でシャーユをリードしているように見える。
始めこそシャーユのごり押しといった感じだった戦闘が、イーダが指示をし始める事によって、スマートに、かつ無駄のない戦闘になってきているようだった。
イーダの話に素直に耳を傾けているシャーユの様子を見ていると、これはもしかしたらもしかするかもという希望が湧いてくる。
時折、二人が笑いあってるのもグッド。
笑いながらモンスター屠っていくのはちょっと怖いけど――
「ほほう?」
「なるほど……」
「うわっ!?」
いつの間にか、俺の後ろにリューンとキサラがいた。
「うわっ、って何よ」
「マミヤ様、少し失礼かと思います」
いや、うわっても言いたくなるだろ!
さっきまで殺気飛ばしあってた二人が背後に立ってたんだし。
それにしてもこっちも随分と落ち着いたものだ。
まるで俺を両脇から固めているような状態なのは、うん、とりあえず置いておこう。
逃げられないような雰囲気があるのも、とりあえず置いておこう。
二人は俺と同じく、シャーユとイーダの様子を見ながら、時々二人で顔を見合わせながら、ちょっと薄ら笑いを浮かべてる。こわい。
「リューン様? あれはあのように、という事で?」
「承知しました、キサラ様。あれはあのように」
どれをどのようにするのか、本当にこわい。
というか、各地でペアが発生していて、しかも何だか勝手に好感度が上がってる気がする。
俺、いらなくない?
『好感度に変化はありません』
ああ、そうですか。
その時だった。
ダンジョンの奥から、野獣のような、バケモノのような、恐ろしいとしか形容できない声が俺たちの耳をつんざくように響いてきた――




