アルバニアに「汚職対策AI大臣」誕生! その可能性とリスクは?
◇アルバニアはEU加盟のために汚職撲滅を行いたい
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回はアルバニアがAIのアルゴリズムによって作り出した女性を汚職撲滅のための大臣に就任させたことについて個人的な分析を行いたいと思います。
質問者:
え!? AIが大臣に就任するだなんて驚きです……。
一体どういう意図でそんなことになってしまったのでしょうか……。
筆者:
まず、アルバニアと言う国についてちょっと情報整理しておきます
イタリアの東、ギリシャの北のバルカン半島に位置する
人口約280万人 面積28,748㎢ と小さい国です。
1912年にオスマン帝国から独立、第二次大戦後はソ連や中国の影響下にありましたが1991年から共和国として出発しました。
しかしアルバニアでは、公共入札に関連する汚職スキャンダルが繰り返し発生しています。
レフテル・コカ元環境大臣は、2022年3月に公共資金の不正流用などを含む「エルバサン焼却炉事件」と呼ばれる汚職に関与したとして起訴され、2025年に懲役6年8カ月の判決を受けています。
また、2025年7月には不動産取引に関連した汚職の容疑で起訴されたサリ・ベリシャ元首相(在任2005~2013年)の汚職疑惑の裁判が開始されるそうです。
その他にも縁故主義や政治的なキックバックが発覚し、政府高官の汚職事件に揺れ続けているのです。
質問者:
元首相までもが汚職に関わっていたのなら酷すぎますね……。
筆者:
特にアルバニアのエディ・ラマ現首相はEU加盟を2030年までに実現しようとしています。
EU加盟には汚職撲滅が必須なので(ちなみにウクライナも汚職大国で加盟できないでいる)、
汚職撲滅のための画期的な政策を行おうとしているのだと思います。
アルバニアのAI大臣の名前は「Diella」といい、アルバニア語で「太陽」を意味するそうです。
公共入札を管理する役割を務め、賄賂や脅迫を一切受け付けない大臣となることが期待されています。
◇「AIそのもの」はお金を受け取らないが……
質問者:
一番大事なAIの大臣で汚職が撲滅されるかどうかですが……。
それについてはどうなんでしょうか?
筆者:
確かに前提条件がしっかりしているのであればAIは政治腐敗を阻止することにおいて平等であり効果的だと思います。
AIがお金を受け取って誰かを贔屓するといったことはありませんからね
ただし、その「前提条件がしっかり」と言うところがかなり難しいと思うんですよね。
質問者:
どういうことなんでしょうか?
筆者:
結局のところAIのアルゴリズムを作るのも人間、その価値判断を選定する情報を与えるのも人間だからです。
組み込んだシステムと情報をもとに客観的に判断する腐敗した政治を学習していて、
その穴を突いた情報を融通したい会社に伝えたら平然と腐敗が起こるんです。
まともなシステムが出来たとしても、システム関係者を買収して「システムを変更」することで事実上の腐敗政治は起きうると思います。
つまりアルゴリズムの専門家、汚職政治撲滅のための専門家を複数擁し、定期的に入れ替えなければ買収されるリスクがあると思います。
日本を例にすれば今の政治資金規正法では「ザル」なのにも関わらず、そこを指摘せずにOKを出し続ける(例えば企業献金など)と言った現象が起きるんです。
質問者:
確かに、企業献金によって企業のための政治が行われていて、
国民のために政治が行われていない日本は広義の意味での政治腐敗と言っていい気がしますからね……。
筆者:
日本でAIが腐敗撲滅担当大臣になったら「グレーゾーンを政治家に教えまくる大臣」になってしまうかもしれませんね(笑)。
またアルバニアのDiella大臣が人間における監視を受けるのか? この大臣が誤った判断を犯した場合の責任の所在はどこにあるのか? が今のところ分からないそうです。
今回のDiella大臣はマイクロソフトとの共同開発のAIアルゴリズムということなので、マイクロソフトが一定の責任を負うとは思いますけど、逆に言えば「実質的なアメリカの支配下」に入るということも意味すると思います。
25年5月のトランプ大統領の中東訪問ではトランプ氏の縁故企業がトランプ・ゴルフリゾートをカタールで開業が決定、ドバイ及びサウジアラビアのジッダにおけるトランプ・レジデンスタワー計画が決まりました。
このようなことは「腐敗では無いのか?」と言われたら限りなく黒に近いグレーでしょう。
質問者:
日本もアメリカも表面上は腐敗国家では無いと言われていますけど、「この有様」ということですか……。
筆者:
今の日本は政治が失敗しても責任の所在が辞任してしまえば分からなくなってしまう問題があるのですが、
「AIが大臣」と言う状況はそれよりもっと「顔が見えなくなる」と言える状況になると思います。
◇AIを「活用」するに限る
質問者:
AIが大臣になることは結局のところ厳しそうということはなんとなく分かったんですけど、
AIが政治や実務に関与することに関してはどうなんでしょうか?
筆者:
アメリカではIRS(内国歳入庁)がAIを活用し、ヘッジファンドや富裕層のパートナーシップの申告書を精査し、隠れた脱税スキームを探す試みを行っています。
スペインでも似たようなリアルタイムで不正パターンを検知するツールを展開中です。
イタリアは機械学習で偽の付加価値税(VAT)請求を検知する試験運用を行い、監査官向けチャットボットを構築して実践導入を開始しています。
インドはAI主導による架空控除の取り締まりを強化、
アルメニアでは人間が確認する前に請求書をスキャンし、不審な行動を警告するシステムの試験運用を開始したそうです
質問者:
AIが行政の不正を減らすことに活躍することは間違いなさそうということなんですね……。
筆者:
AIが「省人化」に向けては活躍することは間違いないと思いますからね。
行政コストを削減することが出来れば減税などにも取り組むことが出来ます。
ただ「AIをトップ」にするというのは、「責任の所在」と言う意味でよく分からなくなります。
人間が責任をもってAIを「ツールとして活用」と言う形が望ましいのではないかと思います。
現状、AIが意思を持って行動しているということもないので責任を持つことはありませんからね。
質問者:
日本がAIを活用して省庁が省人化によって減るということはあるんでしょうか?
筆者:
日本では未だに「こども家庭庁」ができたり「防災庁」が新しく検討されたりと、
行政の横の情報共有と言うよりポストを増やして既得権益を強化する方向性に向かっていますからね。
省人化に向けて多少の動きがあるとはいえ、「ポストや利権を増やす活動」の方が目立っているといった印象ですね。
質問者:
あまりにも残念過ぎますね……。
筆者:
日本は「違法にはなりにくい」歪んだ利権構造や中抜き、恐らくあるであろう「迂回キックバック」が政治を歪めまくっていると思います。
僕はあらゆる献金を税額控除(税金を減らす効果)を無くすといった対策を立てることで、余ったお金で献金&節税と言う現状からは改善できるのかなと思いますね。
ということでこれからもテクノロジーと政治のようなテーマについて個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。