第07話 季節は巡る
青い空は世界を包み、流れる雲は世界の流れを教える。
ルキとレシアが大人の階段を上っていく途中で、彼らの間には特別な絆が芽生え始めた。
共に過ごした日々の中で、ルキは次第にレシアに対する特別な感情が大きくなったことに気付く。
空に向かって背を伸ばし、大地と触れ合うように葉を横へと伸ばす。
雨の日は大地や草花が恵みを喜び、木々は優しく雫を落とす。
ある静かな夜、ルキとレシアは星空の下で寄り添い合って話した。
「レシア、君がどう考えるかは分からない。姉弟のように育ったから、それ以上の感情は君にはないかもしれない。だけど、僕は君と一緒にいると本当に幸せだよ。君の笑顔を見るたびに、僕の心が温かくなるんだ」
穏やかにルキが語りかけると、膝を抱えてレシアは微笑んだ。
「私も同じ気持ちよ、ルキ。あなたと一緒にいることで、私は強くなれると感じるの」
彼らの絆は日に日に深まり、やがて2人の絆は形を変え、愛を育んだ。
季節は巡り、世界は少しずつ姿を変えていく。
そして、時が経つにつれ、レシアは新しい命を宿した。
「ルキ、私たちにも子どもができるみたい」
レシアは感動と喜びの混じった声で言うと、ルキは目を見開いた。
「いやだったかしら?」
不安そうにレシアが尋ねると、ツーッとルキの目から涙が零れ落ちた。
「レシア、本当に? 本当に僕たちにも子どもができるの? これ以上の幸せはないよ」
涙が滲む声で言ったルキの顔には、嬉しそうに満面の笑みが浮かだ。
2人は新しい家族を迎える準備を始め、夏が過ぎて木々が秋の到来を告げた。
目が回る日々も落ち着きを取り戻した頃、外は白い世界に包まれる。
この時期が、2人はとても好きだ。
暗い夜も、白い雪が光を拾って明るくする。
寒い夜も、その寒さを分かち合う人が隣に居てくれる。
世界が静寂に包まれても、温かな時間は安心感を与える。
未来に対する希望と期待で胸をいっぱいの2人に、ババ様も彼らを温かく見守る。
「子どもの成長を見守りながら、おまえさんら自身も親として成長していくんじゃ。自然の摂理と同じように、愛と共に育むのじゃ」
ババ様は微笑んで言うと、レシアは疲弊した様子で愛おしそうに、腕の中で眠る新たな命を優しくなでた。
ルキは優しい眼差しで新しい命を見つめ、柔らかく微笑むとレシアの頬を優しくなでた。
ルーメンとエレンブルも喜び、彼らの家の周りに祝福を与える。
雪が降る中、白い花は咲き誇り、力一杯に葉を天へと伸ばす。
愛おしそうに花の頭は雪を見つめ、そっと触れられない悲しみを内側に宿す。
「新しい命が誕生するなんて、本当に素晴らしいことだね」
ルーメンは感動した表情で言うと、エレンブルも微笑んだ。
「そうだな。我らの力も、彼らの未来を守るために尽力しよう」
こうして、ルキとレシアは新しい命を迎え、愛と希望に満ちた日々を送り始めた。
冬は終わりを告げ、世界は春の到来を喜ぶ。
新たな命の芽吹きは花を咲かせ、新たな命の循環を造り上げる。
レシアと子どもを見守っているルキは、ふと東の空を見上げた。
彼は周りに聞こえないように、空に向かって小さく呟く。
「エレンブル、ルーメン……君たちは、ここからもう離れた方が良いよ。もうすぐ、ここも世界が変わる。昔、言っただろ? 人は力を欲する生き物だって……君たちの存在が分かれば、彼らはそれを求める。君たちが傷付くのは、僕もレシアも見たくない。だから、ここを離れてくれ」
ルキは微笑むとレシアの元に駆け寄った。
その背中は、昔エレンブルとルーメンが見た少年の背中にとても似ていた。