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第06話 成長と絆


 少年と少女がババ様と住む小さな家は村の端にあり、庭には季節の花々が咲き誇っている。

 少年と少女は毎日ここでババ様から様々なことを学ぶ。


「おはようございます、ババ様!」


 庭に出たルキが元気よく挨拶すると、ババ様は優しい笑顔で彼を迎えた。


「おはよう、ルキ。今日も元気だね。さて、今日は草木の手入れを教えようか」


「私は遊びに行きたいよ」


 少女が口を窄めて言うと、ババ様は大きくため息をついた。

 そして、ババ様は庭に目を向け、背中で手を組んで優しく語る。


「いいかね。草木の手入れは大切なこと。精霊から力を借りれぬレシアとルキには、これが特に重要なのじゃ。精霊の力を借りられるわしらも、自然を大切にする心を持っておる。けれど、それでも借りられる力は微々たるものなのだよ。人や精霊が生きていくことには、自然は切っても切れない関係があるのじゃ」


 ババ様はそっと土に触れると、穴を開け始めてそこに種を落とす。


「いいかね。決して忘れずに覚えておくのじゃ。自然の中には多くの真実が隠されておる。自然を観察し、その成り立ちを理解することが、人としての成長に繋がるのじゃ」


 ルーメンとエレンブルもその様子を見守りながら、ババ様の話に耳を傾けていた。


「ルーメン、貴様はこれをどう思う?」


 エレンブルが静かに尋ねると、ルーメンもゆっくりと話し出す。


「エレンブルが言いたいことは分かるよ。僕も様々な命が生まれた頃、彼らのように様々な命が自然と共に成長していく姿を願っていた」


「そうか……時折考えるのだ、争いはまるで闇の力だ。全てを無に帰す」


「そうだね……そして、そこからは何も生まれない、光のない世界に変わる」


「だが、我は2人が気に入った。力が使えずとも、力を追い求めず。2人にできることを日々探して居る」


「僕たちと似てるね」


「そうだな……我もそう感じた」


 ルーメンとエレンブルは語らうと、そっと少年と少女の周りに力を使う。

 それは、些細な魔法で、神秘的な魔法だ。

 小さな花が芽吹き、蜜を求めて虫や蝶が集まる。

 当たり前のような出来事だが、当たり前じゃない出来事でもある。


 それからというもの、来る日も来る日もエレンブルとルーメンは少女と少年の近くにいる。

 時には注意深く観察しても失敗し、花を枯らす時期もある。

 それでも、成長の過程が自然にいき、庭一面に草花が咲き誇る年もある。

 少年と少女は、闇と光の精霊の旅の話を聞いて世界を知り、ババ様の指導によって生きる術を学ぶ。

 闇と光の精霊は、彼らが創り出した世界の法則を学び、少年と少女とともに将来を語る。


 時間は歩みを止めず、少年は青年へと成長し、少女は若い女性へと成長していく。

 ルーメンとエレンブルは見た目も声も変わらないが、4人の仲は深まっている。

 時にはレシアとエレンブルが粗相をし、青年がそれを叱り、ルーメンがルキを宥める。

 ある年は青年が寝込み、レシアが付きっきりで様子を見て倒れることもあった。

 その時は、ベッドに横たわるルキとレシアを心配し、エレンブルとルーメンや精霊たちがまった。

 それでも、「これは自然なことよ。だから悲しそうにしないで」とレシアは優しく告げた。

 そして、「僕たちも自然の一部なんだ」と迷いのない声でルキは語った。


 2人が成長しようとも、世界は厳しい現実を2人に突き付ける。

 けれど、嵐が去った朝には、世界は優しく2人に寄り添う。


「貴様は、明日闇に呑まれるかもしれぬと思うと、怖くはないのか?」


 ある日、唐突にエレンブルがルキに尋ねると、青年は悲しそうに笑う。


「闇に呑まれるのは怖くないよ。世界には闇が必要だから……だけど、そうだな……闇に呑まれるより、レシアの明日が唐突に誰かに奪われるのは怖いな」


 そう言った青年は、そっとエレンブルの隣に座り、空に広がる星空を見つめた。


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