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第05話 真実の光と影


 少年と少女を隠れて見ていた2人の精霊は、わざとらしく声をだす。


「おっ、何だ、ルーメン先客が居るぞ」


「あっ、エレンブル、本当だね」


 声が聞こえて振り返った少女は、精霊を見つけると嬉しそうに笑顔になった。


「わぁぁぁぁ! 見て見て! あの話は本当だったのよ!」


「本当に居たんだ!」


 先程まで俯いていた少年も、嬉しそうに目を輝かせている。


「はははっ! どうだ! 我々に逢えて嬉しかろう!」


「もう、エレンブル恥ずかしいからやめてよ」


 腰に手を当てエレンブルが笑うと、ルーメルは額を押さえた。

 しかし、エレンブルは胸を張って、自信たっぷりに言う。


「何だ! ルーメン、貴様が喜ぶと思うと言ったのだろ! 我はおまえの話を信じただけだぞ!」


「うんうん。そうだね。もう2人とも引いてるよ?」


 唖然とする少年と少女を見ながらルーテルは言うと、エレンブルは真っ向から立ち向かう。


「そんなわけなかろう!」


「私たち、初めて精霊を見ました! ルキ! 私たちにも精霊が見えるんだよ!」


「うん。姉さん。頬をつねっても痛い。夢じゃないんだね」


 少女と少年は精霊が見えることが当たり前のこの世界で、精霊と会ったことがない。

 そのため、自分たちも周りと同じだという安心感と嬉しさに溢れた。


「なら、これはどうだ!」


 そう言って闇の精霊であるエレンブルが闇の力を使うと、少年と少女から歓声と拍手があがる。


「すごいだろ! ははははは!」


「なら、僕も少しだけ」


 そう言った光の精霊であるルーメンがエレンブルが出した黒い玉の中に、キラキラと光の力を使った。


「綺麗だわぁ」


「うん、とても綺麗だ……」


 2人は食い入るように丸い球体を見つめていると、次第に丸い球体は消えていく。


「消えてしまったわ」


「儚いね」


「何だ? 貴様らも使えばよい。もしや使えぬのか?」


 エレンブルがそう言うと、2人は俯いてしまう。


「エレンブル、さっき僕が言ったこと。君はもう忘れちゃったの?」


「あ、すまない……。まさかこの世に、使えぬ者が居るとは嘘だと思うておったのだ」


 精霊が当たり前に見えるこの世界で、人々は精霊に力を借りて魔法を使う。

 けれど、少女と少年は精霊の力を借りて魔法を使うことができない。


「彼らの前に精霊が姿を見せないのは、力が貸せないからって教えたじゃないか」


「だが、我らのことは見えて居るだろ!」


「見えているけど、彼らは精霊のマナを使えないんだよ! 僕たちの力だと彼らの負担も大きいんだ!」


 ルーメンとエレンブルが言い合いを始めると、困った様子で少年と少女は悲しそうな表情を浮かべた。


「あ、あの! ごめんなさい! 私たちが原因でお2人が揉めることはないです!」


「そうだね。姉さんの言う通りだと思います。僕たちはお2人が、力を見せてくれたのが嬉しかったので、言い争う姿は見たくありません」


「何だ、貴様らは使ってみたいと思わぬのか?」


「……誰かを守れるなら、ボクも使ってみたいです。でも、誰かが傷付くならこのままでいいです」


「私もルキと同じです」


 ルキが悲しそうに言うと、少女は胸を張って言い切った。


「何だ? 誰も傷付いてないだろ?」


「人は力を欲する生き物です。今ボクたちがいる場所は平和だけど、もっと東に行けば争いが起きていると聞きました。そして、ボクは人が争うことを知っています」


 胸に手を当てて少年が言うと、エレンブルは興味がなさそうにそっぽ向いた。


「なるほどな。実につまらん少年だ。なぁ、ルーメルも、そう思わnか?」


「エレンブル、彼らの言っていることは本心だと思うよ。だから、あまり煽らないであげて」


 ルーメンはエレンブルの隣に行くと、旅をしていた頃のように隣に立った。

 世界は青く、耳を澄ませば精霊と世界は真実を歌い、目を閉ざせば人々の嘘に塗れている。


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