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第02話 光と影


 ある日、ルーメルとエレンブルは深い森の中に辿り付いた。

 森は非常に暗く、ルーメンの光がなければ何も見えない。


「エレンブル、この森はなぜこんなにも暗いんだろう?」


 ルーメンが問いかけると、エレンブルは少し考え込んだ後に答える。


「この森は、我が闇の力が強く働いておるやもしれぬ。光が届かぬ場所ゆえ、闇が深まったのであろう」


 彼らが森の奥へと進んでいくと、エレンブルは突然大きな湖にたどり着く。

 彼は上を見上げ、再び湖に視線を向けると、寂し気に湖を見つめる。

 今の状況が続けば、この湖も闇に呑まれてなくなることを、彼は知っている。

 この森も、いつかなくなるんだろうと思えば、自分の存在価値を見出せない。

 ルーメンがいれば、世界は明るく、綺麗なものだからだ。


 少し遅れてルーメルが湖に辿り着くと、湖の水は透明に変わり始める。

 星が舞うように彼の体から溢れた光が、湖に反射して美しい虹色に輝く。


「ここはなんて美しい場所なんだろう!」


 ルーメンが感嘆の声をあげると、エレンブルもまたその光景に見入っている。

 柔らかな光が、時折木の陰に隠れ、水を鮮やかに染め上げる。

 心地よい風が水面を揺らせば、波は光を反射してより一層綺麗に輝く。

 そして、落ち着いた水面の底に沈む大木の下には、影の隙間から命の息吹が感じられる。


「ルーメン、この場所が美しいのは、貴様の光あってのことだ。もしも貴様の光がなければ、この湖も闇に包まれて消えてしまう」


「それなら、小さな命はエレンブルの闇が守ってるんだね」


 ルーメンが優しく答えると、エレンブルは怪訝そうな顔をした。


「我が、命を守って居る……?」


「そうだよ。僕気が付いたんだ。闇があればこそ、小さな命たちはその中で安らかに眠り、明るい空を迎えることができるんだ。だから、君の存在はとても大切なんだ」


 エレンブルはルーメンの言葉を聞き、自分の手を見つめた。

 手から漏れる闇は、この瞬間にも光を呑み込んでしまう。

 けれど、その闇が命を繋ぎ止め、守っていたのだと知り少しだけ存在しても良いのかと思った。


 彼らはその場所でしばらく過ごし、闇と光のバランスが調和するまで待った。

 彼らにとっては少しの間、しかし、命に限りがあるものからすれば、それは長い期間なのかもしれない。

 これまでしてきたことだが、今ならこの調和がいかに重要であるかを実感できる。

 生命が生まれることは、必ずしも当たり前ではない。

 けれど、生命が生き続けることも、当たり前ではない。

 それぞれ、対比になるものが存在し、誕生してもなおその対比のおかげで生きられる。

 エレンブルとルーメンは互いの存在が世界にとって欠かせないものであることを改めて確認し合ったのだ。


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