第01話 芽吹き始める命
光の精霊ルーメンと闇の精霊エレンブルは、共に並んで歩く。
行き先が決まっていない彼らの旅は、自由で希望と虚しさが共存する。
それでも、彼らは自分たちの存在の意味や世界の成り立ちを探るため、広がる大地を歩き続ける。
「ルーメン、次はどこへ向かうつもりだ?」
エレンブルが静かに問いかけると、ルーメンは太陽のような笑顔で答える。
「分からないけど、どこか素敵な場所が待っているはずさ」
前を向いて歩くルーメルの足取りは軽く、辺りを見回しながら歩くエレンブルの足取りはどこかぎこちない。
彼らがどれだけ歩いたのか、それすらも分からない。
けれど、彼らが歩いた傍から風が吹き抜け、何もない、何も聞こえない、新たな土地に足を踏み入れた。
大地は2人の到来を待っていたかのように、小さな生命の息吹を宿す。
「ここには、まだ何もないのだな」
エレンブルが大地を見渡しながら、静かに呟いた。
「でも、それが良いんだよ。僕たちがこの場所に命を吹き込むことができる」
ルーメンが手を広げると、彼の周りに光の輝きが広がり、草花が芽吹き始める。
エレンブルはどこか退屈そうに、大地に向かって闇の力を使う。
「もう、エレンブルは本当に興味がないんだね」
「そういう訳ではない。ただ、本当に我の力が役に立っているのか分からぬのだ」
俯いてエレンブルが言うと、ルーメンは太陽のような笑顔で笑う。
「時間が経っても、花も草もすぐには枯れないんだ! 僕1人ならすぐに枯れていたよ。長い間、眺められるのは素晴らしいことだよ。命が尽きても、またそこから命が宿るんだ。1人だった時とは違う」
「我はそう感じん、貴様が空を青く染めようとも、次第に空は黒に染まるだろ」
暗くなり始めた空を見ながら、エレンブルは寂しげに呟いた。
「うん! でも、また空は青くなるよ! 僕気付いたんだよ、空がずっと青いままだと、草花はすぐに枯れてしまうんだ」
楽しそうにルーメンは言うと、そっけない態度でエレンブルは言う。
「どちらも枯れてしまうなら、同じだろうに……」
「そうでもないよ? 定期的に空が闇に染まる時があるから、前より草花は長く生きているんだ」
「変わらん。どうせなくなるものだ」
冷たく言い切ったエレンブルは、そのまま歩き出した。
世界が闇に染まる時間帯は、全てが消えてしまうのではないかと思える。
その時間が彼は嫌いだ。
しかし、ルーメンは空が暗くなる時間が好きだ。
また空が青くなれば、草花は起きてきたかのように、空に向かって手を伸ばすから。
それから、長い年月を経て。
地の精霊が生まれると、植物たちが元気に育った。
風の精霊が生まれると、花の種を運び。
水の精霊が生まれると、大地を潤した。
火の精霊が生まれると、空気は温かくなり。
2人から6人に増えると、世界はどんどん色鮮やかに染まった。