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第00話 世界の始まり


 この世界にまだ何も存在しなかった頃。


 世界はただ闇に包まれていた。


 何も見えない……

 何も聞こえない……

 何も香らない……

 何もない世界……


 世界は無限という可能性を秘めながら、無限に広がる闇に覆われる。


 その中で最初に誕生したのが闇の精霊。

 しかし、闇から闇が生まれただけ。

 そこからは何も生まれることはない。


 黒い髪は揺れ、時折輝く青い光を放ちながら闇が一段と濃さを増す。

 赤い瞳は闇を見つめながら、彼は独りの世界で生まれた意味を探す。

 存在する意味、存在する理由を考え悩む。

 けれど、そこから答えなど生まれない。


 彼は暗闇をあてどもなくひたすらにさまよう。

 黒と紫を基調としたローブに描かれた紋章は、答えを教えてなどくれぬ。

 世界に彼の声だけが響けばいいのに、それすらも闇は許してくれない。


 何年も、何十年も、何百年も、そして、何千年も独りだけの世界。


 彼は闇に飲み込まれそうな声で呟く。


「何もないこの世界において、生きる意味はあるのであろうか」


 世界は無情にも、彼を闇に閉じこめる。


 次に誕生したのは光の精霊。

 サンライトゴールドの髪は陽光のように輝く。

 闇の中で誕生した光はさらに深い闇を生む。


 けれど、彼の周りは暖かな光を放つ。


 彼は金色の瞳で、照らされた地面を悲しそうに見つめた。


 今まで何もなかった大地が苦しげに眠る。

 彼は優しく大地を触り、起きるのをひたすら待つ。

 今まで何もなかった大地が苦しげに眠る。

 彼は優しく大地を触り、起きるのをひたすら待つ。


 時は過ぎ、大地がゆっくりと目を覚ます。

 光の精霊は周りを見渡すが、どれだけの時が過ぎたのか分からない。

 それでも、彼は太陽のような笑顔で笑う。


 目覚めた大地は、光の精霊の力を借りて花を咲かせた。

 初めて見る花に、彼は喜び寝転がりながら眺める。

 しかし、彼の周りは常に明るい。

 次第に花は元気をなくし萎れ、次第に重たい頭を地面に落とす。

 彼はそのことに悲しみ、そっと花に触れて見守るが、花は枯れてしまう。


 命とは短いものなのだと、光の精霊は学ぶ。


 彼はふと立ち上がると、辺りを見渡す。

 世界は闇で覆われているのだと彼は思う。

 そして、白と金を基調としたローブは彼の歩幅に合わせ、微かに弾むように動く。

 それは、行き先の決まっていない旅。


 それでも、彼は闇の中を照らしていく。


 風が吹き付け、雨が降り始め、大地を潤す。

 大地には花が咲き、短い一生を終える。


 世界が半分に染まった頃、2人の精霊は出会いを果たす。

 それは、彼らにとって衝撃的なこと。

 お互いが独りだと思っていた世界に、もう1人いるのだから。


 闇の精霊は寂しげに呟く。


「光の精霊よ、貴様は知って居るか? この世界には何もないのだ。何も……」


 光の精霊は悲しげに呟く。


「闇の精霊よ、この世界にはたくさんの命が生まれるんだ……儚い命が……」


 闇の精霊は光の精霊を見ると、光が悲しげに笑った瞬間だった。

 闇は俯き、そこからまた闇が生まれる。


「我は闇しか生み出せぬ。それでも、生きている意味はあるのだろうか」


 ふわふわと闇から漏れ出した闇が、光を飲み込もうとする。

 それでも、光の精霊は闇の精霊の隣を動かない。

 光の精霊は何もない世界を、知りたいと思う。

 そして、彼は暖かく呟く。


「闇よ。一緒に世界を周らないか? 2人で周れば、何か変わるかもしれない……もう独りは悲しいんだ」


 闇の精霊は、素敵なもので溢れた世界を見てみたいと思った。


 そして、2人は2人で宛のない旅に出ることにした。


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