スノードロップ
仄かにBLのような表現がございますが
作品自体はBLではございません。
どうして、私の目の前にいるこの男は笑っているのだろう。
この男のせいで、私の姉は飛び降りた。
姉は優しい人だった。
困っている人がいたら、自分のことは二の次にしてしまうような人だった。
好きな人が出来ても自分の感情は押し殺して、好きな人と、好きな人の好きな人とが結ばれるように手助けをするような人だった。
そんな姉に、初めてできた彼氏だった。
初めて話を聞いた時、ようやく幸せになるのかと、やっと姉を愛してくれる人を愛するようになったのかと
そう思った。
けれど違っていた。
この男は、本当に愛する人が他にいたのだ。
その事実を知った姉は、それでもいいと、あの人が幸せになるならと、自分を犠牲にして
この男の幸せを願った。
けれどこの男は、姉に産ませた子供をこの男と、この男の本命とで育てると言い出した。
次の日、姉は飛び降りた。
15階のマンションの屋上から飛んだらしい。
姉はこの男に殺されたのだ。
なのに今、私の目の前にいるこの男は笑っている。
この男がいなければ、姉は私とずっと幸せにくらせたのに…こんな死に方をしていいような人じゃなかったのに。
私は目の前の男にスノードロップの花束を渡した。
「彼氏さんにも渡してあげてください」と言いながら。
最初は首を傾げていたものの「姉が好きな花だから」と言うと、男は「ありがとう」と言いながら病室を後にした。
そして私は、眠っている姉にもスノードロップの花を一輪、髪にさしてあげた。
「もう頑張らなくてもいいよ、お姉ちゃんは私が幸せにするからね」
病院を後にした私は、今日のことを考えながら帰路に着いた。
もう準備は出来ている。
「今からいくね、お姉ちゃん」
私の浮いた足元にはスノードロップの花が散らばっていた。
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花言葉
あなたの死を望みます。
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