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第9話 本当の婚約?(聖女エルメリア視点)

「ふむ。では、先ほどのアルス殿じゃったか?彼は大公家のものというのは本当なんじゃろう?であれば、彼と結婚すればいいのではないか?まんざらでもない様子じゃったしのう、エルメリア」

黙れこの酔っぱらい!

計画を黙っていたせいでこうなっているのに、邪魔しないで!


「なるほど。それは言い考えかもしれぬ。早速、大公に聞いてみよう。なに、彼の家とは通信魔道具も設置してあるからすぐだ。待っているがいい」

そう言って国王陛下は私の意志も確認せずに行ってしまった。

ちょっと待って。

驚いている間に話を進めるなんて酷いよ~。


しかも神殿長、また寝てるし。

気持ちよさそうに寝てんじゃないわよ!!!!!




「失礼しますわ」

私が呆然とそこに座っていると、王妃様が来られた。


「あっ、はい」

「陛下はどちらへ?エルメリア様はどうされたのですか?」

「あの……」

陛下の行き先は知らない。

そして私がどうしたのかを話すのも今は厳しい。

なにせ……


「すみません、私まで来てしまって」

天使が王妃様に付き従っていた。

先ほどとは装いが違って、ちゃんと男の方の恰好をしている。


花血出そう……。


ちょっと待って。

カッコよすぎるから。


そんなに素朴な目で見ないで。

綺麗すぎるよ、お目目が。


「あらあら。アルス様、エルメリア様は大丈夫ですわ。そんなに自然に触れては恥ずかしくなってしまいます」

「あっ、すみません。つい……。エルメリア様、すみません」

「いえ、急なことでちょっと驚いてしまいましたが、大丈夫です。ありがとうございます」

王妃様が自然に離してくれて助かった。

あのままアルス様のお顔を見つめていたら、脳が死んでしまうところでした。


しかし、落ち着いて見ると、とんでもなく綺麗な人ね。

こんな人に婚約者がいないなんてありえないわよね。


地位もあって、ステキで、それに無法者を捕らえるくらいだから強い人なんだろう。


私じゃあ、釣り合わなすぎる。


こうして拝見できるだけで幸せ。

眼福だもの。



「はぁっ、はぁっ……ん?フレヴェール?」

「陛下。エルメリア様を放っておいてなにを?」

「あっ、いや、その……」

陛下はやはり王妃様には逆らえないようだ。


「その?」

「いや、ちゃんと説明したのじゃ。それで希望を聞こうと思ったら、神殿長が……神殿長?寝てしもうたか……」

「はい」

お爺ちゃんは相変わらず気持ちよさそうに寝ているわね。


「そうなのですか?」

私の方を見ながら聞いてくる王妃様。恐る恐るその様子を見つめている国王陛下。

心臓に悪いから陛下を試すような形をとらないで頂きたいのですが……。


「はい。説明頂きました」

「そう。疑って悪かったわね。それで?」

「あぁ。それで希望を聞いたんじゃが、神殿長からはこれから婚約者を探すのは難しくなったのではないかと言われてな」

「なるほど。ですが、それなら問題ありませんわ。ちゃんと第三王子も、それからあなたの弟の息子であるリーベルも婚約者を定めておりませんので」

「あっ……」

国王陛下、なにが『あっ』なのですか?

もしかして慌てすぎてそれを失念していたと?


どんな方か存じ上げませんが、すでに私に紹介する相手は定まっていたのですか?


「あなた?今、なにをしてきたのですか?」

王妃様が国王陛下を見る目が怖い……。夫婦喧嘩なら私はこの場から失礼したいです。

 

「その……神殿長から、アルスはどうだと言われてな……」

「アルス殿を?」

「えっ、僕ですか?」

驚く王妃様とアルス様。

そうですよね……さすがにご迷惑ですよね?


こんな話を軽々と、本人のいない間にするなんて……。

でも良かった。私が言ったのなら恥ずかしさで死にそうだけど、神殿長が言ったんだし、断られても重い話にはならないだろう。



「それで、もしかして大公に確認してきたとか言わないわよね?」

「えっ?いや……」

「したの?あなたが?」

「あぁ……」

「もう勘弁できません!考えなしにもほどがありますわ!あなた方の受けた国王教育とやらはどんなものだったのですか?政治にしか発揮されないものなのですか?これも政治ですわ!そんな話をあなたからされたら、もしアルス様に心に決めた相手がいたとしても頷くしかありませんわ!最低です!」

「えっ……」

王妃様が激怒している。それはそうだろう。

私も今気づいた。


聖女とは王族の中で誰かが結婚してきた。

それがこれまでの歴史だ。

今回だって普通に考えればそれに従うだろう。


その時に、聖女に臨まれた王族がいたら?

聖女には望む相手がいたとしても王族との婚姻を求めるのだ。当然、その王族にも求めるだろう。

本人の意思は無視して。


もしアルス様に想う方がいたとしても、もう叶わない。

私が……神殿長が、だけど……私たちが望んでしまったから。

それを国王陛下が聞いてしまったから。


断れない……。


最悪だ。


こんなにも素敵な人が私のせいで……。

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