表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/11

第8話 真相(聖女エルメリア視点)

私は別室に案内され、国王陛下はすぐ戻ると仰って侍従たちに指示を出してからどこかへ行かれてしまった。

その間に侍従やメイドたちからコートと毛布を渡された。

ここからの話は座ってゆっくり聞けばいいと言うことだろう。

あと、紅茶もいただいた。

とても美味しいものだった。

 

少し落ち着くと国王陛下が戻ってこられた。

 

「えぇと……どういうことですか、国王陛下?」

「それはじゃのう。いや、まずは申し訳なかった。本来なら担って頂く必要もない苦労をしてもらったのに、そもそも説明もしていなかったとは。全て余の不始末じゃ」

「はい……」

神殿長が知っていたなら、神殿長の不始末な気もするけど。


「すまんかった。話しておらなんだ」

そして神殿長もやって来た。

どう見てもお酒を飲んで気持ちよくなってしまったお爺さんだ。

しっかりしてください、神殿長。私、結構、大変だったんですよ?


「まずは、今回の婚約の件。これは偽装だ」

「はっ?」

いきなり衝撃の事実が発覚したわね。

えぇ?

今までの私の苦労というか心労はなんだったの?


「なぜそんなことを?」

「順番に話すので、聞いて欲しい。理由はレオナルドの結婚相手として色々画策をしておったネフェテヴェリア公爵家を調べるためじゃ」

「はぁ……」

そこからは色々と説明してくださった。


ネフェテヴェリア公爵家は娘を王家に差し出し、いずれ王妃となってこの国の支配を目論んでいたらしい。

新興の公爵家である彼の家には黒い噂があり、領民を虐げ、隣国と怪しい取引を行い、それによって財貨を貯めているというものだった。


もしそれが本当ならネフェテヴェリア公爵家の娘を第一王子に嫁がせることはできない。

そのため、聖女との婚約を利用して、どのような反応をするか見ていたらしい。


なんと先ほど、夜会でも捕縛者が出ていて、関係性なども調査するらしい。


ただ、こんな大それたことをやったにもかかわらず、恐らくネフェテヴェリア公爵家は白。つまり無罪とのこと。

じゃあ、その黒い噂は何だったのか、という話になるが、どうもこれを流していた別の貴族がいたらしい。


その家もレオナルド殿下のもとに娘を送り込もうとしていた。

しかし今の時点では目立たずに実行し、いずれ罪をでっちあげてネフェテヴェリア公爵家を追い落とし、その後に権勢を掴むつもりだったらしい。

それがモレーティス公爵家。


現時点では目立たずに側室を目指し、現国王や王妃が引退したあとでの隆盛を狙っているのではないかとのことだった。

そしてこの夜会に武器を持ったものを入れたのは厳罰に値する。

ついに尻尾を掴んだということだった。

それをなしたのがアルス様……すごい……ステキすぎる。


なぜ女装していたのかはわからないけど、男性と聞いてしまったら……その、なんとか捕まえられないかしら。


婚約が茶番だったということなら、私の婚約者は空席のはず。

そしてアルス様は大公家のご出身とのこと。

その、高望みをして申し訳ないけど、歴史にある聖女と王家との無難な結婚に合致すると思うの。


今回の取引が上手くいった暁には、これまで以上に聖女、そして神殿の活動を支援するし、希望にこたえると仰る国王陛下に対して、それを言いたい。

言いたいけど、はしたないかしら。


さすがに清貧で、質素で、謙虚な聖女として、いきなり男の方を要求するのは……。

でも、これってチャンスよね?

アルス様もとても親切な方だったし。


うん、この場には国王陛下と私だけだし、言ってしまっても、ダメならちょっと私が恥ずかしいだけよね?

そうよ、気軽に言ってみればいいじゃない。


「計画も知らなかったならまた考えてからでもよいが、何か希望はあるかのぅ?」

「私の婚約者は白紙ということでよろしいんですよね?」

「ん?あぁそうじゃの。あぁ、心配なら杞憂じゃ。ちゃんとこの後、実は王子と聖女の婚約が謀略を暴くためのもので、彼らには協力してもらっていたと発表するからのぅ。今後、エルメリア殿の障害となることはないと約束する」

「あっ、ありがとうございます」

えっと、そうじゃないのよ、国王陛下。

私は……


「ふむ。しかし前もって聞いていたとは言え、エルメリアももう18歳になる。今から相手を探すのはちと難儀するかもしれぬ」

「それは申し訳ない。王家で責任をもってお探しすることを約束していた。もちろん約束の通りにする」

そう言えば神殿長もいましたね。

しかも酔っぱらっているのに現実を突きつけないで欲しい。


しかし、そうだ。私たちくらいの年齢になれば、早いものは結婚しているし、高位貴族なら婚約者もいるだろう。

アルス様だって……。

急に気持ちがしぼんでしまった。

勢いで言っても迷惑よね?


むしろこれで国王陛下がアルス様の気持ちを無視して動いたりしたら?

実はアルス様には想う相手がいたのに、私が願ったせいでその方と別れることになんかなったら?

あんなに優しい方に酷いことをするのはさすがに嫌……。


もしアルス様に万が一にも相手がいなかったら改めて言えばいい。

ここは一旦考えると伝えて引くべきね。

そうだ。それがいい。

アルス様の態度や視線、言動は決して私を蔑ろにしたりするものではなかった。


少し調子に乗って言えば、決して悪い感じではなかった。


婚約が嘘だったのなら、結婚式もないのだし、一度会ってお礼を言いたいと打診すればいいわよね。

なんと、私への刺客に対処して取り押さえたのはアルス様だっていうし。


そのお礼で。


と思ったのに……。



「ふむ。では、先ほどのアルス殿じゃったか?彼は大公家のものというのは本当なんじゃろう?であれば、彼と結婚すればいいのではないか?まんざらでもない様子じゃったしのう、エルメリア」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ