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第7話 男前な王妃(アルス視点)

「3人とも落ち着け。さすがに結婚前の夜会で騒ぐ愚かさくらいわかるでしょう」

「しかし母上」

「黙りなさいレオナルド」

「はい」

えっ?ママに怒られて黙った?


「まずは、どこから話せばいいでしょうか?そうね……まずはエルメリア様」

「わっ、私ですか?」

なぜ聖女さまなんだ?

もしかして聖女様の態度が王家に対して不敬だったとか?

さすがに酷い扱いを受けていたと思うけど、家柄から言ったら確かに聖女様は王家につりあうものではなかったはずだ。



と思ったけど、杞憂だった。


「まずは謝罪を。第一王子とはいえ、思いあがった言動を謝罪いたします。そしてそれを咎めることもしない国王のことも」

「なっ……フレヴェール!」

「黙りなさい。まったく。いかに次期国王となれば厳しい教育と訓練が待っているからと言って、あなたは甘やかしすぎです。それに増長してあなたの話も聞かない、それも公式の場で。よくもそんな状況でのほほんとしていられますわね」

「……」

王妃様、強い……。


「大臣たちもです。聖女さまと神殿長に頼み込んで、王家の都合でこうして婚約してもらっていたというのに、あなた方はなにをしているのですか?」

「申し訳ございません。しかし、ことを運ぶには秘密裏に……」

「お黙りなさい。最低限の礼節を示すくらいのことはできたはずです。それをレオナルドの増長を放置するなど」

「申し訳ございません」

周りの大人たちがみんな謝ってる。

それを見つめる貴族たちも騒然としている。


「えっと」

「すみません、聖女様。計画にご協力いただいたにもかかわらず、とても不愉快な思いをされたことでしょう。全て私たちの管理不行き届きです」

「えっ?」

計画とはなんだろうか。なにか王家の側に思惑があってそれに聖女さまが協力していた?

でも、聖女様の反応からすると、何も知らなそうなんだけども。


「もしかしてご存じなかったのですか?」

「えっと、何をですか?」

「「「「!?」」」」

その聖女様のお言葉で、さらに青くなる周囲の人たち……大臣さんたちなのかな?

その周りの人たちは相変わらずぽかんとしてるけど。


「どうして誰も説明していないのですか?」

「いえ、しました。神殿長に……」

「聖女様には?」

「てっきり、神殿長からお聞き及びかと……」

「聖女様?」

「すみません、なんのことだかわかりません。神殿長はその……あの通り、お耳も遠く、また俗世に興味を示さない方ですので」

確かに、聖女様が指し示した先では、お爺ちゃんが気分よさそうに居眠りをしている。

周りにはお召し上がりになったと思われる空のお皿とグラス。

楽しんでますね。良かったですね、お爺ちゃん。

そんな声をかけてあげたいくらいの雰囲気だ。


「大変申し訳ない。エルメリア殿。あとで説明を……」

「あとで?」

「今からしますのじゃ。ささ、こちらへ」

「はい……」

そう言って国王陛下と一緒に退出されていった。

大臣たちの一部は付き従おうとしたが、王妃様に睨まれて思いとどまったようだ。

それを見た王妃様が何も言わないのを見て、彼らは胸を撫でおろしていた。


聖女さまに説明するのなんて1人でいいもんね。一緒に行っていたら後でどうなっていたんだろうか?


そして……


「何の話かわかりませんが、私もこれで。さぁアルス殿。若者は若者で話をしましょう」

こいつをどうにかしてもらえないかな、王妃様。

大臣たちが全員知っている……本来は婚約者だった聖女さまも知っているはずの計画を知らされていない王子様って?


「黙りなさい、レオナルド!」

「なっ……」

「まったく。どうしてこんな遊び人のように育ったのでしょうか。国王陛下に任せたのが全ての間違いだったようね。いくら精魂が入れ替えられるほどの厳しい修行が待っているからと言って、本当に甘やかしすぎなのです。陛下も、大臣も、教育係たちも。腹立たしい。それで迷惑をするのはいつだって女なのですから」

「迷惑などかけてはおりません。では、これで……」

「いつまで男の子を口説いているのですか?」

「はっ?」

王妃様とクソ王子の親子漫談を眺めていたら、ついに王妃様が爆弾を投げ込んだようだ。

クソ王子は物凄く目を見開いて僕を見ている。


「おっ、男????」

「はい。見ての通り、男……」

「なぜ男がドレスを着ているのだ!!!?」

「え~と、これには訳が……」

まずい、どう説明しよう。そもそもなんでバレてるの?


「ふふふ。さきほど聖女さまとぶつかったと言われていましたね。きっとそれでしょう。驚いた聖女様が力を発揮してしまって、それで解けたのでしょう」

「なっ……」

終わった。

さっきからずっとドレスを着ているのがバレていたのか。

終わった。

完全に変態の烙印を押されただろう。


「男がドレスなど……貴様……」

「お役目ご苦労様ですわ、アルス様。少々不運でしたわね」

「役目?」

クソ王子が王妃様に問い返しているけど、なんのことだろう。


「えぇ、聖女様が計画をご存じなかったようなのですが、アルス様は護衛ですわ。さすがにタキシードを着て正式に参加されてしまうと色々と問題がありますし、護衛にならないので、あえて女装して聖女様についてもらっていたのですわ。結婚前に命を狙うなら、まさにこのタイミングが一番ですからね」

「あんな聖女の命を狙うものがいるのか?しかしそろそろ夜会も終わりだ。取り越し苦労だったということだろう?」

相変わらず聖女様に対して失礼なクソ王子だな。

それに、護衛って……もしかして、王妃様は僕を庇ってくれたのかな?それならありがたいけど。


「まったく、浅慮にもほどがあるわね。もういいわ、あなたには修行の前に、私がマナーや教養を叩きこみます」

「なっ、それは……」

「断ることは許しません」

ママ強い……。


「して、アルス様。怪しいものたちは居ませんでしたか?」

これはどういうことだ?いないと言った方が良い?でも、いないって言ったらまた王子が面倒くさそうだし、実際いたから報告しておこうか。


「あの人と、あの人。それから……あぁ、あの人。武器を仕込んでいますね。無力化しておきましたが、確認した方が……ストップ!」

僕が指し示したのに気付いて即逃走を図る者たち。

逃がすことはないよ。

さすがにこうして確保もせずに報告したのは、いつでも捕まえられるからだ。

本当に怪しい者かはわからなかったしね。


でも、逃げようとしたってことはそうなんだろう。


「マインド……モレーティスというのは確か公爵家でしたでしょうか?」

たぶん証拠は消していると思ったから思考を読む魔法を使ったが、共通するのはその家名だった。


 

「なっ……」


そして、会場にはレオナルド王子殿下のちょっとマヌケな声が響き渡った。

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