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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
四章

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卵に罪はないけれど

卵を売ろう。


とにかくこの卵に掛かったお金を取り戻したい。もう、なんで卵なんか相続しないといけないのよ。


「この子に罪はないんだけどね。でも、貧乏な私の所よりも金持ちの人に飼われた方が貴方も幸せでしょ?」


卵を撫でながら歩いていると、少し卵が震えた気がした。私がそんな事を呟いていると、前の方から騒がしい音と共に、歩いている人が左右に開いて行った。


「ん?なんでしょう?」


ジェローム様に聞いていると、騎士が人を分けて走ってきて、ジェローム様を見つけると慌てて止まった。


「ジェローム班長!」


「どうした?」


「は!大通りで酔っ払いが喧嘩をし、多数怪我人が!今から応援に向かう所ですが、どうも未成年の貴族同士の様でして!平民も巻き込まれ事が大きくなりそうでして!」


「何?未成年?」


「は。飲酒だけであれば良かったのですが、往来で喧嘩騒ぎですので、面倒な事になるかと。馬車の事故も丁度大門の付近で起りまして!隊長はそちらに向かわれたばかりで。あ!ジェローム班長は非番でしたか…」


「いや、構わない。我が家の名前を出せばどうにかなろうが、愚かな事だ…」


眉間にしわを寄せると、ジェローム様は私を見た。


「すみません、スペンサー令嬢、では」


「ジェローム様、ここからはもう道も分かりますし、大丈夫です」


「御令嬢、申し訳ありません!ジェローム班長、こちらです!」


そう言うと、急いでジェローム様は騎士様と共に走っていった。このままオゥルソさんの所に行ってもいいが、今日はもう遅い。私はさっさと探偵事務所に戻り、残り物のパンを食べて寝て、明日の朝早く新月に向かう事にした。


次の日の早朝。


「さ。新月のオゥルソさんの所にいこうかな」


早々に探偵事務所を出て新月の方向の馬車へと乗った。途中、市場で降りて何か買って行こうと思っていると、ちょうど前からオゥルソさんが丁度歩いてきた。


「オゥルソさん!!」


「おお!フレイ!!もうおじさんとは呼んでくれないのか?」


私に駆け寄ると、ぽんっと私を持ち上げひょいっと一回空中に投げられた。


「ふふふ!オゥルソさん!オゥルおじさんってまだ呼んでもいいんですか?」


「ああ。フレイがいいならな。あ、俺、こんな事して良かったのか?」


オゥルソさんは声を落として小さい声で「フレイはお貴族様だったな…すまんな」としょぼんと謝った。


「確かに。私以外には気を付けた方がいいです。昨日も貴族同士の喧嘩に平民の方が巻き込まれたって、聞きましたから。でも、オゥルソさんは私の恩人ですからね。私にはいいですよ」


「そうか、フレイ、有難うな。でも、フレイは俺達の恩人でもあるんだがな。とにかく元気そうで何よりだ。色々差し入れも有難うな。無理しなくていいんだぞ。リンリンからっていうのもあったが…。フレイなんだろ?」


私はリンリンさんの笑顔を思い出しながら頷いた。


「…。リンリンさんから頼まれていたんです。皆を宜しくって。だからあれはリンリンさんからです」


「そうか…有難うな。フレイ」


「ううん。オゥルソさん、オークションの事でお願いがあるんですけど、今、時間ありますか?」


「ん?行きたいのか?いいぞ。そうだな、初日は人が多い。最終日よりも真ん中の方がいいな。あー。三日後だな。三日後の昼間に行くか。フレイは今、ゴールド探偵事務所にいるんだろう?」


「はい。しばらくはそこにお世話になります。二階を借りて住んでいます」


「そうか。貴族街にも近く安全な場所だ。良かったな」


「はい」


「事務所の人間は良い奴か?」


「所長は腹黒ですが、貴族の私にも事務員のドワーフの女の子にも平等な感じの人ですね。仕事は出来そうですけど、利益追求型で分かりやすく裏表がある人です」


「そうか。まあ、フレイがそう感じるのなら悪い奴ではなさそうだな。ただな、そう言う人間は面倒事も抱えやすい。何か困ったらすぐに言えよ」


「はい、有難うございます。オゥルソさんは?何か困ってませんか?」


「あー。まあ、な。今、一生懸命ロズを口説いてんだが。なかなかな。やっぱり花を贈るのがいいのか?」


「花も嬉しいですけど、言葉を毎日贈るといいですよ。気持ちは伝えないと相手には分かりません」


「そうだな。今迄の分も全部伝えよう」


私が拳を前に突き出すとオゥルソさんもコツンと拳を合わせてくれた。ロズさんが困った顔も浮かんだけど、きっと二人は幸せになるはずだ。


「フレイ、これからここは危険になる。近くまで送ろう。俺に用事がある時は伝言をよこせ。俺が探偵事務所に行くからな。昼間でもこの辺は治安が良い所ではない。気を付けるんだぞ」


「分かりました。有難う、オゥルソ…いや、オゥルおじさん」


「ああ」


そういうと、オゥルソさんは私を連れて近くの馬車留め迄送ってくれ、馬車に乗り込むまで見送ってくれた。


ゴールド探偵事務所の前で降り辺りを見回すと、大通りに馬車が多く行きかって賑わっていた。私が馬車を見ていると、近所のパン屋さんが通りかかった。


「おや。ゴールドの所の新人さん」


「あ。パン屋の」


「明日はナッツ入りを出すよ。取っておくかい?」


「お願いします!それと別にドーナッツもあれば多めに!」


「ああ、分かったよ、で、馬車に知り合いでも?」


「いえ、馬車が多いなって」


「ああ。祭りだよ。市場の奥にもテントを張ったり、空き地にも出店が多く出るから。それで今はテントの準備をしてたり、田舎から祭り目当てにやって来る金持ちもいるんだ」


「成程ね」


「祭りに行くなら、気を付けるんだ。スリも増える」


「スリ!はい、気を付けます」


二人で話しながら路地を歩き、探偵事務所の前で別れた。事務所の中の自分の部屋に入り、卵をタオルに包んで温かくしてあげた。


「まあ、綺麗な卵だけど。でも、私、魔獣なんて知らないし。それに、魔獣をペットにするってお金が掛かるって聞くものね。貴方も金持ちの優しい人の所に買われたらいいわね」



そしてあっというまにオゥルソさんが祭りに連れて行ってくれる三日後になった。





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