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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
三章

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王宮事務局

次の日。


探偵事務所の二階で、目が覚めた私はダリアさんから教えられた裏通りにあるパン屋で探偵事務所のツケで朝食を買った。「こ、こんなに買うのかい?」と驚かれたが、タダで食べれるのだ。パン屋さんは毎回同じパンと、その日の気分や仕入れで作る物が変わる。全種類制覇したいと思うのは当然だろう。


「ダリアちゃんにもよろしく」


と、パン屋さんに言われ、一階の事務所にダリアさんと所長の分のパンを置くと二階の自分の部屋に戻った。


「始まりの女神様。天使ガブリ。ウリリ。ミリル。ラエリ。太陽の光、全ての食事に感謝を」


祈りをすませ、パンを小さくちぎって窓の外に置くと、私は残ったパンを美味しく頂いた。食事を終えると所長が事務所にやって来た。


「おはようございます」


「おはよう。寝れたか?」


「はい、ぐっすりです」


「そうか、図太くて何よりだ。後三十分で大通りから王宮行きの馬車が出るからな。それに乗るぞ。十五分後には出る。服は制服でいい」


「はい」


今日はダリアさんはいないのかと思っていると、所長は新聞を広げて読みだした。


『お嬢さん、アクセサリーを見える所に着けた方がいい。。ネックレスは服の上に。王宮に行く貴族は見える所に宝石を付ける。お嬢さんは未婚だが、制服で向かうのであれば髪の毛は綺麗にまとめて派手ではないリボンで小さく結んでおきなさい。王宮勤めの者達はそんな風にしている』


「侯爵様、助かります」


役に立たない所長は無視して侯爵に言われた通りに急いで準備をし、事務所前に出ると所長は黙って事務所の鍵を閉めて、さっさと歩きだした。


「今日はダリアさんは?」


「騎士団に向かわせている。一応、ダリアを各部署の連絡係にした」


狭い路地を抜けて、大通りに出るとすぐに辻馬車に乗り込み、王宮前まで向かった。


「王宮前で降りると、すぐに門で検査がある。事務長が話を通してくれているはずだ」


コクンと頷き、私は王都の街を見ていた。


あっという間に王宮前に着き、私達が馬車を下りて、手続きをすますと、ジェローム様とスミス事務長が迎えに来てくれた。


「朝早くからすまない。すぐに手続きに入ろう。横槍りが入るのはまずいからな、お嬢さんはジェローム家とも懇意だったのか。しかもアジュテール王弟殿下も第二騎士団も動いている。色々な部署から君の名前を聞いて驚いた。はっはっは、ジョージといい、君の人脈には驚かさっれぱなしだ。君は一体何者なんだ」


スミス事務長は疲れた顔ながらもスッキリとした笑顔で私達にそう言うと、所長に握手をして私達は法務局に向かった。


所長は王弟殿下という言葉にピクリと反応したが、胡散臭い笑顔を張り付けたまま、何も言わず、私を少し睨むとスミス様とジェローム様に礼をした。


「法務大臣に既に話しは通してある。宰相も動いてくれた。遺言書の最終確認も昨夜のうちに終え、もうすぐ、アンディ君も来る。そうすればもう、サインをするだけだ。待ち時間のうちに君の相続の件も終わらせておこう。陛下も喜ばれていたよ。陛下が直接、貴族の継承問題に動かれる事は出来ないからな」


法務局へと着くと、奥の部屋へ通され、サクサクと手続きはすんだ。


「スペンサー令嬢。特例を使う。とにかく、君の亡くなった母上の遺産を一部君が受け継ぐ。まだ、何かその遺産がはっきりと分からないという事だが、今回はとにかく、君が相続した、という事だけを先にする。まあ、後日、報告が必要な物であれば私にまた連絡をくれればいい。金額が少ない物や、小さな屋敷等であれば急ぐ必要なない。追加で税等発生しないとだけ言っておこう。まあ、仮に負の遺産の場合も、相談してくれれば悪いようにはしない。とにかくこれで君の相続は完了だ。そしてスペンサー家の全ての相続の不手際もなし、という事だ」


「よかった、有難うございます」


あんなに時間が掛かったのに、サインをするとあっという間に手続きは終わった。私は期限内に手続きが終えて、とりあえず、ホッとした。一番厄介な事か無事に終わったのだから。


私の手続きが終わると扉がノックされ、事務員の方がリンドール侯爵家のアンディ様を連れて来られた。


『アンディ。苦労を掛けた。そして、これからも掛ける』


侯爵はアンディ様の横に移動すると、優しい声でそう言った。アンディ様は私と同じ年代の男性で優しそうな顔立ちをしながらも、侯爵と同じ髪色に目の色のすらっとした体型の青年だった。


「アンディ・ドウ・リンドールと申します」と挨拶をされて所長が胡散臭い笑みを浮かべながら挨拶をしすると、スミス様がリンドール侯爵様からの遺言の話をして、アンディ様に当主となる事を告げた。


大臣やダガン様も頷き、アンディ様はグッと表情を引き締めると皆を見回し頷いた。


そして私と同じようにサクサクと手続きが済んでいき、大臣が「すぐに陛下に印を貰わねば」と言って部屋を出て行った。


スミス様はアンディ様に「遺言書と共に、君宛の物だ」と言ってシグネットリングと家宝の宝石をアンディ様に渡すとアンディ様は黙って受け取った。


そして所長は「こちらは新侯爵となったお祝いです」と言って、悪い笑顔でアンディ様にリンドール侯爵家の二人が持ってきた偽の遺言書と所長が調べた調査書類を渡すと、アンディ様はその場でさらさらと小切手を記入して所長に笑顔で渡していた。


「大変助かります」


「リンドール侯爵様、お役に立てて何よりです。今後も私共のゴールド探偵事務所を宜しくお付き合い下さい」


「ああ」


所長がそう言うとスミス様が「スペンサー令嬢、銀行からもすぐに連絡が来るはずだ」と言ってくれ、私達は挨拶をして部屋を出て、事務所へと戻った。



私達が探偵事務所へと戻ると探偵事務所の前に一組の男女が待っていた。


「おい!!!どういうことだ!!!なぜ我々が屋敷を追い出されるのだ!!」


「そうよ!おかしいじゃない!なんでアンディが新侯爵になるのよ!!私でしょう!!??」


私達を見るなり、一組の男女はそれぞれぎゃんぎゃんと騒いでいた。


『まったく…こいつらは…品位というものが無いのか…』


「ちょっと落ち着いて下さい。正当な継承者が継承しただけじゃないですか」


捕まれた襟をパンパンとはたいてニヤニヤしながら所長が答えると、二人は真っ赤になって怒り出した。


「なに!!!なんだと!!正当な継承者は私だ!何を言っている!!」


「違うわよ!私でしょ?リンドール侯爵家は私が継ぐのが当然じゃない?女でも今では継ごうと思えば継げるわよね?」


二人同時に喋り出したが、所長は涼しい顔で首を傾げる。


「ええ。リンドール侯爵様の正式なお孫様。つまり、アンディ様が正当な継承者で間違いございません。遺言書の件も正しい遺言書が見つかりましてね。無事に国王陛下までお渡しする事ができました。いやあ、まさか、侯爵家の方が私に偽物を持ってくるとは。立派な契約違反ですよ?」


「「な!!!」」


二人は口を開けて、拳を振るわせていた。


「リンドール侯爵様はアンディ様を正当な跡継ぎとして指名していましてね、国王陛下もそれを認められました。法務大臣、王宮事務長官。王立銀行の印もあります。私も犯罪に手を染める事はしたくないものでね。ちゃんと報告させて頂きましたよ」


「そんな…」

「うそよ!!!」


所長はぴらりと鞄から紙を一枚取り出すと二人に見せた。


「不当に侯爵家の財産を使ってしまっていますからね。財務局からもすぐに取り調べが来ると思いますよ。あ、あと、こちら。契約違約金の請求書です」


「はああ!!!!???」

「何よコレ!!!」


「お二方が嘘なんてつくからですよ。ああ、あなた方の部屋に会った物。リンドール侯爵様の許可を貰い、売り払う事になりました。違約金代わりに頂くようにしますが、どうですかね?今度のオークションで高値が付けばいいですが。まあいいでしょう」


ニヤアっと所長は笑顔を作ると、いつからいたのか、ダリアさんが「よいしょ」と言ってが二人の襟首をむんずっと掴むと、「邪魔ですねー」と言って、ポイっと投げた。


「ぎゃあ!!」

「うぎぇ!!」


「平民の探偵事務所と馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。こんな事務所でも、俺は誇りを捨てたりはしないんでね。平民なら騙されると?何をしても良いと?俺は踏まれたら踏み返す。どんな手を使ってもな。そう言えば騎士団が二人を探しているんじゃないかな?鉱山送りだといいな?」と所長が言うと、二人は慌てて逃げていった。


「フレイヤのおかげでリンドール家から、金がしっかり入った。あの二人の荷物もまあまあの値段になったしな。ククク」


笑う所長を放って置き、私はダリアさんと一緒に事務所の中に入った。


「フレイヤさーん、お疲れさまでした。お茶淹れましょう」


「有難う、ダリアさん、ふう、やはり王宮は疲れますね」


そう言ってソファーに座っていると、所長はウキウキした顔で入ってきて「あ、お茶、俺にもな」と言いながら、小切手にキスをしていた。







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