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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
第一章

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燃やされたって…

「セバス、お母様の資産に気付かなかったのは何故だと思う?」


私の質問にふむ、とセバスは顎に手を当てて少し考えると、眼鏡をクイっと直して答えた。


「……王宮に提出した手続きには半年から一年かかるのが一般的です。届け出、処理、完了まで時差がございます。スカーレット様が亡くなった頃、ヴィオレッタ様の資産がスカーレット様へ完了したのであれば…」


「そうか、私達は前年度、国に提出した物を使って手続きをしたのよね?」


「ええ。何も増えていないので。前年度の税の段階ではスカーレット様の資産は増えていなかった。つまり、その時には少なくとも、税がかかるような遺産相続は行われていません」


「もし、その後増えていれば」


「その時は……」


「どうなるの?」


「譲り受けた資産によっては今年度、もしくは来年度の税で問題になります。どのような資産かは分かりませんが、現金、不動産、領地、金銀等であれば国に報告する義務が生じます。しかしそれを怠っていたとなれば税は追加で払う必要があるでしょう。しかも、相続手続きが認めなければ資産は没収になる可能性も出て来ます」


「え?損の上に損?最悪じゃない」


「徴収とははそういう物でございます」


セバスと顔を合わせ、うんうんと頷きあった。これはやばい。


「私がお母様と話せればいいのに。本当、私の『加護』って厄介ね」


「『加護の制約』はそのようなものでございます」



セバスと私が話しているとお父様が書類を持って戻って来た。



「フレイヤ、あったぞ。これだ。何枚かある」


机の上に広げた書類を三人で読んでいく。最初の書類はお母様が亡くなり、すぐに父が伯爵家代理として認められた物。


「まず大切なのはコレですね」


私が一つの書類を指さすと、お父様も頷いた。


『ジョージ・スペンサーを伯爵家代理として認める。期限は嫡男、マシュー・スペンサーが成人し、それより一年以内に家督を譲る事とする。何か不備があった場合は早急に申請されたし。不備の申請はこれより一年以内であれば認める』


「次の書類は『相続手続き完了』」



他にも何枚か書類があったが、今回大切なのはこの二枚だろう。いずれの書類にも新しく資産が増えた形跡はない。とすれば。


確かめるしかない。


「セバス。どちらの日付なのだ?伯爵家代理と認められたという書類の日付は四月の一日。スカーレットが亡くなったのが三月二十日。そして遺産等の相続手続き完了の書類の日付は九月十二日。今から約三ヵ月前だ」


「旦那様。おそらくですが、当主の変更手続きは当主が亡くなってすぐに出します。その期間猶予は確か一ヵ月。そして、旦那様が伯爵代理と認められたのは四月一日。一ヵ月以内でございます。この事から翌四月一日までであれば変更は問題はないと思います。しかし、スカーレット様の命日、三月二十日であれば、何も問題はないかと」


今は十二月五日。急げばどうにか出来るのかもしれない。


「とにかく変更可能なのね!間に合うわ!」


「となると、あと約三ヵ月か。ふむ。バンシー伯爵の期限もスカーレットの命日と言われている。しかし、王都まで行かなければならんな」



バンシー伯爵のせいで、我が家に新しくお金を貸そうとする家はない。それに、バンシー伯爵の言う通り父は伯爵代理で、次期当主は若いマシュー。大きな産業がない我が家に手を差し伸べてくれる家はすくない。


もうお母様の遺産に賭けるしかない。


真っ赤なスケスケパンティーを回避するのはこれしかない。



「お父様。私が王都へ参ります!」




私がそう宣言をしてからはあっという間だった。


急いで出入りの商人のブロンさんに連絡をし、近々王都に行くのなら馬車に私を乗せて欲しいと頼むと、『明日丁度出発するのでいいのなら』と返事を貰い、私は大急ぎで旅支度を整える事になった。


セバスと一緒に慌てて荷造りをしていると、可愛いシンシアとマシューが部屋に入って来た。


シンシアは「おねえさまに、よいほんがあります」と一冊の本を差し出してくれた。


『蛙とお姫様』


パンっと本を開くと、お姫様が蛙の額にキスをしているシーンだった。そして、次のページをシンシアが開くと、綺麗な王子様が驚くお姫様の手を取って指にキスをしていた。


「おねえさま、みにくいかえるにキスをすると、まほうがとけて、かえるはうつくしいおうじさまになるのです。おねえさまも、かえるにキスをすれば、おひめさまになるのです」


「有難う、可愛いシンシア」


「おねえさま」


シンシア、なんて優しい子…。


だけどね、バンシー伯爵は王子様にはならないと思う。ただの蛙ではないのだ。相手はスケスケパンティーが好きな変態蛙。そもそもそんな相手とキスなど出来るはずもない。


額にキスするなら、頭突き一択だ。


そう言いたかったが可愛いシンシアには言えない。キラキラした目で私を見つめるシンシアに汚い物は見せる事は出来ない。セバスをチラリと見るとセバスも眉間に皺を寄せているが何も言わない。



「おねえさま、だいすき。ずっと、シンシアといっしょにいれればいいのに」


「そうね、お姉様も蛙のお嫁様よりも、シンシアと一緒にいる方がいいわね」


マシューもシンシアも私の事を心配してくれている。


「お姉様、諦めないで下さい。僕も父上とセバスと何か策がないか考えますので!」


「有難う、賢いマシュー。無理はしちゃダメよ」


マシューはとても賢い上にキリリとしたイケメンな十三歳。十九歳になるバンシー家の三人目の子供。パリスがマシューを厭らしい目で見ているのを私は知っている。


蛙の子は蛙と言う。きっと、パリスも違う種類の変態に違いない。


マシューとシンシアを守らなくては。マシューには婚約の話がチラホラ来ているが、我が家の状況から話は進んでいない。


このままでは、マシューの嫁にパリスが来てしまうかもしれない。


蛙親子に我が家は乗っ取られてしまう。


「セバス。二人を頼んだわよ」


「は。フレイヤお嬢様」


そうして私は荷造りを終えた。



「フレイヤ、気をつけるんだぞ」


「大丈夫。任せて下さい」



お父様との別れもすませた。私は気になっていた真っ赤なスケスケパンティーをお父様の執務室に行って探したが見つける事は出来なかった。


セバスに聞くと、お父様が燃やしてしまったという。


燃やすなんてもったいないと、お父様を叱りたくなったが、セバス曰く「こんな物を眼に入れておくのも嫌だ」と、執務室の大皿の上であっという間に燃やし尽くしてしまったらしい。


せっかくのセクシーランジェリーを私はじっくり見る事も出来ず、売る事も出来ずがっかりしてしまった。


ジロっとした目で執務室の大皿の上を見ると、これか、と思われる灰があったので、それを指さしながらお父様に聞いてみた。


「お父様、バンシー伯爵にパンティーの返品を求められたらどうなさるのですか?これはきっと高価な物ですよ?借金が増えたりしませんよね?」


と言うと、一瞬「やばい。あ、やばいかも。やらかした?」とお父様の顔が動いたのだが、「セクシーランジェリーなど知らん!破廉恥な物を贈る方が悪いのだ!」と言って杖を高速で動かしながら逃げていった。


「セバス。もし、バンシー伯爵から下着の返却を求められたら、『間違ってお父様が穿いてしまい、小さくて破ってしまいました、ごめんなさい』と答えましょうか」


「フレイヤお嬢様、そう致しますか。旦那様が燃やしてしまいましたから。旦那様の責任に致しましょう」


「そうよね、バンシー伯爵もお父様が穿いたと言えば使用済みを返品して欲しいとは言わないでしょ」


「ええ、そう思います。まさか、『ぐふふ、いや、返して貰おう』なんて…。ない。はず。いや、どうでしょうか?返品を求められますか?」


「あ。変態ならあり得る?」


「……まあ、その時考えましょう。フレイヤお嬢様、ブロンが到着致しました。ご準備は?」


「バッチリ。とにかく私の部屋の物は売れる物は売って頂戴。お母様の部屋の隅にも売れそうな物は分けておいたわ。セバスが見て、シンシアとマシューが使える物は残して欲しいけれど、多分全部売っていいわ」


「かしこまりました」



そうして私はブロンさんの荷馬車に乗り、バンシー伯爵から下着の返却が来ない事を祈りながら王都へと旅立つ事になったのだ。







セクシーランジェリーは燃やされた。


(*一ルーンは十円程の価値)

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