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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
三章

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話しの長いジェローム様

「あのですね…あ、私が王都に出て来た理由から話さないと」


「はい、お聞かせ下さい」


「では…」


そう言ってお茶をゆっくりと飲みながら、私が王都に出てきた原因の借金や、相続手続き、それがうまくいかないとカエルの生贄になるという説明をすると、お茶を一口飲んで、ジェローム様は頷いた。


「成程……。スペンサー令嬢はそのような理由で王都に一人で来られたのですか…」


私は頷き、お菓子を食べ続けた。外はサクッと中はトロッと、このお菓子もなかなか美味しい。


王都には美味しいお菓子が沢山ある。


これも領地に送れないかな。


「一人で領地から王都へという事で、何か大変なご事情かとは思っていましたが…。お母様が亡くなり、お父様は怪我を負われ、伯爵家を代表して一人王都で借金の返済を行うとは…。スペンサー令嬢は立派ですね」


なんだか、ジェローム様は私を見て、目を潤ませている。


私は何も言わず、お菓子を食べ続けた。


「お菓子は沢山あります。食べて下さい。しかし、バンジー伯爵家……噂は聞いた事があります…。私の方で少し調べてみても?」


私は再びお菓子に手を伸ばし、口に入れるともぐもぐしながら頷いた。


「調べてもエロ蛙変態伯爵とか、守銭奴女好きエロガエルとか、エロエロ巨乳好きオヤジ伯爵とかしか出て来ませんよ?評判は悪いでしょうが。変態なだけであまり後ろ暗い事はないはず。お金大好き変態蛙、それだけです」と言って、お茶を飲んだ。


「なんですか、先程からエロばかりではないですか。スペンサー令嬢がそんな変態な男の後妻などに…。こちらのお菓子もどうぞ」


「あ、味が違うのですね。あ、これも美味しい。もぐもぐ、しかし、蛙に借金した我が家も悪いのです。変態蛙だって慈善で貴族はやれませんからね。領地の民がいるんです。借金の取り立てをするのは理解出来ます」


「それは勿論ですが。お茶もしっかりと飲んで下さい。喉に詰まりますよ」


「あ、はい、ごくごく。ふう、ただ、私だって選べるのなら蛙よりもイケオジ希望です。素敵な余裕のある男性で、できればお金に苦労なく、社交が苦手な私への理解があり、結婚後も弟、妹に時々合わせてくれるような優しい旦那様希望です。なのに、実際の私の相手はエロエロ変態です」


「イケオジ?」


「イケオジは良いですよ。まあ、可愛い甘えん坊の男の子もアリですが。ただ貧乏はダメです。借金をこれ以上増やしたくないので。ただ可愛い男の子は我が家の弟以上な人はいないので、やはりイケオジですね」


「イケオジとは?」


「そうですね…イケオジは渋さのある男性ですかね」


「渋さ…」


「ジェローム様、それよりも話の続きです。…それで…」


私は話の続きをし、ジェローム様は新しくお茶を私に淹れながら、何か黙って考えていた。


途中、ダリアさんが私が任された書類を受け取りに来て、ジェローム様がダリアさんにもお菓子を勧めると、ダリアさんが「まーまー。あ、新しいお茶を淹れましょうかー。所長も飲みたいでしょうしー。新しいお茶を淹れますねー」と、お菓子を受け取ると、ポットを持って出ていった。



「あの、スペンサー令嬢…今迄、貴女に婚約者がいたことは?」


「幼い時に候補はいました。お母様が美人なので、娘の私に期待してお茶会のお誘いが多かったようです。でも私を見るとなんとなくがっかりされてしまってですね。上手くまとまる事もなく、お母様とお父様達が学園で知り合ったのもあったので、慌てて婚約者を探さなくていいだろうと、結局今迄はいませんでした」


「成程…」


「結局出会いはなく。そうなると、近隣の貴族の知り合いとなりますが、近隣がバンシー伯爵家でして、結局エロガエル後妻になりそう、という今に至ります」



話しをしているとダリアさんがお茶を淹れて持って来てくれ、ジェローム様の質問はそれからも続いた。


「お母様の相続の手続に時間が掛かるのですか?」


「ええ。王宮の手続きって時間が掛かるんですって。変更手続きにもなりますし、私は代理ですから書類も増えますしね」


「ふむ…王宮に行かれる時は教えて下さい。私もお力になれるでしょう」


「タダで?」


「勿論」


「ではでは、その時は」


「はい、いつでもお待ちしております、と言いたい所ですが、貴女は連絡をしないでしょうから、私が勝手に訪れることにします」


もぐもぐとお菓子を食べながらジェローム様に合図地を打っていると「今回の頼まれごとは生きている方からだけですが?」とにっこりと訊ねられた。


「ごふっ。ぐへっ。えっと、まあ、生きている方から()?」


ジェローム様の質問にクッキーが変な所に入りそうになった。


()?」


「えへへ」


「はあああ。貴女は……。その、もう一人の方からの頼まれごとは危険な事ではないのですか?」


『お嬢さん、ジェロームと呼んでいるこの男はジェローム侯爵家の者だな?確か、三男が騎士団にいたが。成程、そうか』


リンドール侯爵が『ふむ』といいながらジェローム様を見て、頷いた。


「危険な事ではないとは思いますけど……。まあ、失敗したら、鉱山送りだとか、なんとか…」


『よし、ジェローム侯爵家は良い意味で中立の家柄。その者がお嬢さんの加護の事を知っているのなら、私の話もして欲しい』


「は?鉱山送り?どういうことですか!」


ジェローム様にリンドール侯爵家の事を話すと大変驚かれた。


「なんと、リンドール侯爵家の跡継ぎ問題……借金、後妻問題、相続問題だけでないとは」


はあっと手で顔を覆うと「何故貴女は次から次へと問題を引き寄せるのですか……」とジェローム様は言われていたけれど、私だって好きで次から次へと厄介ごとに巻き込まれているのではない。


「リンドール侯爵家は筆頭侯爵家ですよ?その後継者問題となれば、国家の一大事ではないですか……。もし遺言書が偽物であった場合、大変な事になります」


『だからこそ、陛下も後継者の心配をなさって下さったのだからな。我が家を潰すのは国としても避けたい』


「私も兄達に相談しましょう。隊長にも報告が必要ですね」


「あれ?なんだかまたやばいってヤツですかね?」


もぐもぐとクッキーを食べながら私はジェローム様を見つめた。


「はああああ。スペンサー嬢!もう!やばいってヤツです!まったく貴女はもう!!」


ジェローム様は魔鳩を出し、手紙を次々と書くと、窓を開けて各所に飛ばしだした。


夕方になり、話しの途中でダリアさんが様子を見に来てくれたので今日はここまでか、と思ったら、ジェローム様がお金を出して、私の仕事を奪っているから、と、所長を含め、四人分の豪華な食事を注文してくれた。


そして食事が届き、食べている間も話は続き、やっとジェローム様は納得すると「決して危険な事はしないように。すぐに騎士団に連絡するように」と煩く言い残し、ダリアさんにもお願いをして帰っていった。


「やっと、帰った…。ゲローム、話し、長すぎ…」


『お嬢さん、ジェローム侯爵家も古い家柄。中立を保てる家柄と言うのは強い。アンディにも顔つなぎを頼む』


「はい。まあ、ジェローム様も手伝うとか言ってましたから、どうにかなるでしょう」


私が一階に降りて行き、所長が置きっぱなしにしていた、リンドール侯爵家についての書類等を手に取るとまた上に戻った。


「所長が私の話と今迄の調査でまとめたのは…」


リンドール侯爵家について簡単に所長がまとめた所を見つけ、侯爵と読み上げた。


・前妻との間の長男は素行も悪く、前妻実家との折り合いも悪い

・後妻との間にできた子供は二人。次男と長女と言う事になる。

・次男は真面目で、この人を後継者にと考え、若いうちに結婚、子供を設ける。

・今回偽の遺言書を持ってきた一人、長女は男遊びが激しく、家を抜け出しては遊び歩いていた。

・次男に家督を譲ろうとしていた所、次男夫婦が馬車の事故で亡くなり、孫のアンディ様だけが残される。

・今回、侯爵が亡くなったのを知って、二人が、自分こそが後継者だと騒いでいるという。

・侯爵の希望は国王陛下がご存じである。



『問題は、次男のアルバスに家督を引き継ぐ前にアルバスが亡くなった事。アルバスが引き継いでおれば、アンディが引継ぐのは自然だったが、儂がまだ侯爵の内にアルバスが亡くなり、そして儂が死んだ』


「だから、お二人が偽の遺言書を持ってきたと」


『そうなる。アンディはまだ十六。成人まで二年ある。しかし準成人となり、陛下に挨拶をすませる事があってな、そのお礼を持って陛下とお茶をした折に、アンディを次期侯爵家当主にという話を陛下にしたと言う訳だ』


「ふむ」


『後見人にダガンとスミスと言う二人の友人に頼むつもりだった。スミスは王宮事務官長で、儂の幼馴染でな。ダガンとは学園からの付き合いだが、気の合う仲間で今は王立銀行の取締役だ』


話しを纏めていると、アッと言うまに時間は過ぎ、身体を拭いて寝た。




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