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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
二章

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戦いの後

部屋の中にはロズさんとオゥルソさん、ジェローム様に隊長にアジュ殿下、それにドアの前に騎士が二人いた。


『フレイヤ!捕まえた奴は今、別の部屋で転がされて騎士が見張ってる。宿のみんなは無事ね。良かった』


ほっと、リンダさんは顔を綻ばせて、オゥルソさんの前にぴゅーんと飛んで行くと、嬉しそうに周りをクルクルと飛んだ。


「スペンサー令嬢、風が通り抜けた。一気に空気が澄んだよ」


ロビン隊長が私を見て、笑いながら聞いてきた。


「それに、逃げようとした奴をナイフで仕留めたんだって?凄いね。流石、深紅のっと、おっと、君は君だったね」


「的が大きかったですから、当てるのは難しくはなかったです」


あれくらいの距離なら当てる自信はあった。間違えて、頭や首に当てなくてよかったけれど。領地で一角ネズミが大量発生した時に、駆除剤使わず、燃やさず、とにかく仕留められるだけ仕留めろと、言われた時よりは楽だった。


あの時は、お母様がまだ生きていて、お母様の指示だったのだけれど、あのネズミはどうしたのだったか。


「まあ、リスに当てるよりも的は大きかっただろうけれど」


私が考え込んで頷いて黙っていると、ロビン隊長は肩眉を上げて少し笑った。


うん、うちの両親の教えは普通の令嬢に教える事ではないだろうな。


ま、よそはよそ、うちはうち。とよく言われていた奴だ。考えても仕方がない。



「それにしても、素晴らしい腕前だね」


「有難うございます」


ロビン隊長に褒められると、同じ様にナイフ投げを褒めてくれたマシューとシンシアを思い出してしまった。


(お姉様!素晴らしいナイフ投げです!ど真ん中に一発ですね!)

(ねえさま!すてきよ!しんしあ、びっくり!だーいすき!)


ねえさまも二人が大好き。早く二人に会いたい。


私が二人の事を考えていると、新しく入って来た騎士が私のナイフを返してくれた。ちゃんと布に包んである。


「侵入者は取り逃がしてないな?全員、取り押さえたよね?」


アジュ殿下が騎士に聞くと、騎士の一人が「問題なく。しかし気になる者を持っていた物がいます」と言って、騎士がアジュ殿下に包み紙を渡した。


『あ、フレイヤ!それ!フレイヤに行ったヤツと同じ物よ!!』


「ふーん、なんだろうね?」


包みをロビン隊長に渡して、アジュ殿下が首を傾げた。私はロビン隊長に話し掛けた。



「ロビン隊長、それは侵入者が宿に入る時に捨てていた物と同じだと。宿中にあると思います。私が拾った物、コレは今、お持ちの物と同じではないですか」


私がアジュ殿下に先程拾った草を見せると、アジュ殿下は「あちゃちゃ」と言って草を受け取り、ロビン隊長は匂いを嗅ぐと笑った。


「違法薬物が出ちゃったね。仕事が追加だ、スペンサー令嬢、侵入者が捨てた証拠はあるかな」


『えー。証拠?うーん、うーん。あ。ほら、フレイヤがナイフ当てた奴。そいつはまだ持ってるわよ。皆、上着のポケットの奥から出してたわ。きっと隠しポケットがあるはず。そいつが持ってれば証拠にならないかしら?』


「私がナイフを当てた人。その人はまだ持っていると思います。上着のポケットの奥の方。隠しポケットが無いか探して下さい」


私の言葉を聞いて、殿下の横に立っている騎士に殿下が黙って頷くと、騎士はすぐに部屋から出て行った。


「他には何かあるかな?」


「侵入者が「ウェリア」と呟き、何か口に入れた後に死にました。その薬は今の物とは違うと思います。それも他の侵入者も持っているかもしれません」


私がロビン隊長とアジュ殿下に近寄り小さな声で告げると、「あちゃちゃ」とまた言われた。リンダさんの方を見るとリンダさんは『ごめんね、そこまでは分からないわ』と言った。


「ランドルフ、子爵が怪しいって言ってただろう?それって以前からマークしていたウェリア子爵だな?違法薬物、不法取引、おそらく人身売買のおまけつきだ」


「は、罪状はどうするんだよ。さらにおまけもつきそうだ」


アジュ殿下は指を一つずつ折り、最後にパッと広げると「まあ、良くて毒杯かなあ。悪くて拷問後の絞首刑。最悪は一族全員絞首刑」と頷いた。


そして私の方に少し近づくと小さな声で聞いてきた。


「他には?何かある?」


「……。いいえ」


「なるほどね。まあ、またいつでも聞くから。さ、じゃあ、帰りますか。スペンサー令嬢は詰所に泊まっているんでしょ?一緒に帰りましょうかね」


『フレイヤ、有難う。お金はいつでもいいから取りにきてね、私、女神様の元に全然行きそうになないんだけど。どうしてかしらね?』


手を振るリンダさんに瞬きを一度して私は部屋の隅に立った。


アジュ殿下達はその後、軽く話し合いをして、その場をまとめた。私はロズさんにもオゥルソさんにも話せず、後ろをジョルジョさん、前をアジュ殿下と隊長、そして横にジェローム様に挟まれて詰所へと戻った。





私は騎士団に戻り、リンダさんと鏡を使って話をしながら捕縛した者達の確認をした。騎士団からもこの争いに係わったものとして、私にも事情聴取のようなものがあったので、すぐに騎士団を出る事は出来ず、第二騎士団の客間に再びお世話になっていたのだ。


まあ、三食付いて、清潔なベッド、洗濯までもしてくれて、全部無料。有難いのは確かなんだけど。


「暇だ」


部屋は客間で、聴取をすると言っても、騎士団内なら自由に動いていいという事。そして、二日間程、騎士団で確認作業があるので協力してほしいと言われた。


二日か。


暇だ。


「ジョルジョさんいます?」


私がドアを開けて廊下の方に呼びかけると、近くの扉が開いて、ジョルジョさんが走ってやってきた。


「何か?」


「暇です。何か仕事はないですか?」


「え。えええ……。先程、戻ってきたばかりで、人手が足りてなく……。話し相手も出来ませんが……。そう言われても……。あ、いや、うーん。でも、いや。あれならば……。少々お待ち下さい」


ジョルジョさんがそう言って、すぐに隊長室に走って行くと、ニコニコのロビン隊長を連れて帰ってきた。


「スペンサー令嬢、仕事が欲しいって?」


「え?ええ」


「よかった。こちらからお願いしようか迷ってたんだ。じゃあ、掃除を頑張ってもらおうか!」


ロビン隊長はにっこりとして、ちょいちょいと私を手招きし、「ジョルジョを連れて、寮からお願いするよ。いいかな?こっそり、()()()()()をして欲しいんだ。ね?」と、良い笑顔で言われた。


ジョルジョさんの方を見ると、ジョルジョさんがこっそりと「スペンサー令嬢、令嬢の浄化。あれです。アレを騎士団の中でして欲しいのですよ。給料は良いですよ。あくまで、掃除と言う名目になりますが。内緒の話ですよ」と小さな声で教えてくれた。


「あ、成程。こっそりですね。了解です」


そして、私はジョルジョさんを連れて、騎士団の倉庫や医務局、騎士達の寮に浄化をして回った。


あくまでも掃除。浄化ではない。


ここが重要らしい。


一回一万ルーンで、各場所の掃除という名の浄化。私は頼まれた場所、二十カ所浄化をした。つまり、二十万ルーン。


うん。私はぼろもうけだ。


そしてロビン隊長にとっても良い話らしい。


教会に頼んで浄化が出来る者を呼ぶと一回十万は掛かる。もちろん私がする浄化モドキに比べたら、範囲も効果も広いし良いものだろうけど、とにかく聖職者がやる浄化料は高価だ。私は二十カ所掛かったけど、まあ、十カ所で済むとして、それでも百万以上は掛かるだろう。それとは別にお布施もいる。お布施は安くて五万位だろうけど、貴族の人はお布施を多く収めないと恰好悪いらしい。だから貴族の第二騎士団もお布施はちょっと高く包む。


貴族の見栄は仕事の一環らしい。だから金持ち騎士団も意外と内情は厳しい。切り詰めれる所は切り詰めたい。だけど、それを分からないようにしないと、騎士団として見栄がある。


「君に頼んで良かった。いつもはこんなに浄化出来ないんだ。一年に一回程度かなあ。ああ、それにしても、思わず、今迄出来ていなかった所までする事ができたよ。このご時世、どこも懐具合が厳しくてね。まあ、ぶっちゃけ、支給される浄化料だけじゃ、足りないんだよ。だから、どこの騎士団でも浄化が出来る知り合いに安く頼むって言うのはよくあるんだ。今迄は前副隊長夫人がしてくれてたんだけど、去年、領地に完全に引っ越しちゃってね。困ってたんだよね」


ロビン隊長は、口元に手を指を当てて「この請求書の項目は掃除、洗濯、なんでも書いておくからね。いつでも掃除をしにきていいよ」とニヤリと笑った。


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