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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
二章

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戦闘

「強い……」


「はい、ロビン隊長は現隊長の中で最強です。普段はのんびりとしてらっしゃいますが、それも本来の強さの表れ。剣を持つロビン隊長には誰もかないません」


誇らしげにジョルジョさんが話す間に、あっという間に男達が倒れ、ロビン隊長とアジュ殿下は新月の中に大勢の騎士を連れて入っていった。


「ここからが勝負です。援軍が動き出しました。新月を取り囲みます」


ジョルジョさんはまたゆっくりと笛を吹くと、窓の所に小さな灯りを出し、それを指で隠しながらどこかに合図をすると、灯りを下げた。


「援軍共に以上なし。もうすぐ、宿内の動きがあるでしょう」


その言葉と共に、ドオオオン!!っという音が聞こえ、倉庫まで揺れた。


「きゃあ!!」


「スペンサー令嬢!」


私の名前が呼ばれたと思った瞬間にはジョルジョさんが私を抱え下敷きになってくれていた。そのおかげで、椅子から転がり落ちた私は無傷で済んだ。


ずり落ちた眼鏡を上げながら片手で私を抱き起こしながら、窓の方へと目を向けていた。


「す、すみません」


「いえ、大丈夫です。お怪我は?」


「おかげで、ありません」


「そうですか。ゆっくりと身体を起こし、窓から離れた場所に移動しましょう」


ジョルジョさんに続いてゆっくりと移動すると、窓の向こう側の空気が揺れているのが分かった。


「あれは魔力?今の音は火事?爆発でしょうか?」


「はい、魔力です。先程の音と揺れはおそらくジェローム班長の氷槍でしょう。大量に噴出した時は辺りに衝撃が走りますので。防御膜が間に合わなかったのでしょうか。もう揺れは起きないと思いますよ」



「ぐおおおおおおおおお!!!!!!」


今度は猛獣の叫び声が聞こえてきた。ビリビリと身体が痺れ、鳥肌が立ち、髪まで逆上がりそうになり、怖くて震えてしまった。


「なんですか今度は!!!」


「スペンサー令嬢……。だ、大丈夫です。これは、噂に聞く、オゥルソの『威圧』でしょう。物理攻撃ではないので、防御膜の効果が薄いのでしょうか…」


「オゥルソさんの……」


「防御膜があっても、ここまで威圧が飛ぶとは。宿内の耐性の無い者は気絶しているでしょう」


その後も、新月から音は鳴り響いたが、「ドゴオオオオオン!!!!!」と大きな音を最後に静かになった。



「終わりましたね。周辺に被害も出ていない」


静かになると、ジョルジョさんは耳を澄ませて、また笛を吹き、頷くと立ち上がった。


「スペンサー令嬢、新月へ入ります。危険がどこにあるかは分かりません。私から離れないで下さい。残党や気配に当てられて興奮して襲い掛かって来る輩もいるかもしれません。武器の準備を」


「はい」


私はジョルジョさんと共に小屋を出るとナイフを持ち、門を潜り、新月に入った。


廊下は汚れ、ドアも開き、荒らされた室内もあった。


私は外に出て、オゥルソさんの小屋へと向かった。


『フレイヤ!奥!逃げてる!』


リンダさんの声に振り向き、指をさす方に目を向けると、残党がオゥルソさんの小屋の裏に逃げようとしていた。


私と目が合うと、ジョルジョさんの姿を見て、私に狙いを定めて飛び掛かってきた。



「スペンサー令嬢!」


ジョルジョさんが、私との間に入ろうとした。


『フレイヤ!逃げて!』


リンダさんの叫び声と同時に私はしゃがんで、ナイフを両手に持ち直すと、男に投げつけた。



ドン!


ドン!


右肩と右腕にナイフが当たる音がし、男が剣を落とした所へ、男の元へ走って行くと、相手の剣を蹴とばして、そのまま腰に回し蹴りを入れ綺麗に倒れた所を頭を踏みつけた。


「よし」


ふうっと息を吐くと、ジョルジョさんが男を押さえつけ、腕に縄をかけた。



「流石ですね」


ジョルジョさんが感心した顔で私を見ると、騎士の一人が駆け付けてきた。


「後で、ナイフ、抜いて返して下さい。それも領地で私用に作ったナイフなので」


私がジョルジョさんに小声で言うと、ジョルジョさんは頷いて騎士に伝えてくれた。


『よかったー。フレイヤって強いのね!!』


小屋の中に入るとリンダさんがでニコニコ笑っていた。


『ジョルジョもいるじゃん。ジョルジョ、役に立った?剣よりも弓の方が得意って聞いたんだけど。本当かしら。二人共、怪我してない?』


私は黙って頷いた。


『ああ、ジョルジョがいるから喋れないのか。えっとねー。じゃあ、フレイヤは瞬きしたらハイね。でえ、首を傾げたら、イイエ、いい?』


私はパチパチと瞬きした。


「ジョルジョさん。私は少し、ここで時間を使います」


「ここで?分かりました。離れていた方が良いですか?」


「はい、可能なだけ離れて下さい」



ジョルジョさんは私から少し離れて、私は壁際に移動し、ジョルジョさんは入り口の所に立った。


『ふふ、ジョルジョが仕事してる。なんだか恰好良く見えるわ」


可笑しそうにふふふ、とジョルジョさんを見て笑うとリンダさんは私の方に浮かんで話し出した。


『ああ、私、この小屋の上の方から覗いてたんだけど、ここに入って来た奴は騎士とオゥルソ兄さん達に全員取り押さえてたわよ。私を殺した奴も含めてね。ざまあみろだわ』


べーっと舌を出して嬉しそうに笑うリンダさんに私は一度瞬きした。


『裏からも声が聞こえたから、覗いてみたけど、川の方に逃げようとしている奴らを別の騎士達が取り押さえてたわ。私が見た限り逃げた奴はいないと思う。ただね、入ってきた奴の一人が騎士に切られて逃げた時にね、切られた腕を抑えながらポケットに入れてた物を口に入れたの。で、あっという間に死んじゃった。騎士が駆け付ける前に、ソイツ、「ウェリアめ!」って小さく口を動かして睨んでたわ。口に入れた瞬間、驚いた顔してたの。死ぬつもりじゃなかったのかもね。痛み止めか、血止めか……。分からないけど薬草って感じで口に入れた気がしたわ。他は…、そうね。ロズ姉さんは怪我をさせるなって言ってた奴がいたかな。あと、オゥルソは殺せって。許せないわよ』


私は瞬きして返した。


『ねえ、またこの辺、綺麗にしてくれない?すっごく気持ちが悪いの。戦いがあったから?悪い奴が死んだから?なんでかな?なんだか私も下に引っ張られる感じがしてゾワゾワするのよ』


「分かりました。少し待って下さい。ジョルジョさん、ちょっと空気が動くと思います」


「は?はい。どうぞ」


私は手を前に結んで、女神に祈りを捧げた。



「偉大なる女神様。私の祈りを聞いて下さい。偉大なる女神様にして、導く者、断ち切る者、アトロポス様。どうか私に力を。悪しき者を退け、正しき者を御守り下さい。小さき者、弱き者、心優しき者、全ての者に正しく愛をお分け下さい」


私が女神の一人に祈りを捧げると、私を中心に風が巻き起こり、小屋から風が吹き抜けていった。


『あー。楽になったわ!有難う!なんだか変な手みたいなヤツがうにょうにょ地面から生えていたのよ?うー。気持ち悪かった!』


「な、今のは…。まさか…女神様の?浄化?」


私はジョルジョさんを見て首を横に振った。


「ジョルジョさん、リンリンさんの為にも内緒でお願いします」


「は、はい」


『あ、ジョルジョ、私からの贈り物。喜んでくれてた?』


私はゆっくりと瞬きすると、リンダさんに笑いかけた。


「それはもう」


私が小さく呟くと、『ぷー!最高!ジョルジョって見た目通りムッツリなのよ!!可愛いでしょ!!』とリンダさんは笑った。


オゥルソさんの小屋から新月に向けて、宿中の浄化は出来たようだった。


私は小屋を出ると、リンダさんとジョルジョさんを連れて新月の方に渡った。


『オゥルソ兄さんとロズ姉さんは奥の部屋で騎士さん達と話してる。あ、そうだ。ちょっと待って、こっちにきて』


私はリンダさんの方をついて行き、リンダさんが指さした廊下の隅に投げられたごみを拾った。


『コレ、何人かが投げていたのよ。しかも騎士に投げるとかじゃないの。入って来ては廊下の隅に投げたり、部屋にこそっと捨てる感じで。怪しいでしょ?』


「スペンサー令嬢?何ですかそれ?」


「これは、怪しい男達が捨てたものです。証拠品ですね」


「な、成程」


『他にもあるけど、全部拾うのは大変ね』


「まだ宿の中に同じような物があるはずです」


「な、成程」


私は捨てられたごみをよく見ると、どうやら乾燥させた草の様だった。クンっと匂いを嗅ぐと、少し酸っぱくて甘い香りがした。


「独特の香りがします」


『あ、この廊下の奥にオゥルソ兄さん達がいる部屋があるわ』


「ジョルジョさん、隊長とオゥルソさん達と合流しましょう。この奥にいます」


「は、はい」


私が廊下を進んで角を曲がると騎士達が待機していた。


「フレイヤ・スペンサーです。アジュ殿下にご報告に上がりました」


私がそう言って礼をすると、聞いていたのか、騎士様達はすぐにドアを開けて通してくれた。



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