私のお願い
ロビン隊長はにっこりと笑顔を私に向けると両手をパンっと一度合わせた。
「さーて。共に戦う仲間となるわけだ。情報の出所は今は聞かない。いや、聞けないのかな?君から話してくれると嬉しいけどね。他に約束はいるかな?」
「先に確認をしたいのですが」
「なにかな?」
「私は新月に戦いに行けるのですね?」
「うん。先程言った通り。共にね。君の言う通り色んな書類にサインしてないから、君の保護は内々の事。君が伯爵代理として騎士団を訴えたら、私は大隊長と陛下に怒られてしまう。だから、君はここに遊びに来ていた風にしてもらおうかな。で、まあ色々あって、一緒にいたところ、偶然戦いに巻き込まれた風にしたらどうかな。昨日の件があるから、その件をだせば一緒にいる言い訳にはなると思うんだよね。あ、剣は振れないって言ってたけど、全く?」
「お父様の様な大剣は振れません。騎士様が使うような剣も私は上手く扱えません。お母様に習い、弓は射れます。領地の傭兵団で手伝いをしていました。私が扱えるのはコレです」
私はナイフにしては大ぶりの物を腰のベルトから二つ取り出した。背中の方に隠すように二本、革の鞘と一緒に括り付けてある。
「領地の鍛冶屋に特注で打って貰った物です」
王都で武器を所持する時はA級以上の冒険者か騎士達と決められてる。それ以外の者が堂々と武器を所持していればそれだけで掴まってしまう。
だから、こうやって背中に隠していたけれど。共に戦うのなら自分の武器を見せておかないといけない。
「いやいや。君は双剣使いか。身軽さが武器なんだね?流石スペンサー家だ」
「私は力が無いので、スピードで勝負します。逃げ足もあります」
「盾は使わないの?」
「重たいものを持つと私の良い所は活かせません。服の下に腕当てを撒いています。コレとナイフで敵の剣や矢を防ぎます」
「成程、いいんじゃない?見習いの予備を準備させるように言っておこう」
ロビン隊長はニコリと微笑むと「喉、乾かない?ちょっと冷めてしまったかな」と言ってティーポットを取るとお茶を淹れてくれた。
「君のお願いは一つだけ?私達の不手際に対してに他にお願いがあったら何なりと言って欲しいけどな。出来れば相殺って事で。君の父上と陛下達にも黙ってて欲しいし。裏取引だね」
裏取引。成程。ロビン隊長は正直で良い人だな。
「では。新月の裏に川があります。その下流の方で若い女性の絞殺死体が見つかっていないかを調べて欲しいです。見つかったら小さな教会で弔いをしたいので、教えて下さい」
「女性の絞殺死体?穏やかではないなあ。君からそんな言葉を聞くとはね。その女性の事は聞いてもいいのかな?」
「……今はまだ。見つかればちゃんと言います。私の探し人であれば平民の方なので、弔い先の教会も紹介して頂けると嬉しいですが」
「ふうん。平民女性の弔いの為の教会だね、大丈夫、分かった。紹介出来るよ。他には?」
「ジョルジョさんに、私は無理を言ってここまで連れてきて貰いました。ジョルジョさんにも死人が出るのでと無理を承知で取り次いで貰いました。彼は規律違反ではなく、保護対象者の願いを叶え、騎士として危険な事を隊長に報告しただけです。叱らないで下さい」
「君は賢いね。ジョルジョの報告は間違いではないと私も思うよ。君からそう言って貰えて嬉しい。有難う。分かった。他には?」
「ありません。失礼を申した事、本当に申し訳ありません。そして騎士団の皆様には本当に感謝しています」
私は胸の前で手を組んで再び深い礼をした。
「いいや。私の対応が悪かったのは事実だ。隊長として重ねて詫びさせてほしい。本当に心配な時をすごさせて申し訳なかった。スペンサー伯爵代理、貴女に謝罪を。申し訳ありませんでした」
ロビン隊長は立ち上がると綺麗に礼をし、深く頭を下げた。それに伴って、ジェローム様も同じように私に謝罪の礼をした。
「騎士団の謝罪を受け入れます」
私がそう言うと、パッとロビン隊長は表情を明るくし、パンっと手を叩いた。
「よかった。じゃあ、君の事はフレイヤ嬢と呼んでもいいかな。謝罪合戦はおしまいだ」
「はい」
「しかし、フレイヤ嬢はスカーレット様にそっくりだね。美しく、激しく、棘のある深紅の薔薇。君には色々聞きたい事はあるけど、約束だから私からは聞かないよ。言いたくなったり、困ったらいつでも話は聞くから隊長室を叩くといい。ああ、今日は忙しくなるから、今から軽食でも食べようか。昼食食べてないんでしょう?」
隊長がベルを鳴らすとすぐに事務員さんが入ってきて、隊長はお茶と軽食を頼むと、事務員さんと入れ違いに魔導師のローブを着た人が隊長室へと入ってきた。




