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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
二章

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オゥルソさんと騎士団へ

食事を終えるとオゥルソさんと騎士団の方へ向かった。



「じゃ。行くか。貴重品は持ったな?」


「はい」


「よし。トイレは済ませたな?」


「はい」


「よし。腹は減ってないな?」


「もう!オゥル伯父さん!早く行きましょう!!」


「宿、新月」の前でオゥルソさんはくどいくらいに私の心配を繰り返し、「ほら」と手を出された。


「?」


「人が多い場所を通る。市場に寄ってから行くから、はぐれるぞ。それにスリも多いから荷物は前で持つんだ。ぶつかって来る奴には用心しろよ。相手が子供でもスリは多い。気をつけるんだ」


「はい」


私が頷き、熊の様な大きな手に自分の手を重ねると、「ちっちゃえなあ!」と、ぐわっと笑われて、食べられるかとびくっとしてしまった。オゥルソさんなら蛙伯爵も一飲みに出来そうだ。食べてくれないかな。あ、でも、オゥルソさんが消化不良になる。


私達は繁華街から裏道を抜け大通りへと向かう間に、オゥルソさんから、危険な場所、まあまあ大丈夫な場所、まあ安全な場所等を聞いて行き、(すごく安全な場所などないらしい)途中、市場へと寄ってリンゴを買うと、市場の人達を私に紹介しながらリンゴを私のバッグに入れた。


「腹が減ったら食えよ」


昨日は迷子になっている所に突然現れて怖い人だと思ったオゥルソさんだが、実は可愛い動物好きな面倒見の良い人だと分かった。


リンダさんからも、オゥルソさんは怪我した動物を面倒見たり(大抵怖がられているそうだが)、迷子の子供を親元に連れて行ってあげたり(こちらも怖がられて泣き叫ばれるらしい)してはロズさんに怒られているらしい。


リンダさんから聞いただけでも、オゥルソさんは捨てられた子供を拾って、「宿・新月」の用心棒と料理人となった子供が一人ずつ、市場の肉屋に紹介したのが一人、市場の用心棒と、下働きになった子供が一人ずついるらしい。だから私を拾ってきた時も、ロズさんは「またか」とあきれたとの事だ。


私は孤児院や教会に子供を連れて行かない事を不思議に思い、そのまま尋ねたら、リンダさんから、また『甘ったれのお貴族様』と笑われた。『孤児院なんて、当たり外れが酷いのよ。だから兄さんはその子が自分の力で生きて行けるようにしてるの。市場や宿なら子供を皆で育てられるしね。オゥルソ兄さんは優しいの』


リンダさんの言葉を思い出しながら、私はオゥルソさんに手を引かれ、王都の街並みを眺めながら、明るい王都の街の裏で必死に一人で生きていく子供達がいるんだとハギレを籠に入れて売っている子供達を見つけて領地の弟と妹に想いを馳せた。


「ハギレを売っているんですね」


「ん?ああ。継ぎを当てたり、小さな物を作るのに使うんだろう。金持ちが捨てたりした服を売れる物は売って、売れない場合は小さく切って売るんだな。子供が良くやる仕事の一つだ」


オゥルソさんはそう言うと、ハギレ売りの所に歩き、銅貨を一枚渡して、黄色と黒のハギレを一枚ずつ取ると「釣りは自分の小遣いにしろ」、とハギレ売りの女の子に言い私にハギレを渡した。


「フレイは縫い物できるか?お貴族様は刺繍をするんだろう?ああ、糸売りの方がよかったか」


そう言うと少し先にいる女の子に同じように銅貨を払い、籠に入っている糸を買って私に渡した。


不ぞろいの長さの糸は丁寧に巻かれていて、私が使った事のある糸とは大分違っていた。


「コレで何か作るといい」


「はい。有難うございます」


私がお礼を言うと、オゥルソさんは嬉しそうに頷いた。


領地でも貴族である私に何か買って渡された事はない。こうやって家族以外に贈り物を貰ったのは初め……いや、あった。あれは数に数えたくないし、今、せっかく、じーんと胸に温かい物が広がっていたのに、台無しになってしまった。


胸に抱きしめたハギレと糸を落とさないようにポシェットに入れると私は頭を振って灰になった贈り物を頭から追い出した。


その時限りの施しなら出来る人間は多い。でも、その先の事。ずっと先までその子の人生を考えてオゥルソさんは責任をもって子供に声を掛けているのか。オゥルソさんは優しいなと歩きながらオゥルソさんを見上げると熊の様な大きな手をぎゅっと握った。


「ん?どうした?腹が減ったのか?」


「いいえ、あ、ここ。昨日通ったところです」


見覚えのある景色に私がそう言うと、オゥルソさんは頷いて少し先を指さした。


「ほら。旗が見えるか?あれが騎士団の印だな。あの旗がある所には騎士がいる。もし困ったらあの旗を探せ。フレイは青に白のラインの旗の方が良いだろうな。後は騎士を探すのがいいが……」


「青に白ですね」


「ああ、まあ、騎士服見て助けを求めてもいいがな。後は、そうだな。さっきの市場。あそこの入り口の所には大抵市場に雇われた用心棒がいる。そいつらに助けを求めてもいい。用心棒は頭に赤い布を巻いている。まあ、ガタイがいい奴で市場の入り口にいて赤い布を頭に巻いてたら「市場護衛ですか?」って聞いてみな。腕に黒の布を巻いてる奴は用心棒の代表だ、バンズって奴が今はなってるな。困ったら俺の名前を出してもいい。『新月のオゥルソの親戚』だって言っていいぜ。悪いようにはしないだろう」


「はい」


話を聞きながらオゥルソさんと一緒に第二騎士団詰所を訪れると、受付の人がひっくり返りそうになった。



「ひいいいい!!」


「あの、昨日、お世話になりました。フレイヤ・スペンサーです。昨日は大変助かりました。覚えていますか?」


「ああああ・・・。ああ、スペンサー様!はい!勿論、覚えていますよ、どうしました。何かお困りが?あの、こちらの方は?」


「ああ、この方は昨夜助けて頂いた方で、大変お世話になった方です。今日もここまで道案内をして頂きました。あの、ジェローム様に取り次いで欲しいのですが。ええっと…、あ!『宿泊先が決まりましたので、すぐにお知らせをと思って。そして、別に相談が』と言って貰っても宜しいですか?」


「あ、宿泊先がお決まりになりましたか。良かったです。書類をお持ちしますね。ジェローム班長は丁度奥にいますので、すぐにお呼び致します」


私の後ろに立っているオゥルソさんはずっと黙っていたが、受付の人はチラチラと見ながらすぐに奥へと消えた。


「本当にフレイはお貴族様だったんだな」


「そうです。貧乏で、蛙に嫁ぎそうな大変な貴族です」


「そうか。蛙にか。凄いな。フレイは人間に嫁げないのか。貴族は威張っているだけかと思ったが、俺らが考えられないような苦労があるんだな。フレイも大変だな」


「私も蛙に嫁ぐのは嫌なので、今、王都に出てきて頑張っているんですよ。ちょっと回り道していますが」


「ああ、迷子になったと言っていたからな。まあ、俺に何か手伝えることがあったら言ってくれ。俺もフレイが蛙の嫁は嫌だからな。貴族は好きな奴と結婚は出来ないのか?」


「出来る人もいますよ。半々よりは少ないでしょうが。我が家の両親は恋愛結婚です。私は優しい人間の方と結婚したいですね」


「そうだなあ。蛙よりも人間がいいよなあ、優しい奴よりも強い奴がいいと思うぞ。強さは優しさでもある」


オゥルソさんの言葉に詰所の中を見回して私は黙って頷いた。


「スペンサー令嬢」


蛙の話をしていると、カツカツと言うブーツの音が聞こえ、すぐにジェローム様がやって来てくれた。



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