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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
二章

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リンダさんとの話

次の日の朝。



リンダさんから詳しく話を聞き、犯人の似顔絵まで書いて寝た後、明け方近くに帰って来たオゥルソさんの気配で目が覚めた。


「おはようございます」


私が寝ぼけながら挨拶すると、オゥルソさんは「昼になったら起こしてくれ。騎士団に連れてってやる。ロズに会うのは用事済ませたその後だな」と言われた。


オゥルソさんの言葉に頷き、私ももうひと眠りしようと思ったが、「じゃあ、寝るか」と言ってすぐに寝た、オゥルソさんのいびきが熊の様で、(熊のいびきはしらないけれど)とても寝れなかった。


私は寝るのを諦めて起き上がった。


「リンダさん、いますか」


『なに、フレイヤ?』


私が呼びかけるとすぐにリンダさんは現れた。


やっぱり加護の力が強い。呼びかけるとリンダさんはすぐに現れてくれる。


「騎士団に私が言っている間、宿に不審な人が来ないか、何か変わりがないか見ていて下さい」


『分かったわ。フレイヤも気をつけて』


「ええ。リンダさんも」


『私はもう死んでるけどね。それにしても、騎士団に行くのね』


「はい。騎士団に昨日知り会いになった騎士様がいます。宿に危険な事なら騎士団に頼むことが良いでしょう?」


『フレイヤ、こんな宿の事に昨日知り会ったばかりの人が手を貸してくれるかしらね?フレイヤはお貴族様でしょ?騎士もフレイヤは守ってもここの人間は守らないと思うわよ?』


「その騎士様から何か困った事があれば、と言って貰えてますから。それに私の加護を知っていますので話が早いと思って。ロズさんには宿に危険が迫っている事も手紙で伝えますけど、リンダさんが亡くなっているんですよ。騎士団に話をして悪い人は捕まえて貰いましょう」


『成程ね。まあ、騎士様が守ってくれるかは分からないけど、皆の安全の為ならいいわよ』



起き上がった私の横で、リンダさんは胡坐をかいて、浮いていた。


『それにしてもフレイヤって、人が好いわね。お貴族様だから?なんだっけ、偉い人は弱い人に手を差し伸べるみたいなの。べえーーー。私にはムリ。誰にでも手を貸してたらあんた、きつくなんない?』


「私だって誰にでもって訳じゃないですよ。交換条件で動く事にしてるのです。リンダさんも私にお金をくれるっていったじゃないですか。だからこれは労働です。優しさや施しではないですよ。私はお金を貰うのですから」


『嘘かもよ?』


「え?」


『お金、五十万無いかもよ?私、詐欺師かもよ?』


「え?え?」


『ぷっ。それも嘘かもね』


「え?は?え?どういうことですか?」


『きゃはは、さあどーーっちだ?』


リンダさんは嬉しそうに人差し指を立てて右、左と揺らして笑う。


「ああ、もう。こうなったらどっちでもいいですよ。私の目覚めが悪いですから。だって、オゥルソさんやロズさんに危険が迫っているのは本当でしょう?リンダさんが幽霊になっていて、殺されたのも本当の事」


私はリンダさんをジッと見つめた。


「私がオゥルソさんに見つけて貰わないで、宿に泊めて貰わなければ売られていたかもしれません。これも事実です。一宿一飯の恩は返します。そして、リンダさんと約束をした。私は約束は守ります。女神様の元にいるお母様からも叱られてしまいます」


ふんっと私がこぶしを突き上げると、リンダさんはポカンとした顔をした。


『フレイヤってバカね。やっぱりお人好しよ。流石、苦労しらずの甘ったれの、お貴族様ね。見ても無いお金やあったばかりの死んだ人間の為に危ない事に首を突っ込むんだから。ほっとけばいいのに。でも、私の声が聞こえたのがフレイヤで良かった。私、今、本当に女神様に感謝してるわ。私も、しっかり宿を見張ってる。フレイヤ、一緒に頑張ってくれる?』


「はい!」


確かに私は、出入りの商人に連れられて王都にやって来て、あっという間に荷物を盗まれ、ホテルにも泊まれず、迷子になった。私は若くして宿で働いていたリンダさんから見たら甘ったれなんだろう。


だけれど、その私でしか出来ない事があるのだ。


そうして私とリンダさんが話をしている間中も、「ふごおおおお!!!ふがああああ!!!ぐごおおおおおお!!!!!んっが!!!ぐごごごごご!!!!がああああ!!!!っぐ!!」と大音量の熊のいびきは続いていた。


リンダさんとの話を終え、私は朝の間に小屋の清掃をすませた。ついでに小屋の外に少しだけ出て、庭や渡り廊下の清掃も行った。空気が浄化され、悪いモノはこの辺りにはいなくなったようだ。


「悪い空気が溜まると悪いモノが増える。水の淀みと似ている気がする」


『あー。気持ちが軽くなるわ、なんだか、世界が綺麗になった気がするわ。フレイヤの加護は凄いわね』


「普段は役に立たないんですけどね」


コソコソと小屋に戻ると、オゥルソさんを起こした。


「オゥルソさん、オゥル伯父さん、起きて。起きて下さい。もうお昼ですよ」


「ん?あれ?なんで子供がいんだ?」


「オゥル伯父さん、寝ぼけてないで、起きて。フレイです。お昼を過ぎましたよ」


「ふれい?フレイ?昼?ああ」


オゥルソさんは起き上がって、欠伸をするとボキ!バキ!ボキ!と首や腕を伸ばしていた。


「うがあああああああああああ!!!」


オゥルソさんの咆哮に私は両耳を抑えた。


(煩い!!!!)


しかし、不思議なもので、あんなに震え驚いたオゥルソさんの大声に一日で慣れてしまった。お父様や領の団員達の鍛錬に付き合ったおかげかもしれない。


「おはようございます。オゥルソさん」


「おはようさん。フレイ。あーーーーー。ふああああ。はー。飯、取ってこよう。すまん、腹へってたな。ああ、俺の事はオゥル伯父さんだからな」


「はい、オゥル伯父さん。リンゴを持ってたので食べました。だから大丈夫です」


「は?・・・リンゴ?一個?貴族は沢山食べるんだろう?お前、そんなんだからちっこいんだろ?ちょっと待ってろ。朝飯は大事なんだぞ」


オゥルソさんはガバっと起き上がりながらくしゃくしゃの上着を着て、床に落ちていたズボンを履いた。


オゥルソさんは下着で寝ていたので、私は慌てて後ろを向いた。


それから、バシャバシャと顔を洗う音が聞こえたと思うと続けざまにガラガラ!と勢いよく口をゆすぐ音がしたと思ったら、「いい子にしてろよ」と言って私の髪をくしゃくしゃと撫でると小屋を出て行った。


『ぷーーー!オゥルソ兄さん相変わらずね!』


消えていたリンダさんがオゥルソさんがいなくなると姿を現した。


『フレイヤ。屋根の方から宿を見てきたけど、変わりはなかったわね。ねえ、幽霊になってからこの宿から出た事無いんだけど、私、出れるのかしら』


「どうでしょう。「宿」に憑いてしまっていると、移動できないかもしれません。あと、命を落とした場所にとどまる事も多いようです。おそらく、リンダさんはここにずっといるのなら、この宿から出れないと思います。以前、悪い幽霊さんに襲われかけた事が会ったのですが、ダッシュで逃げたら助かった事がありました。一定の場所から離れると自分が最初にいた場所に戻るようです。リンダさんは無理はせず、宿で情報収集をお願いします」


『そう。やっぱりね。なんとなく、宿の外に行こうとすると身体が引っ張られて戻ってしまう感じがするの。分かった、無理はしないわ。ああ、私もフレイヤみたいな便利な加護を持っていたらよかったのに』


「私の加護も良い事ばかりではないですよ』


『そうよねー。強い加護って大変なのよね?ロズ姉さんも苦労してるもの』


「ロズさんが?」


『私の加護は「楽器」の加護だったの。強い加護じゃなかったから、笛しか吹けないけどね。のんびりと過ごしたい客にはまあまあ人気があったんだから』


「楽器の加護はいいですね。貴族の中でも人気の加護ですよ。私の妖精の様に可愛い妹の加護も楽器です」


『あら、お揃いね。姉さんの加護は「踊り」なのよ。もう、見る人を魅了しちゃう踊りよ。人気がありすぎて今はもう踊ってないわ』


「踊り」


『そう。あ、オゥルソ兄さんが戻って来たわね。じゃ、またね』


リンダさんはそう言うと、消えてしまい、リンダさんの言う通りにオゥルソさんが小屋へと戻ってきた。




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