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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
二章

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オゥルソさんへのお願い

オゥルソさんは大きなお皿を二つ持って部屋に入ってくると、不思議そうに部屋を見渡した。



「ああ?フレイ。なんだかこの小屋綺麗になってないか?」


「オゥル伯父さん、私の加護で綺麗にしました」


「ああ。そうか、『掃除』か『風魔法』か?フレイは凄いな。なんだか、部屋の中がスッキリして気持ちがいいな。便利だな。俺の加護は見ての通りだ」


「怪力ですか?それとも腕力とか?」


「いいや。『威圧』だ。しかも上級だ。この体の大きさとこの加護のおかげで動物には逃げられたり好かれん」


「成程」


悲しそうな顔をする、大男のオゥルソさんを見て、リンダさんは『オゥルソ兄さん子供好きの動物好きなんだ。全然なつかれないけどさ!』と言って笑っていた。


私が初めてオゥルソさんに会った時も、オゥルソさんの加護で震えが来てしまったのか。お父様とは違った怖さだったが、あれが『威圧』なのだろう。うちの領地の傭兵団にいたらとても有難がられる加護だろうに。


「こう、小さい動物なんか飼いてえんだが。まあ、どうせロズから叱られるから、ここじゃあ飼えねえけどな」


オゥルソさんは飼えないペットに思いを馳せているようだった。


『オゥルソ兄さん、小さい動物を撫でたいんだって。すぐに逃げられるから撫でた事がないのよ』


小さな小鳥やリスなんかを肩や頭に乗せるオゥルソさんを想像した。


(ははは、可愛いな)

(チチチ)

(ピー)


花畑の中で小鳥や小動物と戯れるオゥルソさんが頭に浮かんだが、まあ、難しいだろうな、と思った。狼や、鷹なんかだったら倒して服従という感じでなつくんじゃないのかな?


私がそんな事を考えていると、オゥルソさんは近くのテーブルにお皿を置き、棚からスプーンとフォークを持ってきた。


「オゥルソさん、お願いがあります」


「お?なんだ?腹が減ったか?」


「今日を含めて二日。二日でいいので、ここに泊めて貰えませんか。その間、掃除をしますから」


「は?フレイは急いでゴールド探偵事務所に行く用事があるんだろう?確かに、空気が綺麗になったからか、身体や気持ちが楽になったな。だけど、急がないといけないんだろう?」


確かに時間がない。でも、リンダさんからの仕事を受けてしまった。リンダさんはきっとここから動けない。私が外に出てウロウロするよりも、リンダさんから話を聞いて、ロズさん達に伝えた方がいい。



「二日だけです。その間に別の宿を探します。泊まりたいホテルには大人と一緒じゃないと駄目と断られてしまったので、別のホテルを探しますから」


「ああ、だがなあ。貴族の嬢ちゃんがこんなところに泊まってるってバレたら俺達だって不味いんだ」


「すぐに出て行きます。そして明日、第二騎士団詰所まで連れてって頂けたら有難いのですが」


時間はない。だが、リンダさんから受けたこの仕事もちゃんと終わらせたい。何と言っても五十万の仕事だ。


「騎士団になら連れてってやるよ…。どうせゴールド探偵事務所まで連れてってやる予定だったしな。そうだ、騎士団に口を聞いて貰えば、ホテル?って奴にとまれるんじゃねえのか?」


「ええっと、そうなんですけど。私はこれでも伯爵代理の仕事で王都に来ていますので、そのような理由で騎士団に頼りたくないのです」


「何!フレイは伯爵代理なのか!すげえなあ。そうか。まあ、自分で頑張りたいって事か。まあなあ。気持ちは分かるな」


私はコクコクと頷く。


オゥルソさん、見た目よりもうんといい人の様だ。


「二日かあ。まあ、今日と明日泊まるだけだよなあ。まあ、それならなあ。だけど、働くのは難しいぞ?表には出せないしなあ…。女の子ってバレちゃいけないって言われているしな…。ロズがなんていうかなあ。面倒事は嫌だって言ってたろ?」


「夜は小屋でじっとしています。二日、二日間で良いですから。その間に新しい宿も探します!」


「あー。そうだよなあ。いきなり貴族の子供が王都で宿探せっていってもなあ、難しいよなあ。でもなあ」


『ねえ、フレイヤ。捨てられた猫の様にお願いしてみて』


ん?猫?


捨てられた猫ってどんな?


「やっぱり、でもなあ…ロズがなあ」


『悲しそうな顔して、オゥルソ兄さんだけが頼りですって、泣きそうな顔でお願いしてみて。こう、胸をってないか。じゃあ、兄さんをこう見上げる感じで、ウルウルした目で見つめるのよ!!』


私はぐっと手を握ると、顔をあげ、オゥルソさんを見上げた。出来るだけ、悲しそうに見えるように、そして、泣きそうな顔で。


「オゥルソさん…。お願いします…。オゥルソさんが頼りなんです」


「ぐっ!!はう」


「私、頑張って掃除しますから。住む場所もをすぐに探します…」


「はが!」


「オゥルソさん…」


「っぐううう!分かった!分かったから!ただし、二日間だけ!仕事は掃除だな!給料は無しだぞ!飯だけ俺が持ってくるから!ちゃんと良い子にしっかり食うんだぞ!」


「はい!!!」


『やったわね!!!』


「あーもう…。またロズに叱られる…」


『フレイヤ!早速、作戦会議ね!!』


喜ぶリンダさんは私の周りをヒラヒラ飛び回り、私もオゥルソさんに感謝を込めて礼をした。



「まったく。こっちの気も知らねえで」



そう言ってから、オゥルソさんは「あーーー」っと大きな声を出しながら背伸びした。


オゥルソさんは、私の前の大きなお皿にフォークとスプーンを置いた。


「ま、たった二日だ。どうにかなるだろ。平民の金持ちが泊まる宿なら伝手がある。そこでいいなら俺が紹介も出来るしな。さ、食え。大きくなれよ」


「有難うございます。オゥルソさん」


「おう」


領地の街の食堂で食べたような大皿料理だ。


一つのお皿に野菜と肉のソースと硬いパンがのっていた。


「よく噛んで食えよ」


「はい。もう大きくなるのは無理だと思いますけどね」


大盛のご飯を有難く頂き、マグカップに、なんだか分からないお茶を淹れられて飲んでいると、オゥルソさんから「今日はもう、ここから出るなよ」と言われた。


「この小屋から?」


「ああ。店が騒がしくなりだすからな。フレイを客にも店の者にも見られるのは不味い。フレイの色は珍しいからなあ。俺はそんなに綺麗な赤色も不思議な眼の色も見た事ねえよ。客に目を付けられたくねえんだよな」


オゥルソさんは自分の髪と目を指さすと、ソファーに毛布とクッション投げて「あー」と言ってから外を見た。


「そうだな。フレイが小屋から出て動いていいのは昼寝位の時間までだな」


「オゥルソさん、私は昼寝はしませんよ」


「そうか。寝るとでかくなるんだぞ」


「もう、大きくなりませんって」


オゥルソさんは、どうしても私を大きくしたいようだが、無理なものは無理なのだ。


私がロズさんのいる店の、「宿」の方に行くのは明日になった。すぐにロズさんにお願いをしたかったのだが、オゥルソさんに言われれば従わなければいけない。


「じゃ、俺は仕事に行くからな。フレイは寝とけ。口はゆすげよ」


「はい、気をつけて」


「ははは。気をつけようがねえな。仕事場には十歩で着く。俺が出たら鍵を掛けるからな。中からは、開くが、用心に越したことはない。絶対開けるなよ」


笑いながらオゥルソさんは小屋を出て行くと鍵をかけた。


私は試しに鍵を開けると、すんなり開いた。そしてすぐにドアを閉めて鍵をかけた。閉じ込める気ではないようで安心すると、ソファーにボスンと寝転がった。


今日は本当に色々あった。お父様、マシュー、シンシアは変わりはないだろうか。


どうにか王都で私は頑張っていますよ。盗難にあったり、報奨を貰ったり、気絶したりして、歓楽街に泊まる事になったけれど。


『さ。フレイヤ!話をしましょ!!』


考えながらオゥルソさんが用意してくれた大きなソファーに横になり、リンダさんからの詳しい話を書き留めていった。




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