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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
第一章

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幽霊騎士様の憂い

怪我等の表現があります。

『やっと、ジェロームと話す事が出来る』


私の前で礼をする幽霊騎士ことハーパー様に私は頷いた。


もう、ここまできたら、どうにでもなれよ。頭の変な女と思われてもしょうがない。



「そして、今から私が言う事はジェローム様の心の中だけに留めて下さい」



私がそう言って、チラリとハーパー様を見ると、ハーパー様はふわっとジェローム様に近づいた。



『私の死はジェロームのせいではない。ジェローム、お前は良い騎士だ。しかし、お前は他人に優しいのに自分には厳しすぎる。起こった事を自分のせいにするな。もう、私の墓にそんなに頻繁に来なくていい。休みの日は身体を休む為に使ってくれ』


私はゆっくりと息を吸うと、ハーパー様の言葉を伝えた。


「ハーパー様より、『私の死はジェロームのせいではない。お前は良い騎士だ。しかし、優しすぎる。そして起こった事を自分のせいにするな。私の墓にそんなに頻繁に来なくていい。休みの日は自分の身体を休んで欲しい』と言われています」


ジェローム様は瞬きを忘れ、目をまん丸に開けたまま、口をゆっくりと開いた。そして、はっと気づいた様に私を見ると今度は不審な者をみる眼に変わった。



まあね。そうなる。うん。



「あ、貴女は。一体。何を言われているのですか?」


『まあ、すぐには信じられまい。お嬢さん、不快な思いをさせてしまってすまない。騎士の職業柄疑う事も仕事の一つなのだ。そうだな…ではこう言ってくれ「ジェローム、人参嫌いは早く直せ。まだ、ウーピーと寝ているのか?」と」


「ジェローム様、私の話を最後まで聞いて下さい。私も頼まれた事をやり遂げたいだけなのです。話が終わればすぐに出て行きます」


「は?貴女はハーパー様と会った事があるのですか?」


怪訝な顔で私を見るジェーロム様。そして、ドアの方を見て、すぐに応援を呼ぶかどうするか考えているようだった。


頭のおかしな変な女か詐欺師と思われているかもしれない。せっかく盗まれた物が戻ってきて、ジェローム様もほっとしていただろうに、いきなり変な事を言われたらびっくりするだろう。



『そうだな…それから「あれは事故だ。お前のせいではない。申し訳ないと思うのならば、早く結婚して、落ち着きなさい」と』


はーっと息を吐き出すと私はジェローム様を真っすぐに見つめた。


「ハーパー様は『人参嫌いは早く直せ、と。ウーピーとまだ寝ているのか』と、それと『あれは事故だ。お前のせいではない。申し訳ないと思うのならば、早く結婚して、落ち着きなさい』と言われています」


ハッと、口を閉じると、一旦ゆっくりと目を閉じて目を開けた。


「…。貴女の加護ですか?しかし、貴方の加護は目では……いや、そんな…しかし、まさか。()()()()()?目の加護ではない?それならば…いや、加護を偽る事は出来ない。では、本当に見えている?」


私はゆっくりと頷いた。


「女神様が見ておられます。他言無用でお願い致します」


ジェローム様は息を深く吐くとハッと息を吸い込み胸に手を当てた。


「分かりました……。女神様の名の下に誓います。スペンサー令嬢、もしかすると……。貴女は私の言葉をハーパー様に伝える事が出来ますか?……」と震える声で言われた。


「どうぞ」


私が頷くと、ジェローム様は苦しそうに話しだした。


「…あれは私のせいです。師匠が私を庇わなければ命を落とす事は無かった」


『ふむ。お前ならそう思うだろう。しかしだ、あれは予期出来ぬことだ。お嬢さん、私達は大雨の後に王都の外れの街道の調査に借りだされた。天気は良く。雨は止み晴れていた。私とジェロームは先行して進んでいてな。山道に入ったところで大雨の影響が出たのか、突然落石があった。後ろにいた私が先に気付いて、ジェロームの馬を叩き、ジェロームは落石を避ける事が出来たが、私は落石を避ける事が出来ず命を落とした』


ハーパー様がそう言うと、それまでうっすらと視えていたハーパー様の姿が鮮明になり、頭と左半身に大怪我と血の跡が見えだした。


死んだ時の状態なのだろう。血は固まり、黒ずんで、体半分は色も形も変わっていた。騎士服は泥にまみれ酷い姿だった。


『ジェロームは必死に私を助けようとしたのだが、大岩は一人で動かせるものではない。しかも落石の危険もあり、追いついた後続の騎士達がジェロームを無理やり岩から引きはがし王都へと引き返した』


「あの時、助けていれば。引き返さなければ。師匠は助かったのです」


『いや。殆ど即死だったよ。お前達がすぐに治療院に運んでくれていても無理だった。避けれなかったのは私のせいだ』


「師匠は……何か、言っていました。私は目が合ったのに。手を伸ばせば良かった…指の先が……綱をかすったのです……。もっと強く握っていれば!!!」


『ああ。最後にお前の顔を見たいと思ってしまった。お前の無事を確認したかった。それが悪かったのだな。すまない。「有難う」と言いたかった。お前が綱に手がかからなくて良かった。巻き込む所であったな。女神様に感謝を」


「もっと良く辺りを見回していれば。私が先に進んでいなければ。用心していれば。確認が何よりも大切だと教えて頂いていたのに」


『天気もその後、急変したな。その中お前達は出来る限り早く戻ってきて、必死に私を王都迄運んでくれた』


ハーパー様は血と泥で汚れた顔で雨に打たれたのか髪も騎士服も濡れた状態になっていた。


『私はな、ジェロームと会えて良かったと思っている』


苦しそうな顔で話すジェローム様に優しい顔でハーパー様は微笑まれた。その時はまた、泥も血も薄くなり、元の綺麗な姿に戻っていた。


『しかし、私もまさか落石に巻き込まれるとは思わんだ。このような最期とは予想していなかった。事故は突然起こるのだ。ジェロームも気を付けなさい』


「ゆっくりと注意深く進めば良かったのです。それなのに、先を急いでしまった」


『お嬢さん、少し進んだ先に橋があった。水車が壊れかけていると連絡もあり、急ぎ見に行く必要があった。橋や水車が流されれば一大事だからな。気持ちが急いてしまったのだ』


「私は…」


ジェローム様は目を覆い、うなだれてしまった。


『お嬢さん、頼む、私の事故はジェロームのせいではない、私は恨んでいない。むしろ、君に怪我がなくて良かった。順番通り逝く事が出来、良かったと思っていると伝えてくれ』


「ジェローム様、『私の事故はジェロームのせいではない、私は恨んでいない。むしろ、君に怪我がなくて良かった』と」


ジェローム様は私の言葉を聞いても、首を横に振った。


「『落石は予想出来なかったと、橋が流されたら一大事だったと。急ぐのは当然だと。痛みは何も感じてない。安らかに逝く事が出来た』、と」


私がそう言うと、大きく首をまた横に振った。


「『目が合ったのは最後にお前の顔を見たかった、無事か確認したかった、「有難う」と、言いたかった』と」


「それでも、それでも…。私はどうすれば…」


『もう、自分を許せ』


ハーパー様はジェローム様の方に手を置いた。


『頼む。許してやってくれ。すまん、私のせいだな』


「ジェローム様、『自分を許せ、頼む。すまん』と」


「あああ……」



そう言うと、ジェローム様は手で顔を覆い、静かに泣いた。





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