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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
第一章

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ジェローム様への伝言 

第二騎士団の事務所に戻ると奥の個室に通され、壁の小さな窓から隣の部屋を見るように言われた。


その窓越しには隣の部屋が見えるようになっていて、向こうからはこちらが見える事はないと説明された。すぐに四人の人が縛られて連れてこられると、私が見覚えのある人もその中にいた。


ネックレスを盗った奴だ。


「見覚えのある人物はいますか?今から、この者達に中の騎士が質問をします。聞き覚えのある声、顔があれば教えて下さい」


壁の向こうで騎士様が男達に質問を問いかけ、男達は、名前や年齢を答えていった。ネックレスを盗った奴が頭に包帯を巻いて立っていた。


ぐぬぬ。あいつめ。やっぱり頭突きをかましておけばよかったか。こけたふりして蹴りを入れるのもアリだったかもしれない。



「一番右の人にネックレスを盗られました、包帯は撒いてませんでしたが」


「一番右ですね。あいつは連行中に急に樽が転がって来まして、それにぶつかってふっとばされたのですが。まあ、縄を付けていたので騎士が引っ張り、馬車に轢かれずにすみました。命に別状はなく、頭を打っただけで済んだのですが罰が当たったのでしょうね」


「ええ。きっと」


私は答え、当時の状況をもう一度説明して女神様に心の中でもう一度感謝を捧げていると部屋に戻された。


もう昼もとっくに周りお菓子の時間も過ぎていた。


お腹が減ったな。


私はバッグからジャガイモパンを取り出して、むしゃむしゃ食べていると幽霊騎士がふわっと現れた。


『無事に終わったようだな。これからお嬢さんに荷物の確認がある。ああ、ジェロームがきているな』



私が急いでパンを口に入れると、ジェローム様が荷物を持って部屋に入ってきた。


「スペンサー令嬢、こちらが盗られたと言われたポシェットで間違いないでしょうか。財布もありましたが、中身はすでに抜き取られていました。余罪がありますので現金をすぐにお返しする事は難しいでしょう」


「そうですか。ポシェットは間違いありません。中身を確認しても?」


「はい。失礼ですが、こちらで一旦全て確認をさせて頂きました。ポシェットはスペンサー様の物で間違いないようです」


私がポシェットの中身を全てだして確認していくと、ポシェットの内ポケットに小さな紙が二つ入っていた。


こんな紙あったかな?


カサカサと小さな紙を開くと、マシューからの手紙だった。


「フレイヤお姉様


お姉様がこの手紙に気付くかは分かりませんが、無事に王都へと旅立てるようにと願いを込めました。お姉様が、バンシー伯爵へと嫁ぐなど私は嫌です。借金はどんな事をしてもすぐに返してしまいましょう。大丈夫です、お姉様が立派な行き遅れになった時は私がお姉様を養いますから。お姉様、どんな結果であろうと領地へと笑顔で戻って来て下さい。どうかお元気で。


マシュー」


もう一つの紙を開けるとシンシアからの手紙だった。字は習い始めたばかりなので、けっして上手ではない。セバスとマシューに手伝って貰いながら一生懸命に書いたのだろう。


「ふれいやおねえさま


しんしあはおねえさまがだいすきです。おねえさま、てがみをください。しんしあはおうとのおかしよりもおねえさまにかえってきてほしいです。


おねえさまだいすきよ。しんしあ」


「……うっーーーーー!!」


私は手紙を読むと、ポトポト、と涙が溢れてしまった。口をぎゅっと結んで慌ててハンカチをポケットから出して涙を拭いた。


うちの妹と弟が優勝。世界一。


『お嬢さん、良かったな』


私は幽霊騎士様の声に頷いた。ポシェットが本当に戻って来て良かった。


世界一可愛いシンシアと世界一賢いマシューの手紙を知らずにいる所だった。


ポシェットを撫でて、手紙を綺麗に折りたたんでいると、ジェローム様は身体を横に向けて書類に目を向けていた。


私は涙を急いで拭き、手紙をポシェットに戻しその他の中身の確認を終えた。ゆっくりと息を吐いて、胸に一度手を当て落ち着くとジェローム様の方へ顔を向けた。


「はい。間違いありません」


「そうですか、ではこちらの書類にサインをお願い致します。こちらが言われていたネックレスだと思いますが、スペンサー様のものと分かる何か目印はありますか?」


「ええ。後ろの部分に私の名前、フレイヤと彫ってあります。石の近くには「幸あれ」と彫ってあるはずです」



ジェローム様は事務員を一人呼び、ネックレスを確認した。



「確かに。こちらはすぐにお返し出来ます。こちらの書類にサインをお願い致します」


ほっと、息を吐き出し、ポシェットとネックレスを返して貰った。


「先程も言いましたが、現金ですが、財布に入ったままであればすぐに返金できたのですが、早くても一ヵ月、遅ければ一年程返金に待って頂く事になるかと。それでも、全額戻るかは保障出来ません」


「しょうがないのでしょうね。分かりました。宜しくお願い致します」


私が礼をするとジェローム様は事務員さんを呼び、書類に何か書き足すと、事務員さんは書類を持って出て行った。


ジェローム様と二人きりになると、幽霊騎士が声を出した。


『お嬢さん。では、儂の願いをかなえて欲しい。頼む、ジェロームにこう伝えてくれ「パトリック・ハーパーから伝言がある」と言って欲しい』


私の方を不安そうに幽霊騎士が見ている。


分かっている。私が約束を守るか不安なんでしょう。幽霊騎士のおかげでポシェットもネックレスも戻って来た。


私はちゃんと約束を守る女よ。


ここで約束を守らないと女神様の元にいるお母様が呆れてしまう。


ふーっと息を吐き出すと、私は幽霊騎士の方をチラリと見て頷いた。


大丈夫。ちゃんと最後まで付き合いますよ。私がそう心の中で思うと、伝わったのか、幽霊騎士の表情は和らいだ。


『有難う、お嬢さん』


「お礼を言うのは早いです」



私が小さな声で呟くと、幽霊騎士はニコニコと私を見ていた。黙っている私を不思議そうに見ているジェローム様の方を見ると幽霊騎士は私と同じようにジェローム様を見つめた。


「ジェローム様、おかしな事を言うと思われるかもしれません。しかし、最後まで私の話を聞いて下さい」


「はい?何でしょうか?」


「ジェローム様にパトリック・ハーパー様より伝言を預かっております」



私が名前を言った途端にジェローム様の顔色が変わった。




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