第1話 婚約が決まったぞ
「ハーマリー、婚約が決まったぞ、相手は伯爵家の嫡男、レイフ殿だ」
私の婚約を報告をするのはトラヴァン子爵家の父上。
伯爵家と婚約する事は、貴族として名誉な事だ。
父上も伯爵の相手と婚約される事で家格が跳ね上がる。
「凄いです、父上。私もレイフ様に早く会いたいです」
「うむ、くれぐれも失礼の無いようにな」
チャンスは無駄にしてはいけない。
レイフ様に好かれるように努めなくては。
「それではいつレイフ様に会えるのですか? 早くお会いしてみたいです」
「ああ、数日後にレイフ殿と会えるように都合を合わせている」
「分かりました」
私はレイフ様と会えると聞いてから、待ちきれなかった。
◇
そして数日が経ち、私はレイフ様が会う約束の地に向かう。
するとレイフ様の姿が目に映る。
「遅れてしまい申し訳ありません、私はトラヴァン子爵家のハーマリーと申します」
「お前がハーマリーか、俺は伯爵家のレイフだ」
この方が私の婚約者となるレイフ様。
レイフ様は少し目付きが悪いが、顔は整っている。
だが冷たい目で私を見ており、顔は怒っているように見える。
何か気に障る事をしてしまったのだろうか?
それに態度が少し威圧的だ。
だけど大丈夫だ、落ち着け。
まだ失敗したわけではないのだ。
何が悪かったのか、これから直していけばいいのだから。
笑顔を振り撒けば、大抵の相手は基本好印象を持ってくれる。
レイフ様も私の笑顔に心が動くかもしれない。
そう思い私は笑顔を向ける。
だがその笑顔がレイフ様の逆鱗に触れたようだ。
「その笑顔をやめろ」
「え……」
凍りつくような声だった。
レイフ様を怒らせてしまったようだ。
なんと謝罪をすれば良いか考えていると、レイフ様は口を開く。
「俺はお前を愛さない、それと婚約の解消はしないからな。都合故、お前との婚約を受け入れたんだ。だから俺に愛を求めるなよ」
私はレイフ様の言った事が理解できなかった。
愛さないのに婚約した?
なぜそうなってしまっているんだ。
私はまだ何もしていないのに。
「理解しろハーマリー。愛してない相手に笑顔を見せられても意味がないんだよ、気持ちが冷めるだけだ」
「それはどういう……」
「黙れ、余計な事は言うな。もうこれで用は済んだ、じゃあな」
そう言ってレイフ様は去っていってしまった。
せっかく婚約になったのに、これはなんだのだ。
私に一体何が足りなかったというのだ。
私は何をしてしまったのだ。
とりあえず私は帰宅して父上に報告をする。
これは子爵家に影響する話だ。
「お父様に報告をしないと……」
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