Code: Redemption
連行された村田は警察署で取り調べを受けていた。
「口座の金額が不正に操作された形跡がありますが、村田さんはこのことを認識していましたか?」人のよさそうな警官だったが、どこか問い詰めるようなニュアンスを感じた。
村田は、心臓がどきどきと高鳴るのを感じながら、必死に自分を隠そうとして答えた。「いえ、全く認識していません。」
警察官は村田を見つめながら、何かを考えているようだった。「8日にATMを利用しようとしましたよね。その際はじめてカードが使えないことに気が付いた、ということですか?」と問いかけた。
村田は自分が初めて能力を使った時のことを思い出しながら、震える声で答えた。「はい、そうです。」
「それでは、誰かがあなたの口座を不正操作をした可能性がありますね。」警察官は事務的に言うと、しばらく紙に向かって何かを書き込んでいた。
村田はただ、自分が特殊な力を手に入れたことやその力を不正に利用したことが警察にばれることを恐れ、必死に隠そうとしていた。
静まり返った部屋の中、時折文字を書き込む音が聞こえたが、村田にはその時間が拷問のように感じられ、背中にはびっしりと汗が張り付いていたが、それすら気が付くことがないほど緊張し苦痛を感じた。
長い時間だったが、最終的には証拠がないと判断されたのか、驚くほどあっさりと警察から解放された。
帰りのタクシーの中で、村田の頭の中には様々な考えが渦巻いていた。
自分が特殊な能力を持っていることやそれを利用して不正行為を働いていたことも明るみに出るかもしれない。
そんな中、村田の携帯電話が鳴り始めた。出てみると、知らない番号からの着信だった。
「もしもし、村田です」と村田が出ると、相手からは何も言われずにただ電話が切れた。
村田は不審に思いながらも、タクシーを降りて自宅に戻った。家に着くと、誰もいないと思っていたが、部屋の中に誰かがいた。
「おい、何してるんだ!」村田が声を上げると、突然、その人物が村田の手を掴んだ。
「どうして君が逮捕されたか、知りたくないか?」その人物は、村田が警察で取り調べを受けたということを知っているようだった。
「だ、誰なんだお前?」村田は、怯えながらその人物を見つめた。
「特殊な力を持っているのは君だけではない、ということだ。」その人物は、にやりと笑うと、手を村田の前にかざした。
すると突然村田は前後不覚に陥り、なんとか崩れ落ちないように踏ん張ろうとするも、視界が狭まり自分が気を失うことを悟った。
「悪いな、特殊な力を持つ人間に暴れられると困るからこうすることがベストなんだ。」
薄れゆく視界の中で、村田は男の言葉を理解することもないまま意識が消えた。