Code:Alter
村田健介は、IT企業で働くプログラマーだった。毎日コードを書き、バグを修正する日々を送っていたが、うだつが上がらず、プライベートでも恋愛や友人関係にも恵まれず、生活に飽き飽きしていた。
ある日、村田は会社での仕事中に、突然変わった感覚に襲われた。目の前にあるプログラムのコードが、文字通り浮かび上がって見えたのだ。そればかりか、そのコードを編集することで、現実そのものを改変できるような気がした。
村田は心臓がバクバクと高鳴るのを感じながら、その不思議な感覚に取りつかれた。自分が現実を改変できる力を手に入れたことに興奮し、恐ろしさとともに胸が膨らんでいった。村田は自分自身に「これは本当にあることなのか」と問いかけたが、その疑念はすぐに打ち消された。彼は確かに現実を書き換えられる力を手に入れたのだ。
彼はその力を試すため、まずは自分が持っている貯金の額を変えてみることにした。村田はコードを編集し、貯金額を増やした。すると、村田の通帳に現れた数字が、普段の数値よりも多くなっているのがわかった。
村田は目を疑った。自分が書いたコードが動いて、銀行口座の残高が変わったのだ。彼はもう一度手順を確認した。それでも結果は同じだった。
どうしてこんなことができるのだろう?村田は自分自身に問いかけた。彼はコンピュータに熟達していたが、こんなことは初めてだった。これで口座を空にできるのか?
彼はもう一度残高を確認し、お金を自由に使うことができると確信した。
「しかし信じられない……本当にこんなことができるなんて」村田はこの非現実的な力の行使に少し躊躇した。もしかしたら、誰かにバレるかもしれない。ばれたらどうなるのだろうか、犯罪?
しかし、この力でどこまでできるのかを知りたいという好奇心は、彼を踏みとどまらせることをしなかった。
村田は自分の出来ることを把握するために、もっと複雑なことをやってみようと思い、自分が思いつくあらゆるものを改変しようと試みた。自分の住んでいるアパートの部屋の配置、部屋にある観葉植物の大きさ、現在の天気…
しかし、それはうまくいかなかった。記述されているコードが難しすぎるのだ。
「うーん、難しいな」と彼はつぶやいた。彼は自分の限界を知り、次にどうするかを考えた。より多くのことをやるためには、より多くの実験を行い、この力を使いこなさなければならない。この力をどのように使っていくかを考えると、村田は興奮しその日は一睡もすることが出来なかった。