下位貴族に嫁ぐのは果たして不幸なのか
※ふわっとした異世界系の世界観ですので現実とは全く異なります。
※爵位や税金関係もふわっとしたものです。色々ふわっとしています。
※テーマはあくまで下位貴族に嫁ぐ事が不幸なの?本当に?というものなのでふわっと読んでくださるとうれしいです。
「まあ、アルバイン子爵夫人ではありませんか。ふふ、下位貴族に嫁いでお可哀想に。御実家は侯爵家なのに」
「ごきげんよう、マルリアン公爵夫人。あら、そちらのブローチは二週間前の夜会でつけていらっしゃったものと同じですわね。ふふ、お聞きしておりますのよ? 最近の公爵家は中々商人も呼べないとか」
「なっ」
王太子殿下の嫡男であるフレデリック第一王子殿下がつい先日5歳になったという事で、これから先の友人や婚約者候補になりえる同年代の子息令嬢が招かれている王宮庭園は、緊張感に満ちている。
というのも、今まさに挨拶を交わしているアルバイン子爵夫人とマルリアン公爵夫人には因縁があった。
彼女たちがまだ若い頃、王立学園に通っていた頃の話。今はアルバイン子爵の妻になっているダリアは侯爵家の令嬢で、マルリアン公爵家の子息であるトレッドと婚約をしていた。しかし、彼は学園で出会ったリナリア=コスタンス男爵令嬢と恋仲になり、ダリアとの婚約を解消した。
もちろん、ダリアの実家であるタリスニア侯爵家は不貞が原因であるとして公爵家を相手に引くことなく慰謝料を請求した。更に、婚約に伴う事業提携においての負債全てを公爵家に請求。これは王家にも届けられ、不貞の事実を元に認められた。
ダリアはその後、婚約を解消した後に多くの縁談が寄せられたが、その中で選んだのはアルバイン子爵家の嫡男トーマスであった。
侯爵家から子爵家に嫁ぐというのは高位貴族の令嬢たちからすれば罰にも等しく感じられるのだが、ダリアは笑顔で嫁いだ。
そしてマルリアン公爵家には家格の差がありすぎるリナリアが嫁ぐ事になった。リナリアは美しい婚約者を奪い取っただけでなく、高位貴族の中でも最上位である公爵家に嫁げた事で女として己は勝ったのだと自慢をしていた。
その時は誰もがそう思っていただろう。しかし、一年もすれば何故ダリアが子爵家に嫁いだのか、理解する者が現れ始めた。
「わたくしの夫のトーマスはわたくしのことをとても大事にしてくださるの。社交に出るにあたってわたくしに似合う宝石をいつでも見つけて下さるの。それにドレスもいつでもわたくしに似合うように最先端だけでなく、わたくしの為だけのデザインを選んでくださるのよ」
多額の慰謝料と負債を抱えることになった公爵家は所有している資産だけでは足りずに領地を売る羽目になった。生活もある程度制限せねばならなくなったのだが、リナリアはそんなことはお構いなしに贅沢を望み散財をし続けた。結果、伝統ある公爵家でありながらすっかり没落が目に見えてきた。
王家から王女が嫁することもあった公爵家に嫁ぐには常識も作法も礼儀も何もかも足りない、学園に通っていた頃は可愛らしさだけで許せたそれらも、結婚すれば欠点にしかならない事にトレッドはようやく気付いてしまった。全てがどうにもならない程の手遅れになって。
それに対して、多額の慰謝料などを受け取ったタリスニア侯爵家はダリアに惜しみない持参金を持たせてアルバイン子爵家へ送った。このトーマスという男は隣国で学問を修めた優秀な男で、特に商才に恵まれていた。複数の言語を習得し、独自のルートを使って商会を一気に国内一にしただけでなく、周辺諸国への出店を果たした。
国によっては王家御用達に望まれるほどであったが、他国の商人がその立場になるわけにはいかないと断っている。
この国では爵位に応じて納める税金の額が異なる。上位貴族ともなれば領地は良い土地ではあるが、広大であるし領民も多い。だからこそ税額も増える。一方下位貴族が治めるのは小さくさして良いとは言えない場所も多い。だからこそ独自に商会を作ったりなどして資産を増やす方法を模索する。国への税金は領地と領民の数から算出されるものだけなので、商会を営む者達がどれだけ稼いでも国に納めなくていいからこそ、裕福な下位貴族が増えていくのだ。
その恩恵を最大に受けているのはアルバイン子爵家であり、そこに嫁いだダリアであるだろう。
「ご覧になって。ダリア様の付けられている宝石、あれは宝石王国とも言われるジャンゼル王国でしか採る事の出来ないと言われるジャンゼシャルイン石じゃないかしら」
「まあ! あの石は他国に滅多に出ないと言われているのに……?」
「ふふ。トーマスはジャンゼル王国の王太子殿下と親しくさせていただいていてね。王太子殿下よりわたくしへと特別に計らって下さったの」
艶やかな黒髪を夫人らしく優雅にまとめ上げたダリアの細く白い首を彩るネックレスは中央に独特な黄色と緑が入り混じる宝石を配し、花を模した台座とダイヤモンドのルースで囲んでいる。耳にも同じイヤリングが付けられており、しかしそれが決して下品ではないのだ。これら全てデザインをトーマスがダリアの為だけに考えているというのだから深い愛情を得ていると誰もが理解する。
一方、リナリアは自分が原因で公爵家が落ちぶれているというのに、ダリアが慰謝料を浅ましくも奪ったからだと逆恨みをしている。見た目だけは豪華だが質の劣るドレスに宝石たち。手入れも満足にできていないのであろう髪の毛は傷みが見えて艶はないし、肌もくすんでいる。
第一王子と同じ5歳の娘を持つ母同士であるのに、圧倒的な差がそこにはあった。
本来であれば下位貴族のアルバイン子爵家が呼ばれることは異例であるが、元々ダリアはマルリアン公爵家との婚約が無ければ王太子との婚約もなされていたのではないかと言われるほどの才色兼備である。学ぶことに貪欲でトーマスと渡り合えるほどの語学力を持ち、血筋も由緒正しい。生まれながらの婚約でなければ、と王太子殿下が零した事もあるほどと言われている。
現在の王太子妃はそんなダリアを尊敬している公爵家の令嬢で、王太子の零した言葉を拾っては『本当ですわよ。もしもダリア様が妃でしたらわたくしは何が何でも侍女にでもなっておそばに仕えたいと思うほどの素敵な方なのですよ』と返す位である。
その王太子妃は子供の頃にこの王太子と婚約を結んだのだが、ダリアの婚約解消に際し『殿下、わたくしと婚約を解消しダリア様をお迎えしませんこと?』と言った事がある。さすがにそれは許されないし、王太子も彼女の事を愛していたので言葉を尽くして取り下げさせた過去がある。
優秀な二人の子供である令嬢はダリアの実家であるタリスニア侯爵家の祖父母たちからも溺愛されており、礼儀作法は高位貴族のものを受けている為、下位貴族でありながら見劣りはしない。
環境から甘やかされて育ってもおかしくなかったのだが、傲慢さを誰よりも知るダリアは娘に対して人間性を磨く事の大切さを丁寧に語っている。結果、美しく育つ事が分かる整った顔立ちをした少女は、5歳でありながら第一王子を立てながら笑顔で傍にいた。
少女もまた学ぶことを好んでおり、屋敷にある書庫の中で図鑑を見ては気になるものを両親や教師に問うては吸収していっている。それを聞き及んだ王太子夫妻からの招きでこの場にいる事が許されていた。
淑女教育の完成品と言われたダリアと淑女教育の失敗作と言われているリナリアがこの場に居合わせたのは王太子妃の企みである事は誰もが理解せざるを得なかった。
公爵家の令嬢でありながら未だ礼儀作法の身についていない我儘を平然と言い放つ娘と子爵家の令嬢でありながら将来性を感じさせ淑女の一歩を踏み出している娘。そのどちらを第一王子が選ぶのか。すでに勝負が見えている所に突入させて心の傷を負わせるつもりのない夫人たちは、第一王子の学友候補として呼ばれている子息達との交流を促す。
事実上、第一王子を巡る座はこの二人に絞られていた。
「フレデリック様! リリィとお話しましょう!」
「フレデリック殿下、今日は日差しが少しばかり強いです。少しお飲み物を飲まれますか?」
リナリアがダリアに恨みつらみを込めた視線を向けている傍で侍女たちが見守る中第一王子を挟んで二人の少女たちがそれぞれ言葉を発する。リリィとはリリアーナが正式な名でありリナリアの娘である。もう一人の少女がダリアの娘カンナである。
すでに王子教育を受け始めているフレデリックは二人の少女の言葉を聞くと、にこりと微笑み、まずはリリアーナに顔を向ける。選ばれたのは自分だ、と満面の笑みを浮かべるリリアーナにフレデリックは容赦のない言葉を与える。
「君は本当に公爵家の令嬢なの? 先生に何も教わっていないの? 君と話す事は何もないよ」
あまりの物言いに理解出来なかったのかリリアーナはきょとんとした表情を浮かべる。そしてその言葉をしっかりと耳にしたリナリアは顔を真っ青にした後に顔を赤くする。しかし、王太子妃がそばにいる為に大声は出せない。
フレデリックはすぐに隣にいるカンナに体ごと顔を向けると、にこりと微笑んですっと手を差し出す。
「あちらでお話しようか」
「ありがとうございます、殿下」
スカートをつまみ子供らしいお辞儀をするとカンナは差し出された手に手をそっと乗せる。侯爵家では従兄が頻繁にエスコートの練習と称して手を差し出すので慣れてしまったのだ。可愛らしい子供たちの行動に微笑ましさを感じる周囲。
自分が蔑ろにされたのだと分かったリリアーナは大声で泣き始めると走り出しカンナに向かって大きく手を振り上げる。しかし、侍女たちが素早くその間に入りそれを止める。対象はカンナであったかもしれない。しかし、そこには第一王子がいるのだ。
王族への攻撃と見做されてもおかしくない行動。
批判に満ちた視線が母親であるリナリアに当然向けられる。
「もうよいでしょう。マルリアン公爵夫人。貴女の娘は我が息子とエスコートしているアルバイン子爵令嬢へ暴力をもって攻撃をしようとしました。子供だからと許されるものではありませんわ。今すぐお帰りになって下さって宜しいのよ」
言外に帰れと言われたリナリアは血の気の引いた顔で髪を振り乱し暴れる己の娘を見る。かつては奪い取った男の下で誰よりも優雅に暮らすのだと信じていた。しかしその夢はすぐに潰え、それならばと公爵家の名の元に王族に娘を嫁がせて未来の王妃の母として権勢を誇ろうとしたそれも目の前で潰された。
何もかもが思うようにいかないのは何故か。
目の前にいるダリア=アルバイン、かつてのダリア=タリスニアのせいだ!
怒りに満ちたリナリアはダリアに掴みかかろうと動き出し近付くと手を振り上げるが、その手は振り下ろされることはなかった。すっかり周囲が見えなくなっていたリナリアはそこに護衛を担当する騎士たちが控えている事を忘れていたのだ。
「貴女は公爵家の夫人になるべきではなかったわね」
王太子妃の言葉と共に拘束されたリナリアは強制的に跪かされる。ダリアは傍にいた他の夫人たちに囲まれ守られながら笑みを浮かべたままである。
「王太子妃殿下。よろしいのですわ。だって彼女は所詮、男爵家でもまともに教育を受けていなかったのですから。学んだ事は殿方の心を奪う方法だけ。その後の事を何も考えられない愚か者に妃殿下がお言葉を与える必要もありませんわ」
ねえ、と微笑みを絶やさずに見下ろすダリアは子爵家に嫁しながらも侯爵家で受けてきた教育を惜しみなく発揮する。本人の資質とたゆまぬ努力は爵位に関係などないのだと周囲に知らしめる。
それどころか、夫に愛され惜しみなく金銭を注がれ、常に美しさを保っているダリア。娘のカンナが仮に王族に嫁ぐとして両親の爵位が不足しているとしても、彼女が侯爵家へ養子に入ればいいだけでその血筋は確かである。
「ふふ。貴女はわたくしから婚約者を奪い満足したでしょうけど、貴女がその公爵家を壊したの。身の程を知っていれば幸せを得ることも出来たのにね」
男爵家であれば子爵家との婚姻はその立場に見合ったものであっただろう。彼女が望む贅沢が約束されていたはずだ。高位貴族に嫁ぐ事こそ最上の幸せだと考えなければ。人の婚約者を奪わなければ。己の内面を磨いていれば。リナリアは誰よりも幸せになれたはずだ。それを潰したのは己自身だと突き返したダリアはここにいる誰よりも幸せであると体現していた。
かつて、ダリアが子爵家に嫁した時に誰もが彼女を哀れだと考えていた。高位貴族は下位貴族を下に見ており、侯爵家という由緒正しい彼女の行く末は哀れなものだと予想していた。しかし、今、誰が彼女を哀れに思うだろう。
「わたくし、アルバイン子爵家に嫁いで毎日幸せを感じておりますの。愛し愛され可愛らしく賢い娘に恵まれ、跡取りとなる息子も生まれたばかり。決して哀れでも何でもありませんのよ?」
ダリアは連れていかれるリナリアを一瞥すると興味をなくし、直ぐに己の娘へと視線を向ける。ダリアは己の娘が幸せになれるのであれば、王族であろうと平民であろうと好きな相手の元に嫁げばいいと思っている。己を磨き内面を磨き、幸せになる為の方法を己で考え、そしてそれを充たしてくれる相手と結ばれるのであれば。
これより10年の後、正式に婚約を果たした第一王子とカンナ。カンナはアルバイン子爵家からタリスニア侯爵家に養子入りし、そこから王族へと嫁ぐ事になる。アルバイン子爵家は幾度となく陞爵を打診されるもそれを断っていた。高位貴族になれば思う事が思うように出来ないというのがトーマスの断りの理由である。彼は己の妻であるダリアだけを愛し、彼女の為に惜しみなくお金を使う為に下位貴族でありたいと願っていた。そしてダリアもそれを良しとしていた。跡取りとなる息子も、貴族としてよりは商人として商会を切り盛りすることに興味を持っていた。
年老いたダリアは、先に旅立った夫が彼女が死ぬまで困らないようにと息子に重々言い聞かせていたこともあって何一つ不自由なく生き続けた。そして死の淵に際し、涙を流す息子夫婦や孫たちの中で、やはり美しく笑いながら言葉を残す。
「わたくしはずっと幸せだったわ。爵位なんて関係ない。愛とお金があれば、人は幸福でいられるのよ」
「母上……そこでお金が無ければよかったのに」
「ふふ。貴方も決してお金で苦労させては駄目よ? 常に、惜しみなく、愛とお金を注いで幸せにしてあげなさいね」
それが最期の言葉であった。その言葉は息子夫婦や孫たちにも引き継がれ、アルバイン子爵家は王国が遥か先で滅びるまで豊かであり続けたという。
◆--◆--◆
それぞれの夫と話
◆アルバイン子爵家
「今日も私の妻は罪深いほどに美しい。そして私の娘は可憐な花のごとく愛らしいね」
「ただいま戻りましたわ、トーマス」
「お父様、ただいまです」
アルバイン子爵家の屋敷は実家の侯爵家に比べれば随分小さい造りで使用人も少ない。しかし、夫のトーマスは最高級の家具などを惜しみなく揃え、それだけでなく立派な書庫を作ってくれている。商会の関係や他国からの友人知人からの招きが多いために家を空けていることが多いけれども、だからこそダリアとカンナ、そして生まれたばかりの息子のケインが何不自由なく暮らす事を望んでいる。
「カンナ、王宮はどうだった?」
「フレデリック殿下はとても素敵です。私が本が好きだと言ったら色々な本を教えてくれました。もっとたくさんお話がしたいです」
「そうか。ダリア、君はどう思う?」
「ええ。フレデリック殿下は聡明でいらっしゃいますわ。ご両親があの王太子夫妻ですもの。特に妃殿下はわたくしを慕ってくださっていますわ」
「そうか。爵位の問題はどうにでもなるしね。幸いに王家に嫁ぐにしても君の実家があるからね」
「ふふ。それだけではありませんのよ? わたくしの旦那様、トーマス。貴方だって十分に魅力がありますもの」
広い他国への伝手を持ち、豊かな資産を持つトーマス自身は爵位を超えた魅力がある。それだけで十分にカンナの後押しをする事が可能な上に、ダリアの血筋もあれば、反対意見は多少あろうが十分に王家に嫁ぐ事は可能だ。
だが、彼女はまだ5歳の少女である。父であるトーマスの腕に抱かれていると次第に疲れが出てきたのかうとうとと眠そうな表情を浮かべ始める。
「夕食まで少し寝ようか、カンナ」
「うぅ……そうします……」
本当はもっとたくさん話したいのに、とむずがりながらカンナはそれでも睡魔に負けてしまう。くてん、と体の力が抜けて少し重くなった娘をしっかりと抱えたトーマスは、美しい妻と並んでカンナの部屋へと向かう。
「私は君と結婚出来て本当に幸せだよ」
「わたくしもよ、トーマス。これからも幸せにしてくださるのでしょう?」
「もちろん! 君が死ぬ時まで絶対に不自由はさせないから」
カンナをベッドに寝かせると、ダリアとトーマスはその縁に腰かけ、気持ちよく夢を見ているだろうカンナの顔を眺めた後、顔を近付けそっと唇を重ねた。
◆マルリアン公爵家
「リナリア! 君はこの家を潰すつもりなのか!?」
「うるさいわよ、トレッド! なんなのよっ……公爵家なのにどうしてこうも貧しいのよ!」
「すべては君が仕出かした事だろう。君が僕をダリア嬢から奪おうとしなければ慰謝料も賠償金も何もかも支払う必要はなかった。それでも僕が君を選んだ後に状況を理解して贅沢を控えていれば借金だって出来る事はなかった!」
「なによ、あんたが私に『結婚しても贅沢をさせてあげるから』って言ったからじゃない!」
王家より王宮への立ち入りを禁じると正式な書状を持ってやってきた使者が帰った後、早々に爵位を受け継いだトレッドは己の妻であるリナリアの所業を知り怒鳴り散らす。しかし、トレッドが婚約者がいるにもかかわらず不貞を働いたのは事実で、それをすっかり棚上げしてリナリアに全部の責任を押し付ける姿を見て家令は大きなため息をつきそうになる。
娘であるリリアーナは母親であるリナリアが乳母に任せず己の手で育てたために男爵家レベルの教育しか身についておらず、本来であれば公爵家という比類なき爵位を持つ令嬢として王家に嫁ぐ事も可能であったはずなのに、その道を断たれたのだ。
癇癪は酷く、気にくわないことがあれば暴力に訴え、泣いて喚けば諦めた周囲が彼女の望みをかなえると理解してしまっている。その性根が変わる事は難しいだろう。
早々に逃げ出した前公爵夫妻は領地で慎ましやかに暮らしている。だが、このままだといずれはこの公爵家はつぶれてしまう。トレッドの三歳年下の弟が領地で働いているが、いずれは彼に当主が代わるのではないだろうか。それまでこの公爵家が果たして持つのか。
家令を始めとした使用人達は暗澹たる思いを抱きながら静かに仕事をするのみであった。
◆メモ
アルバイン子爵家:お金がたくさんある
夫:トーマス
妻:ダリア (実家:タリスニア侯爵家)
子:カンナ/ケイン
後にカンナはタリスニア侯爵家に養子入りし、そこから王家に嫁ぐ
「愛だけでは腹は膨れないけれどもお金があれば腹は膨れる。お金と愛があれば心が満たされる」
が代々引き継がれる言葉
マルリアン公爵家:お金が無くなる
夫:トレッド
妻:リナリア (実家:コスタンス男爵家)
子:リリアーナ
リナリアがもはや疫病神レベル。
王家
王太子
王太子妃(実家:公爵家)
第一王子:フレデリック
まともな王家。教育もきちんとしている。馬鹿な王太子は存在しない。ちょっと暴走しそうになる王太子妃はいる。