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不登校生  作者: 宮崎昂路
1/1

忠告

京都市の外れにある山間、至って普通の住宅街。

静寂に包まれた午前中の11時頃、陽の光に気づいた

目蓋がゆっくりと開いていく。

「……ん」

もう朝なのかという事実が受け入れられない意識と、

まだ布団の中に居たいという思いがあり、次第に

ゆっくりと体は起き上がっていく。


「おはよう!今日は過去が終わり、未来が始まる日だ!」


なんて思うわけも、声に表す事もせず、無言でベットの上に置いてあるスマートフォンを取る。

スマートフォンを開くと現在の時刻が私へ伝わる。


「もうこんな時間!?」と驚く事なく、手慣れた操作でスマートフォンのパスワードを解除する。

ネットとは今でも凄いと思う。

昨日や今日起きた出来事は瞬時に顔も名も知らない者へ伝わる。 そこが凄いと思うし悪いとも思う。

その為ニュースサイトを開くとそこには膨大な量の、

出来事が表れる。物事の重要な事からどうでもいい事

それらが寝起きで整理された状態の脳に入り込む。

脳が情報を整理出来ず、次第にいつも通り重くてふらつく身体ができあがる。


「そろそろ1階に降りるか」


「なんと贅沢な時間の使い方なんだろう!」

「皆は学校に行くか、それか朝早く起きて勉強しているのに!」

心の中で何者かが言う。


名も知らない者からの忠告を流し、階段を降りる。

リビングには電気がついていた。

「母さんか」

扉を開ける。 リビング兼キッチン部屋の椅子には、私の

母親が趣味であり仕事でもある手芸をしていた。

「おはよう」

母親が言う。 私は何も言わずスマートフォンを眺めながら、いつもいる和室へ向かう。

母親が手芸の手をやめ、私の為に朝作っていた食事を和室へ持ってくる。 私は椅子にもたれながら。


「なんと体たらくなんだろう!」


また名の知らない者からの言葉を無視し、私は机の上に置かれた朝食を見て、食べ始める。

いつも通り、パンに副菜、玉ねぎ入りの白だしの汁

コップいっぱいのお茶。

パンを手に取り食べる。口はパンを噛み、目はスマートフォンに映る動く画を見ている。

いつの間にかパンと副菜が無くなって、白だしの汁のみになった。


母親は私に向かってなにか言っている様だった。

「母親よ!あなたが話しかけているのは

息子では無く、情報と欲に溺れた人と思え!」


今度はハッキリと脳にその言葉が通じた。

一瞬頭がカクンと落ちる様になった。

気づくと白だしの汁は飲み干し、食器を手に取り私は

台所に向かった。


「ありがとうね」


イヤホン越しでもわかった。 私が母親に「ありがとう」と言われたのだ。 ただ食器を台所へ持って行っただけなのに。


「前に比べりゃ多少、マシになったか?」


心の中で達成感と驕りが生まれる。

小さい。ものすごくどうでもいい。

なぜ私はそれだけで感謝されたのだ?

現在の私の状況と理想とする私となる為、心では

葛藤が生まれた。

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