学園祭の演劇の配役を決めました
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
昼休憩が終わってホームルームの時間になった。
時間きっちりにルンド先生が入ってくる。
全員礼をして、ホームルームの開始だ。
クラス委員長のフィル様が前に立って、副委員長の私がその横に立つ。いつものホームルームの時間だ。
「では、イングリッドさんから脚本は頂いたんですけど、皆さんは読まれましたか?」
フィル様が皆を見回す。
「はい」
皆頷く。
「こちらで宜しかったですか」
フィル様は不満そうに言うんだけど、
「はい、良いと思います」
「これなら、3年生にも勝てるような気がする」
「賛成」
誰からも反対が出ずに、フィル様が、がっかりされる。
「一つ、宜しいですか」
ルンド先生が言ってくれた。
「はい、どうぞ、先生」
フィル様が期待した目でルンド先生を見る。
「いま、巷にはこれと同じような話が出回っていますし、演劇の一番人気もそうなんですけど、この脚本ではあまりにもあからさまなのでは無いかと危惧します。オーステンィンさんが心配されるのも最もなのではないかと思いますが」
先生がオブラートに包んで話されるけど、私を主人公にした本や演劇が巷で大ヒットしているそうだ。挙句の果てには私が軍を率いて、ブルーノらを退治して、王位につくというのまであるのだ。私は平民のアンだし、絶対にそんなのはないと思う。それは父や母の敵を討たなくて良いのかと言われれば少しは考えるけれど、基本的に私は平民として育てられたし、国王なんてなるのは無理なのだ。
そんな演劇は私としてもやりたくないんだけど、皆の手前なかなか言えない。
先生も隣国の王女が留学している中で、問題は起こしてほしくないというのも一理あると思う。
でも、先生が気にしている王家の御曹司のフィル様の気にしている所はそこではないんですけど・・・・口に出さずに私は思った。
「じゃあ先生、国の名前や登場人物の名前をもう少し変えますね」
イングリッドが言うんだけど。そういう問題か?
「出来たらこの話が隣国と関係ないように見えるようにしてほしいんですけど」
先生はいうが、
「判りました。努力します」
イングリッドは胸を張って言い切ったが、絶対に何も考えていないのは一目瞭然だった。
「では、それは後で考えてきますので、とりあえず、時間がないので、配役を決めてはどうかと思いますが」
「いやあ、最後も変えたほうが・・・・」
小さい声でフィル様が言うんだけど、誰も聞いていないというか皆に無視された格好でになった。
「主役はアンでいいと思います」
フィル様を無視して、イングリッドが叫んだ。
「えっ、でも私なんか」
「主人公は何故か赤毛になっていますし、アンなら髪の色変える必要ないですし」
いやいや、絶対にイングリッドはわざと赤毛にしたよね。
「王子役はフィルが、騎士役はメルケルがいいと思います」
「いや、待った、騎士役は俺が」
フィル様が言い出すんだけど、
「何言っているんですか。王子様が実際にいらっしゃるんですから、当然王子様は王子様がやっていただかないと。みんなそう思うよね」
「「異議なし。」」
全員の声にフィル様が唖然と立っているんだけど。
「あっ、俺、悪役のブルーノ役やりたい」
アルフが叫んだ。おいおい、悪役はベリーノだって、もう完全にブルーノになっているし、
「じゃあ、私はテレーサ役がしたいです」
ドーソンさんが叫んでいた。もう偽名じゃ無くなっているんですけど。
ルンド先生は頭を押さえているし、フィル様は唖然と棒立ちしているんだけど。
「皆さん、これはあくまでも架空の話ですからね。昨日、決闘をしていた不届き者もいますが、学園は学ぶところなのです。皆で仲良くしてくださいね。決してこの事で争いを起こさないように、よろしくお願いしますね」
最後にルンド先生が皆に言い聞かせた。
皆頷く。
「特にイングリッドさん宜しいですね」
「はい。判っています」
返事はいいんだげと、本当だろうか?
「それとアンさんも魔術は人に使わないように、くれぐれもよろしくお願いしますね」
イングリッドのせいで何故か私まで注意されるんだけど、とんだとばっちりだ。昨日怒られたからもう良いじゃない・・・・。私は泣きたくなったのだ。





