閑話 殺された騎士の息子視点 反乱分子として捕まりましたが、何故か逃されました
もうじき第二部始めます。
第二部はもう少しシリアスになる予定です。
王立学園にブルーノの娘やアンネローゼの話を聞いた反抗勢力の子息らが留学してきます。
まだ、隣国の元王女のアンネローゼだということが理解できていないアンの前に、次々に難題が持ち上がります。
でも、アンの周りにはフィルがいて、イングリッドら少しのことには動じない取り巻き?連中も健在です。
そういう波乱を含みつつ二学期が始まります。
この連休中には始めたいなと思っています。
俺の名はメルケル・シーデーン、父親はスカンデーナ王国の騎士だった。
それも近衛騎士だったのだ。ブルーノが反逆した時に、オスヴァルド国王に殉じたのだ。
本来は国王を守るために戦って死んだのだから忠臣になるはずだった。遺族には恩給ももらえたかもしれない。
しかし、勝ったのはブルーノだった。俺の父親は、逆臣に逆らって殺されたのに、生き残ったのがブルーノ側だったから、忠義の士だった我が父も国賊になってしまったのだ。
陛下を守ろうとしただけなのに。忠義の士が、国賊になってしまったのだ。
国賊の息子として、生まれたばかりの俺は肩身の狭い思いをして、母に育てられた。
こんな理不尽なことがあるのか? 父は国王陛下の忠義の騎士だったのだ。それが反逆者に負けた途端に、逆の立場になるなんて。勝てば官軍とはよく言ったものだ。負けければ生きていてはいけないというのか?
子供心に俺は世間の理不尽を思い知らされた。
しかし、生きている者にとってブルーノの施策は辛いものだった。
税率も上げられて、払えないと子供や女房を奴隷として売られたのだ。
各地に反乱の芽が生まれて、それをブルーノは次々に摘発し、潰していった。
首謀者は一族郎党全てが処刑台に送られたのだ。
反逆者の息子としてはまっとうな職があるはずもなく、行くところのなかった俺は、反乱組織の一員となった。
反逆者の子供の俺にはそれ以外に生き残る道はなかったのだ。
もう国王だろうが、王妃だろうが関係ない。
この呪われた世界をなんとかしたかった。普通に生きていける世界にしたかったのだ。
しかし、夢を見ていた俺たちの組織も、仲間の裏切りによって、摘発されたのだった。
俺たちは捕まって死の塔と呼ばれた、反逆者たちが送られる塔の牢獄に幽閉されたのだ。
捕まった者たちは次々に拷問されて処刑されていった。
公開処刑だ。
俺は絶望した。もう終わりだ。結局何も変えられなかった。
俺は何も出来なかったのだ。
仲間の多くは既に殺されていた。牢の中で、獄卒に乱暴されて自殺した受刑者もいると言う。
俺は自分の無力を思い知った。
「囚人メルケル、出ろ」
死を覚悟した時だ。一人の獄卒が来て、俺を外に出した。
この獄舎に連れ込まれてから既に3日。ほとんど食事も与えられていなかった俺はもうフラフラだった。
「無駄なことをしたものだな。静かに生きていたら長生きできたものを」
「ふんっ、俺らはこうして生きるしか道がなかったんだよ。反逆者の子供にはな」
俺は獄卒に反論した。
「威勢のいい小僧だな。拷問されて死にたいのか」
獄卒は面白そうに俺を見て言った。
「ふんっ、拷問するなら拷問しろ。殴るのなら殴れよ。どのみち俺はもう死ぬしかないんだ」
俺は開き直って言った。
「そうか、じゃあ望み通り殺してやるよ」
男は剣を抜くと俺に向かって突き刺した。
俺は逃げることもせずにその剣で死のうとした。
やっと死ねると思ったのだ。
ブスッという音がして俺を縛っていた縄が解けた。
「少しは度胸があるようだな」
獄卒は俺を見て不敵な笑みを浮かべた。
「な、何故縄をほどいた?」
俺は驚いて聞いた。
「ふんっ、その度胸に免じてもう一度生きる希望をやろう。もう一度かかってこい」
男はそう言うと俺に魔術をかけたのだ。
それも転移の魔術を。
俺は地面に落ちるような感覚に襲われて、気を失っていたのだ。
俺が飛ばされた先は前王妃、アンネ様の遠い親戚のヴァルドネル伯爵領だった。
そう、生き残った最後の正統派と呼ばれる伯爵の下に転移させられたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
鋭意連載中の
『ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語』
https://ncode.syosetu.com/n0185hu/
明日朝完結です。
まだお読みでない方はぜひともお読み下さい。





