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母を取り戻すために馬車ターミナルに行きました

母が拐われた。

私には何故母が拐われなければならないのか、意味が判らなかった。平民の母を拐ってどうしようというのだ? 私の家は平民で身代金を払うお金など殆どない。

皆の嫌がらせで、母を拐ったのだろうか? でも、わざわざアベニウスまで人を派遣して拐うとなると、とんでもない手間と時間がかかる。そんな事するくらいなら、私を拐かしたほうが早いだろう。


聖女がやったみたいに、人に頼んでも良いのだ。

この前私を襲わせて上手くいかなかったから、今度は母を拐ったというのだろうか?

私にはこの意味は良く判らなかった。



私は取り敢えず、着換えて教室に戻った。


「どうしたの? アン。授業に遅刻して」

授業の後にドーソンが聞いてきた。


「ちょっと部屋に忘れ物をしてしまって、取りに行ったのよ」

「それなら良いけれど、B組の奴ら、動きが怪しいのよね。何だったら絞めるから、酷いことされたら、ちゃんと言ってよ。男どもは当てにならないから」

ドーソンが言ってくれた。うーん、ドーソンに絞められたら、クリスティーン様ほどではないにしても、大変なことになるのは目に見えていた。まあ、まだ我慢出来るから、取りあえずは黙っていてあげようと思った。


「いや、そんなことはないぞ」

「ルンド先生が席替えのことを言ったときも、アンを庇わなかったじゃない」

アルフが言い訳するが、ドーソンはそれを一刀両断した。

「・・・・」


「あのう、アンさん。俺は母にはっきりと言うよ」

その後ろからフィル様が乗り出してこられた。


「あのう、殿下」

「フィル!」

「何言っているんですか。王妃様に殿下とは話すなとアンは言われているんですよ。そんなの言えるわけ無いでしょう」

ドーソンがはっきりと言ってくれた。


「判った。その点も含めてはっきりと言ってくる」

フィル様はそう言って、立ち去ろうとされた。


「で、殿下!」

私は思わずフィル様に頼ろうとしてしまった。


「どうかした? アンさん」

フィル様は私を心配そうに見てくれた。私はその姿を心の中に焼き付けることにした。

そう、ここはフィル様を巻き込んではいけない。私は心の中で首を振ったのだ。


「なんでもありません。今までいろいろとありがとうございました」

私はフィル様に頭を下げた。


「えっ、ちょっと待って。俺は君を諦めたわけではないからね」

「すいません。何を仰っていらっしゃるか良く判らないのですが」

諦めたわけではないって何をだ?


「殿下。そう言うことは王妃様を納得させてから言ってもらえますか」

「本当に最低ですよ」

ドーソンやメリーがなにか言っているけれど・・・・。


まあ、私がフィル様を見るのが最後になるかもしれないから、一応お礼を言っておいただけなのだ。


「俺は必ず、母を納得させてくるから」

殿下はそう言って慌てて出て行かれた。


殿下のきれいな金髪を靡かせて・・・・。


私は教室もグルッと見た。


3ヶ月弱ここで授業を受けたのだ。


もう見納めかもしれない。


部屋に帰るとエルダとイングリッドに置き手紙を残した。

彼女らが帰ってくるのは3日後だ。

でも、私がもし授業に出なかったら誰かが見てくれるだろう。

私は脅迫状も同じように置いておいた。


そして、私は部屋に鍵をかけると馬車ターミナルに向かった。


本来なら、ガーブリエル様に相談するのが筋かもしれないし、最善の策かもしれないけれど、敵はどこから見ているか判らなかった。何しろ女子寮の中にも平気で入れるくらいなのだから。

母の命はなんにも増して大切だった。



私はスクール馬車で待ち合わせの所まで行こうとした。

「やあ、お嬢ちゃん。今日はどうしたんだい?」

顔見知りになった御者さんが私を見て聞いてきたくれた。


「田舎から母が出てくるの。それを迎えに行くのよ」

私は御者さんに嘘をついた。でも、私がいなくなったと知れば皆調べるだろう。その時にこう言っておけば、母のことも調べくれるだろう。

「そうか。良かったね。お母さんと会うのは久しぶりだろう」

御者さんが言ってくれた。

「まあねこの前の球技大会を見に来てくれたんだけど、その時色々話す暇もなくて」

「そうなんだ。お母さんは王都内のホテルにでも泊まられるのかい」

「多分そう」

「多分そうって、外泊届は出してきたんだろう。書くところがあったはずだけど」

えっ、そうなんだ。知らなかった。


「今日は遅くに帰るから大丈夫よ」

「そうなのかい。せっかく会えるのに」

「母も忙しい人だから」

「残念だな。最終は20時だからね。遅れないようにするんだよ」

御者さんは親切に言ってくれた。


「着いたよ。お嬢ちゃん。馬車はもう着いているんじゃないかな?」

親切にも御者さんが言ってくれた。

母は実際はその馬車には乗っていないのだが。


「ありがとう。探してみるわ」

私は御者さんにお礼を言って馬車を降りた。


ゆっくりとターミナルを歩く。


母を連れて相手はこんなところに来るだろうか?

おそらく母を何処かに監禁して、私だけを連れ去ろうとするはずだった。

ここに連れてきてくれればまだやりようはあるが・・・・。

私は周りを見回した。


私と一緒に降りた、上級生が私の後ろに来た。


「右手の馬車に何も言わずに乗れ」

そして、囁いたのだ。

右手の馬車の扉が開いた。


私は後ろの男に押し込められるように中に乗せられたのだ。


中にはにこやかに笑うベントソン商会会長がいた。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

黒幕の登場です。

果たしてアンの運命やいかに。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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