球技大会に向けて準備に入りました
そう、前から気になっていたんだけど、このゲーム、何処か変になっている?
だって攻略対象ナンバーワンのフィル様が私を守るって、私がヒロインの位置にいない?
いやいやいや、待って! そんなことはないはずだ。私はゲームに出て来ないモブにすらなれない平民Aなのだ。
それに元々ゲームは2学期から始まるはずだ。聖女がヒロインとして転入してきてから始まるのだ。そもそも聖女はフィル様と同じA組に転入してくるのだ。そして、フィル様と仲良くなって悪役令嬢のアンネローゼに虐められれるのだ。
今はまだ一学期。本来ゲーム開始前だ。しかし、悪役令嬢のアンネローゼはいないし、聖女も既に転入してきた。
うーん、これから1学期かけて、フィル様とヒロインの聖女が仲良く・・・・なれるのか?
だって、フィル様は私を庇ってくれたし、何か聖女を見る目が冷たいんだけど・・・・
フィル様が私をかばう様子を見て、聖女は更にヒートアップするし、生徒会長からは早く入れと注意受けるし、なんか前途多難だ。
果たしてどうなるんだろう?
ひょっとして私、ゲーム前に怒ったヒロインに断罪される平民Aなんだろうか? それとも教会に魔女と破門されて火炙りにされるとか?
それやこれや考えると、私には不安しか残らなかった・・・・・
私の不安を無視して、会議の前の資料が配られた。
「はい、アンさん」
「あっ、ありがとうございます」
フィル様は私にだけ一冊取って渡してくれると、残りを私を飛ばしてアルフに渡していた。
いや別にそれくらいの量は私でも持てるのにと思わないでもないんだけど・・・・
まあ、フィル様が私のためにやってくれたことは嬉しいんだけど、後ろの聖女の視線が怖い!
「えっ、人形作ってやるんだ」
イングリッドの声に私は慌てて、書面をめくった。
「なるほど。これなら、土魔術の生徒が多いB組が喜んでいるわけだな」
「でも、これって結構魔力量食うよな」
「一人で出来るのかな」
「下手したら2、3人で1体作るって感じじゃないかな」
私を飛ばして3人で話してくれる。
「アンさんが人形を作ると、とても小さな人形になるのかな」
フィル様が振ってきた。
「えっ、私ですか」
うーん、私はどうなるんだろう。
「アンの人形ってめちゃくちゃ小さいくせにメチャクチャ力持ちなんじゃない」
「ああ、あり得る」
「そ、そうかな」
イングリッドとアルフが好きに言ってくれたんだけど。まあ、それは作ってみないとわからないけど。人形ならば攻撃魔術でないし、動かないから作ってもいいよね。
私はそんな事を考えながら、生徒会長の話を聞いていた。
そして魔術実技の授業で、私はガーブリエル様と一緒に人形作りに挑戦した。
まずは火で作ってみる。
「出でよ、人形」
小さい火の玉くらいの人形が現れる。なんか見た目の感じが私そっくりだ。
「あっ、出来ました」
私は喜んで言う。
「取り敢えず動かしてみよ」
私は出来たミニアン人形を動かしてみる。
まず歩かせる。
ゆっくりと歩いた。でも本当にゆっくりだ。
「もう少し早く出来るか」
「早くですか」
ガーブリエル様の声に、私は出来る限り早く動かすがそれでも牛歩だ。
次は風。
「風魔術で人形なんて出来るんですか」
「つべこべ言わずに作ってみよ」
ガーブリエル様の怒った声に慌てて手を掲げる。
ガーブリエル様はご自身が答えられない質問された時とかは、怒り出すのだ。私も結構学んできた。
「出でよ、人形」
つむじ風で人形をなんとか出現させる
「あっ、出来ました」
私が喜んで言った。
でも、その瞬間、四散した。
「意識を集中させよ」
ガーブリエル様に叱責される。
「すいません。もう一度」
「いや、次は水じゃ」
「えっ、水ですか」
私は慌てて心のイメージを入れ替える。まあ、一瞬で壊れてしまったのだ。ガーブリエル様も風は諦めたみたい。
そうやって、次々にやると、水の人形は結構形は保ったが、やはり土が完璧だった。
形も一番はっきりしていたし。
動きもまだ一番ましだった。
「よし、土じゃな。それでじっくり練習してみよ」
「判りました。ありがとうございます」
でも、メチャクチャ小さいんだけど、これで役に立つんだろうか?
「それとアン、人形の胸の部分が大きすぎる。人形の手を動かす時に当たるぞ」
「えっ、すいません」
私は思わず謝った。
「自分の胸の大きさくらいにすれば良かろう」
「・・・・」
そのガーブリエル様の言葉に私は言葉もなかった。
ちょっと自分の願望を入れすぎたんだろうか?
でも、ガーブリエル様も言い方がひどくない? まあ、デリカシーが無いのはもとからだけど・・・・。
ふんっ、いずれは大きくなるもん!
私は心に誓ったのだった・・・・
このお話、忙しい中、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます!
次から球技大会へ向けてどんどん更新していくので宜しくお願いします。