隣のクラスとクラス対抗戦でトイレ掃除をかけて戦うことが決まりました。
聖女の陰謀で王妃様らに虐められそうになったあと、みんな、やたらと過保護になってきたんですけど。先週の日曜日の王宮との往復は本当に大変だった。
フィル様もお忙しいのに、私を送り迎えすると言って頂けて、私は単純に嬉しかったけれど、王太子殿下にそんな事やってもらったって、皆に知られたら更になんて言われるか判ったものではない。それに魔道士団長もいるし、イングリッドとか馬車3台もいたのには驚いた。
まあ、今後のこととか言って3人でなにか相談していたけれど、私は乗合馬車でいいのだけれど・・・・。
そんなこんなで疲れてしまったんだけれど、授業が本格的に始まって予習復習が結構大変になってきた。授業中に覚えられるものは全て覚えてしまおうと、今日の午前中は結構集中してしまった。
やっとお昼だ。そして、最近はもう7人で食べるのが普通になってしまった。
「今日は放課後は委員会でしょ」
「クラス対抗球技大会についてよね」
「いいなあ、クリストフ様も出るんでしょ。私は図書委員会だから行けないし」
エルダが残念そうに言う。
「球技大会の件で集まるだけだから、実際には話せないわよ」
「でも、いいな。イングリッド代わってよ」
エルダが羨ましそうに言う。
「いやよ。私はこの球技大会に燃えているんだから。今回の目標は学園での優勝だし」
何故かイングリッドはやる気満々になっていた。
「なんか今年はやり方を少し変えるみたいだよ」
フィル様が教えてくれた。
「あっ、そう、お兄様もそんな事言っていたわ」
「どんなふうに?」
「それは秘密だって教えてくれなかったわ」
「まあ、今日の放課後には判るよ」
確かにフィル様の言う通りだ。
「そうね。でも、勝つためには、それにそろそろクラスの団結を固めないと」
イングリッドが言い出した。
「クラス委員、宜しくお願いするわよ」
そして、いきなり私に振ってきたのだ。
「えっ、そんな、無理よ」
私は女性陣をまとめられる自信は無かった。
「なんとかなるわよ。そのためのフィルだし」
「まあ、アンさん、一緒に頑張ろう」
フィル様が頷いてくれた。
その言葉は嬉しいけれど、色々あった私にはハードルが高すぎるようにみえるんだけど。
「まあ、アン、私達が助けるから、なんとかなるわよ」
でも、エルダの言葉は気休めにしかならないような気がしたのだった。
このクラスはクラスの約半数は女性で、平民は私とメリーさんだけ。この前の件は、メリーさんは謝ってくれたけど、それでもまだ完全に仲良くない。他は全員お貴族様で、フィル様と一緒にいる私にいい印象は持っていないはずだ。特にドーソンさんとか・・・・。
私は頭が痛くなった。
授業が終わり、私達クラス委員と体育委員の4人は会議室に向かった。
入り口はたくさん人が集まってきて混んでいた。
ダンッ、私は人にぶつかられた。
思わず弾き飛ばされて、フィル様に抱き止められる。
「大丈夫か」
フィル様が聞いてくれた。
「はい、すみません」
私は思わず赤くなった。
「おい、女の子にぶつかったなら謝れよ」
アルフがその男に言ってくれた。恐らくB組の男だ。
「ごめんよ。ぼうっとしている平民の子を弾き飛ばしてしまって」
男が言った。
「おい、貴様、学園内では、身分に対して差別は禁止だが」
ムッとしてフィル様が言う。
「これは殿下。いつも平民の女を傍においてさぞお楽しいでしょうな」
えっ、彼はフィル様を前にしてもびくともしていない。
「き、貴様、殿下に対してさすがに不敬では」
アルフが言うが、
「ほーー、学園内では身分差による差別は禁止なのでは」
その横の男もアルフの揚げ足を取って言う。
「ちょっとあなた達、さすがに殿下に対して失礼よ」
「しかし、聖女様」
ピンク頭が出てきた。
「ちょっと、私達のクラスは気が立っておりまして、申し訳ありません。皆私が蔑ろにされたと気が立っておりますの」
聖女が嫌味を言う。
「別に蔑ろにはしていないが」
「よくおっしゃいますね。聖女様のことは見向きもしないで、隣の平民の女ばかりに構っておられるではありませんか」
「あーら。それはそちらのヒールが使えないニセ聖女様よりも、アンのほうが魅力的だからではありませんこと」
そこにイングリッドが参戦してきた。
「な、何だと」
「ヒールが使えなかったのはあなたのいたずらだったからでしょう」
「そうだ。卑怯だぞ」
もう、聖女も皆も関係なしに4人で文句を言ってきた。
「ふんっ、いたずらかどうかも気が付かないなんて、聖女の名前が泣いているけど」
「何ですって」
聖女はもう切れていた。
「いくら侯爵令嬢だろうと言っていいことと悪いことがありますわ」
隣の伯爵令嬢が言ってきた。
「ふんっ、良いのです。レーア様。大きな口を叩いていられるのは今のうちですわ。今回のクラス対抗戦私達1年B組が勝たせてもらいますから」
「あはははは。今の話だけは聞いておくわ。でも、絶対にこのA組が勝たせてもらうから」
聖女に対してイングリッドが高らかに宣言した。
「イングリッド様、口ではなんとでも言えますわ。もしA組が負けましたらどうしてくれるのですか?」
「そうしたらA組の委員のあなた達が1日私の言う事を効くというのはどうですか」
聖女が言い出した。
ええええ! そんな事したら私はどんな生き恥をかかされるか判ったものではなかった。私がさあっと青くなる。
「なんでそんな事をしなければいけないのだ」
アルフが言ってくれた。
「そうだ。負けたほうがトイレ掃除を1ヶ月やるというのはどう?」
イングリッドが提案してくれた。
「えっ、またトイレ掃除!」
聖女は嫌そうな顔をした。きっちりとやらされているらしい。
「へーーー。やっぱり勝てる自信がないんだ。まあ、我がAクラスにBが勝てるわけないわよね」
「なにを」
イングリツドの挑発に聖女は赤くなった。
「ふんっ、今回は我がクラスに有利なのさ」
「絶対に勝てるさ」
B組は自信満々だった。既に内容を知っているみたいだった。良いんだろうか。そんな賭けに乗って・・・・。
「判ったわ。その勝負乗りましょう」
しかし、聖女が頷いていた。
「あんた達の泣きっ面が楽しみだわ。絶対にあんた達にトイレ掃除させてあげるわ。あの苦しみ、味わいなさい」
聖女が歯ぎしりして宣言してきた。
「おいおい、なんか実感こもっているな」
アルフが言うと、
「煩いわね。誰のせいでこうなったと思っているのよ」
その怒り狂った目が私を睨んでいるんだけど・・・・
「ふんっ、安心しなさい。もう一度同じことをさせてあげるわ。今度は学園だからね。横でじっくりと指導してあげるわ」
笑ってイングリッドが言った。ちょっとあんまり挑発するの止めてよ。何か聖女が私を睨む視線が怖いんですけど・・・・。
「ふんっ。同じ言葉そのまま返してあげるわ。そこの赤毛女。平民モブのくせに殿下の横にいるなんて、許せない。絶対にトイレ掃除を嫌ほどさせてあげるわ。ようく、今から覚悟しておきなさい」
私を指さして高らかに宣言してくれたのだ。
皆、見ているのに何宣言してくれているのよ。私はもう青くなっていた。
「パウラ嬢、人を指差すのはよくないよ」
でも、その私の前にフィル様が出てくれて私を庇ってくれたのだ。えええ、なんかこれゲームであったような。
「な、なんという・・・・」
それを見て聖女が更にヒートアップしている。
そうだ、ミニゲームの前でなぜか知らないけれど、悪役令嬢がヒロインに対して高らかに宣言するのだ。そのミニゲームに勝つとフィル様との仲が良くなるけれど、負けると悪役令嬢に虐められるやつだ。
本来は私の位置にヒロインの聖女がいて、聖女の位置にアンネローゼがいるんだけど。
ええええ! 私完全にヒロインポジションにいるんだど・・・・何故に?
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
いつの間にかモブにもなれなかったアンがヒロインに?
次は今夜更新予定です。
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