聖女視点3 ヒロインなのにモブ以下の平民に勝てなくてトイレ掃除をさせられる羽目になりました もう絶対に許しません
な、何故だ!
私はヒロインのはずなのに。モブですらない平民を排除出来ない。
アン・シャーリーとかいう赤毛に勝てないのだ。何故だ? ここは赤毛のアンの世界ではないはずだ。カナダでもないし、プリンスエドワード島でも無い。
こんな名前の奴はゲームには登場しなかったはずなのに・・・・。
やたらと王太子が赤毛を構うのだ。何故だ?
それに、本来私のお助けキャラだったエルダとイングリッドは完全に赤毛のお助けキャラになっている。私が冷たくしたからだろうか? よりを戻そうにも完全に敵視されているのだ。
その兄弟の攻略キャラのはずの生徒会長も副会長にも私は無視されている。話しかけることすら出来ていないのだ。突撃してもあっさりかわされているし・・・・。
モブに近いベッティルにさえ、
「あああ、イングリッドのいたずらに気づかなかった聖女様」
とバカにされる始末だ。
「あなたも大変ね。同じ平民なのに、殿下は赤毛ばかり構って、他のお貴族様からも同じ平民だからと白い目で見られるし」
「そうなのよ。あの子、平民のくせに私なんか目にも止めないのよ」
同じ平民で金持ちのメリーに同情するとメリーも愚痴ってきた。
「私、その赤毛に、聖女だからと虐められているの」
と言うとあっさり信じてくれて、アンの筆入れを隠すことに応じてくれたのだが、上手くいかなかったみたいだ。
もう、こうなったら大人の力を借りるしか無いと、人の良さそうな大司教の前で泣いて見せたら、心配して聞いてきた。
「大司教様。私、学園で虐められていて」
「そ、そうなのですか」
「せっかく大司教様に頂いた教科書とかビリビリに引き裂かれて、私もう、やってられなくて」
「な、なんと」
「相手の女は王太子殿下のクラスメートで、王太子殿下といつも一緒にいると自慢してくるのです」
「殿下はなにか仰っていらっしゃいましたか?」
「殿下は私のことなんて全く無視して、話も出来ていないんです。なんかいじめられるのは私が悪いみたいな感じで」
「なんと、聖女様をそこまで蔑ろにされるとは。判りました。王妃様にご相談してみましょう」
大司教はちょろい。簡単に私の言葉を信じてくれたのだ。まあ、ヒロインなのだから当然なんだけど。そう、そこまでは上手く行ったのだ。
王妃様の前で泣いて見せたら、すごく王妃様が怒られて、すぐに女官長が赤毛を引っ張ってきてくれた。
そうここまでは・・・・。
徹底的に赤毛をいたぶってやったのだ。今までの恨みだ。
王妃も大司教も女官長も味方だ。ここはもう断罪するしか無い。
しかし、だ。私の思い通りに行くのもここまでだった。
いきなり扉が破壊されたのはびっくりした。
もう腰が抜けそうになった。
そこには野蛮爺さんが立っていたのだ。
その登場に立場はたちまち逆転してしまったのだ。
その爺さんの言うことに誰も反論しないのだ。
何故、王妃は偉いんじゃないの? 大司教も。このままじゃ赤毛が連れ去られるじゃない。私がここまで努力したのも水の泡。それは許せない。
「えっ、そんな。何勝手に連れて行こうとしているの」
私は横から叫んでいた。
でも、それは間違いだった。私は逆らってはいけない、野蛮人に逆らってしまったのだ。
その瞬間だ。野蛮爺さんの目が光った。
光線が私の目の前を過ぎて窓ガラスにぶち当たる。
ガンガラガッシャン! 一瞬にしてガラス窓が木端微塵に割れた。
わ、私の目の前を光線が・・・・・
私は顔色が真っ白になってしまった。
赤毛はあっさりと連れ去られてしまったのだ。
その後怒り狂った王太子が現れたのだ。
「いや、殿下、私、アンさんに虐められて」
「そういうふざけたことを言って俺の貴重な時間をつぶすな」
「そんな」
「殿下、聖女様の言葉を信じられないのですか」
大司教は私を援護してくれるが、
「じゃあ、それをガーブリエルの前で言ってもらおうか。ガーブルエルの前で同じことを話してみろ」
「そ、そんな、私、怖いです」
それは真実なのだ。あの野蛮人の前だけは嫌。次は絶対に丸焼けにされる。
あの爺さんは常識が通用しないのだ。
動揺したのか私は言葉も上手く話せなくなり、メリーの裏切りもあって、結局私が断罪されてしまった。
なんか大司教も怒ってしまって、私は今、トイレ掃除をさせられている。
このゲームのヒロインで聖女様の私がだ。
「ほら、手が止まっていますよ」
私につけられたシスターは厳しいと評判のおばちゃんだった。私のいちばん苦手なタイプだった。
「ほらっ、さっさと手を動かす」
私は仕方なしにモップを動かしだした。必死にやっているふりをしながら目は怒りに燃えていた。
おのれ、あの赤毛、絶対に許さん。絶対に地獄に落としてやる。
このヒロイン様にそこまで思わせたのだ。私は心の中で赤毛をギッタンギッタンにしながら、トイレ掃除をさせられたのだった。
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さて、聖女の怒りはどうなるか。次回は明朝更新予定です。