大魔術師に助けられました
扉が四散したところに立っていたのはプッツン切れていたガーブリエル様であった。
「アン、お主、儂との約束の時間に来ないとはどういう事だ」
そうだ。忘れていた。ガーブリエル様との訓練に来たんだった。
「申し訳ありません。ガーブリエル様。無理やりこの部屋につれてこられまして」
私はそう言うしか無かった。
「カーブリエル。あなた」
扉を壊された、王妃様は唖然としていた。
「妃殿下。儂の貴重な時間を無駄にしていただいたのはまさか貴方様ではありますまいな。儂は貴重な研究の時間を割いて、このアンの教育をしておるのですぞ」
ガーブリエル様の怒りの言葉に王妃様は目を白黒した。
「いえ、あの、大司教から意見が出まして」
「大司教!」
王妃様の言葉に、ギロリとガーブリエル様は大司教を睨みつけた。
「いえ、その、うちの聖女が虐められたと」
「それがどうかしたのか! 貴様、そのようなどうでもいい理由で儂の貴重な時間を教会が邪魔すると申すのか」
「いえ、滅相もございません」
大司教が震え上がっているんだけど、ガーブリエル様の前では聖女の自作自演もどうでもいい理由になるんだ!
えっ、ガーブリエル様って大司教よりも偉いの? 私は改めてガーブリエル様を見た。
「なら、良いな。アン、行くぞ」
ガーブリエル様は私の手を引いて歩き出そうとした。
「えっ、そんな。何勝手に連れて行こうとしているの」
聖女が横から叫んでいた。
その瞬間だ。ガーブリエル様の目が光った。
光線が聖女の目の前を過ぎて窓ガラスにぶち当たる。
ガチャン!
一瞬にしてガラス窓が木端微塵に割れた。
「なにか申したか。小娘」
ガーブリエル様は立ち止まるとギロリと聖女を睨みつけられた。
「ヒィィィィ」
思わぬ殺気に聖女が尻餅をついた。いつもは誰とでも平気に話してくる聖女も、ガーブリエル様の怒りの前では形なしだった。
「そこの小娘、なにか用があるのかと聞いておる」
ガーブリエル様が再度ピンク頭に怒声を浴びせた。
「いえ、ガーブリエル様。なんでもございません」
震えて声も出ないピンク頭に代わって大司教が答える。
「大司教。アンは我が弟子じゃ。我が弟子に用がある時はまず儂を訪ねよ。良いな」
「はっはい」
大司教は思わず頭を下げていた。
「ヴィルマル」
「はっ」
ガーブリエル様に呼ばれて、後ろにいた魔導師団長が礼をする。
「今回の落とし前、どうつけてくれるか、貴様が大司教と王妃様と詰めよ」
「私がですか」
「当たり前じや。貴様が出来ん場合は儂が出る。良いな」
「はっ」
魔導師団長は頭を下げた。
「アン!」
そこへ爆発に驚いたのか、フィル様が駆けてきた。
「これは殿下遅いお着きですな。あの毛虫がアンにちょっかいを出しておりましたが」
「毛虫とは聖女のことか」
「言わずもがなでしょう。その毛虫を殿下が抑えられないなら、アンに近付くのは止めていただきたい」
そう言うとガーブリエル様は一瞬で、私を連れて訓練場へ転移されたのだ。
後はどうなったかはわからないが、フィル様は見た感じ切れていた。あとを任された魔術師団長とともに、無理難題をふっかけたのではないかと思う。
訓練場で、まず、
「ありがとうございました」
私が頭を下げると
「何をしておる。すぐに訓練に入るぞ」
ガーブリエル様は首を横に振って言われた。
「あのような、者共は一撃で黙らせろ」
「そんな、一撃で黙らせろと言われましても、魔術の使用禁止では無いのですか?」
「まあ、そうであったな。それにその方の小さい魔術では脅しにもならんか。と言って使ってしまっては大惨事が起こるし。まあ、儂があれだけ言ったのだからしばらくは大丈夫だとは思うが」
ガーブリエル様はそう言うと色々と考えてくれた。
「まずは光じゃ」
ガーブリエル様は構えて、
「フラッシュ!」
ピカッと光って私は視界が真っ白になってしまった。
「えっ」
目を押さえてその場にしゃがみこむ。
「うーん、強すぎたか。ヒール」
「えっ?」
ガーブリエル様がヒールが使えるなんて私は驚いた。
真っ白になった私の視界はあっという間に元に戻った。
「何を驚いておる。儂はオールマィティ。すべての属性が使える」
「凄いです」
私が素直に褒めると、
「何を他人事のように言っておる。その方もオールマィティだろうが」
「えっ?私も使えるんですか?」
「当然じゃ、教会が煩いから使えない振りをしておるが問題無く使えるぞ」
ガーブリエル様が笑って言ってくれた。嘘ーーー!。私もヒールが使えるの?
「本当ですか?」
「ただし他人には秘密にしておけ。バレると教会に引っ張られかねん。それは時間の無駄じゃからの」
私はコクコクと頷いた。
「では儂がやったフラッシュをやってみい」
「はい」
カメラのフラッシュの要領だろうと思って、目をつぶって「フラッシュ!」
と叫んだ!
私は目を瞑っていたので良く判らなかったんだけど、ミニ太陽が地上に現れたくらい光ったらしい。
数秒経って目を開けるとガーブリエル様が目を押さえていらっしゃった。
ええええ!これはヤバイ!
「ヒール」
私は思わず叫んでいた。
「アン、貴様今のは本当に死ぬかと思ったぞ」
私のヒールで目が治ったガーブリエル様が叫ばれた。
「すいません。強すぎましたか?」
私は頭をかいた。誤魔化すしか無い。
「だ、大丈夫ですか?」
そこへ魔術師団長が飛んできた。
「いやあ、また、アンの魔力だ」
「本当ですか?太陽が地上に現れたくらいの明るさでしたよ」
ほっとして魔術師団長が言う。
「本当に限度が見えん奴じゃて」
ガーブリエル様は何がおかしいのか笑い出された。
いやいやいや、これも使っちゃダメな奴ですよね。これじゃ大騒ぎどころでないでしょう!
その後フィル様とか騎士とか一杯飛んで来たし。
その後も、私はガーブリエル様に言われて、魔術を片っ端からやってみる。が、なかなかしっくり来るものがなかった。
帯に短し襷に長しなのだ。全く効果の無いものもあり、効果がありすぎるものがあった。
脅しで建物が爆発したらどうしようもなかった。
「まあ、アン、良いわ!いざと言うときは火の玉を出せ。
その爆発で我々は駆けつけられる」
ガーブリエル様は気楽におっしゃっていらっしゃるけれど、まさか王妃様相手に火の玉を出すわけにはいかない。まあ、そう言う時は素直にお小言を聞いておいて後でガーブリエル様に相談しようと私は思った。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ピンク頭の策大魔術師の怒りの前に不発。でも、まだまだ諦めません。
次の策は?
そして、そろそろアンの周りにも不穏な影が・・・・・
明朝更新予定です。





