敵の大半を撃破しました
ガーブリエル様としてはこの機会に不満分子を一掃してしまいたかったみたいだけど、国というものはいろんな考えの人の集まりなのだ。ヤルモさんが伯爵に不満を持ったからと言って全部抹殺していたら人はいなくなるし、私は前世は元々日本人だからかあまり人は殺したくない。甘いといえばそれまでだが。それにまだ、私が王女としてやっていくと決めたわけでもなかった。
私は今はまだ聖女アンなのだ。
「聖女アン様。大丈夫ですか」
伯爵が大きな体を揺らしながら駆けてきた。
「私は何かとか大丈夫です。伯爵様は大丈夫ですか」
「私はなんとか。ブルーノが攻めてきたようですな」
「そうなんです。伯爵様。こちらは私の師のガーブリエル様です。ガーブリエル様。こちらがヴァンドネル伯爵様です」
私はガーブリエル様と伯爵にそれぞれを紹介した。
「オースティンの大魔術師様ですな。アンネ様の師だった方ですな」
「そうじゃ。伯爵はアンネをご存知か」
「はい。一度お見かけしたことがございます。結局ブルーノの反逆を防ぐことは出来ませんでしたが」
残念そうに伯爵が言う。
「それは儂も同じじゃ。あの男、此度こそは絶対に許さん」
「ガーブリエル様もブルーノに対抗していただけますか。そうなると百人力ですな」
「まあ、それもそうじゃが、それよりも、今降り掛かっておる攻撃を至急対処せねばならんて」
「そうですな。直ちに騎士団に対処させましょう」
「それだけでは足りまい。儂らも戦場に出よう」
「しかし、危険では」
伯爵は心配そうに聞いてきた。
「この状況では仕方あるまい。敵の主力はどこにいるのじゃ」
「恐らくここかと」
家令のヤルモが街の西口を指差した。
「アン、行くぞ」
「判りました」
私は頷いた。
何か言いたそうな伯爵を残して、次の瞬間には転移で西口の前の二階建ての家の屋根の上にガーブリエル様と転移した。
私達の目の前にはこちらに向かってくる大軍が見えた。
ムオニオの村の軍勢よりはるかに多い。
「アン、真上に火の玉を上げよ」
「真上にですか」
私は意味がわからずガーブリエル様に聞くが
「そうじゃ」
ガーブリエル様が頷いたので、そのまま、真上に火の玉を上げる。
ポヨンポヨンポヨンポヨン
真上に向けてのんびりと火の玉が上がった。
「次は敵の前目指して左から火の玉を5連射」
「前目指して火の玉を5連射します」
左の敵の前から火の玉を5連射する。
これもポヨンポヨンポヨンポヨン飛んでいく。
「真ん中へも5連射じゃ」
「はい」
真ん中に5連射する。
「よし、では、前に行くぞ」
私はガーフリエル様の声で下におりた。
「あそこに誰かいるぞ」
「突撃」
「わあああああ」
雄叫びの中で敵兵が剣を抜いて突撃していた。
そこで、やっと頭上に上げた火の玉が光って
ドカーーーーーン
巨大な光の玉が広がる。
ワアアアアア!
後方で兵士の突撃の雄叫びが響いたような気がして私は思わず後ろを見たが、何も見えなかった。
ガーフリエル様は何も気にせずに前を見ているので、後ろのことは無視することにした。
そして、次の瞬間には敵兵の前に放った火の玉に敵が突撃してきた。
ドカーーーン
ドカーーーーン
ドカーーーン
続けざま大爆発が起こる。敵兵を巻き込んで巨大な爆発が起こり、敵兵がその炎に飲み込まれる。
爆発から逃れようとする敵とその後ろから突っ込もうとする敵が押し合う。
そこに続いて
ドカーーーン
ドカーーーン
ドカーーーン
真ん中に放った火の玉が爆発して中央部の敵兵が巻き込まれる。
前衛と中央の多くの兵士が、爆発に巻き込まれていた。
敵兵は大混乱に陥っていた。
しかし、その時だ。後ろの伯爵邸の方で爆発が起こった。
「ん、どうしたのだ」
ガーブリエル様が後ろを振り向いて不審がられた。
「まず前か、爆裂魔術」
ガーフリエル様がなんとか体制を立て直そうとしていた敵の中心部に向けて魔術を放つ。
ズドーーーーン
敵の中央部が爆発に包まれる。
「アン、敵兵の前に火の玉5連射」
「はい」
なんとか体制を立て直して突っ込んでこようとする敵兵の前衛の残りに向けて火の玉を5連射放つ。
「ここはこれくらいで敵も後退するじゃろう。伯爵邸が心配じゃ。直ちに戻るぞ」
「判りました」
後ろの遠くで大きな音が聞こえているのでそれも心配で私はガーブリエル様について戻った。
ここまではうまくいきましたが、次は最強の敵ブルーノの登場です。
明朝更新予定です。





