大魔術師が私の元に来てくれました。
戦いは取り敢えず終わった。
ムオニオ村を攻撃してきたブルーノの軍を撃退したのだ。
司令部をミニアンちゃんに攻撃されて破壊されて指示するものがいなくなったので、敵は這這の体で逃げ出したのだった。
よく、この大半がにわか作りの兵士100人くらいで数千人の敵兵力を撃退できたと思う。
司令部を叩けたのが大きかったのだろう。
「アン、凄いじゃないか」
アルフが私を見つけていってきた。
「アン。動きが早すぎる。もう少しゆっくりと前に進んでほしいんだけど」
「裏切り者のフィルが何か言っているけれど」
ミニアンちゃんがボソリと言う。
「だから俺は裏切っていないって」
ムッとしてフィル様が言い返すんだげと・・・・
「ふんどうだか。貴族はやることが卑怯だからね」
アーロンがフィル様を睨んでいっているんだけど。
「それよりも、アン、敵はこの村だけを襲ってきたんだろうか?」
ルーカスが聞いてくる。
「他にも攻撃しているんじゃないかと言うのね」
「ブルーノとヤルモが手を組んだのかどうか、気になるんだ」
「ミニアンちゃん。どうなっているか見てきて」
「本当にもう、人使いが荒いんだから。それと私は鉄仮面だから。間違えないでよね」
ブツブツ言いながらミニアンちゃんが転移して行った。
「えっ、何かミニアンちゃん、言葉遣いがひどくなっていないか。でも、あれってアンが言わしているんだろう?」
アルフが聞いてきた。
「最初はそうだったんだけど、最近は勝手に動くようになったのよね」
私が言うと、
「ひょっとして使い魔みたいになってきたって事だよね」
バートがきいきた。
「使い魔って、そうなのかな」
私が言うと
「凄いなアンは、使い魔を作れる魔術師なんて聞いたこと無いぞ。ガーブリエル様でも無理なんじゃないか、痛い!」
「そこのガキ、何か申したか」
なんとそこにはガーブリエル様が立っていたのだった。
「ガーブリエル様!」
私は驚いて彼を見た。
「アンっ、師匠を置いて、勝手に国を出るなど、どういう事だ! 何故儂に相談せなんだ」
私はガーブリエル様がとても不機嫌なのが判った。この機嫌のときはまず謝るにしかず。ここで下手な言い訳するとお説教の時間が倍以上になるのだ。私は経験上それを知っていた。
「申し訳ありません」
私は取り敢えず、謝った。でも、待てよ、相談しようにもガーブリエル様は相談に行ったのに、いなかったのではないか?
「相談に行ったのに、いなかったくせに、ガーブリエル様は文句だけ言うのね」
いつの間に帰ってきたのか、ミニアンちゃんが私の代わりに言ってくれた。
「な、なんじゃと。儂の前に来なかったではないか」
「魔術の塔に何回か足を運びましたけれど、ガーブリエル様はいらっしゃらなかったんですけど」
私が仕方なしに言うと、
「そうか、儂のところに来たのか。それはすまなかったの」
ガーブリエル様は急に態度を変えてきた。
「これは遠くはなれていても、話し合える、魔道具じゃ」
ガーブリエル様が一つ棒状のものを取り出して私に渡してくれた。皆驚いてそれを見る。そんな便利なものが存在したのか?
「相手を思い浮かべて話してみるのじゃ。アン、聞こえるか」
ガーブリエル様がそう言うともう一つ同じものを取り出した。
「アン、聞こえるか?」
ガーブリエル様の声がその魔道具からも聞こえた。携帯電話みたいなものなんだろうか。
「ガーブリエル様。聞こえました」
私の声もガーブリエル様の魔道具から聞こえる。
「これからは相談する時は儂がいなければこれで相談するのじゃ」
ガーブリエル様が言ってくれた。
「ガーブリエル様。もう一つ無いのですか」
フィル様が聞いてきた。
「これはこれは、アンと婚約破棄したとお聞きしましたが」
ガーブリエル様が嫌味ったらしく言われた。
「ガーブリエル様。俺はアンとは婚約破棄していませんからね。勝手に作らないでください」
「そうでしたか。お母様が勝手に婚約破棄されたのですか」
「母が何を言おうが、俺はアンと婚約破棄するつもりは絶対にありませんから」
フィル様が言い切ったんだけど。でも、オースティン王国の王太子が私と一緒にいるのはよくないのではなかろうか?
「そんなことは後よ。アン、大変よ。大軍が領都に向かっているわ。ここに目て来た軍の5倍位いたわよ。皆松明を手に持っているんだけど、家を放火しながら領都に進んでいるんだけど」
ミニアンちゃんが気付いたように報告してきた。
「ふんっ、小賢しい事を考えよって。大方ブルーノは疫病の人間をこれ以上流行らせないように殺し尽くすつもりじゃろうて」
「そんな」
私はまさかそこまでブルーノがするとは思ってもいなかった。
「ではアンや、今までの訓練の成果をブルーノの軍に見せつけにいこうかの」
ガーブルエル様が言ってくれるんだげと、彼はオースティン王国の大魔術師として有名だ。
「しかし、ガーブリエル様は勝手にスカンディーナの軍を攻撃して良いのですか」
「ふんっ、余計なことは気にせんで良いわ。オースティン王国とは儂は縁を切ってきたのじゃ。これからはアンの師匠として生きてゆくことにしたのじゃ」
ガーブリエル様は豪快に笑ってくれたんだけど。
「でも、ガーブリエル様。私はあなた様に給与なんて払えるだけのお金がないんですけど」
「それこそ余計なことじゃ。私の身くらい自分で何とかするわ。それよりも儂はブルーノには貸しがあるのじゃ。此度はそれを返してもらいに来たのじゃからの」
そう言うとガーブリエル様が盛大に笑われた。
その笑い越えはお星さまもびっくりするくらい夜空に響いていた。





