殺された王妃の娘だと皆にバレてしまいました
私はこの疫病にはヒールは効かないと思っていた。ピンク頭もうまく行かず、私もフィル様にかけたのに、うまくいかなかったからだ。しかし、効いていないと思われたヒルッカさんは寝て起きたら完全に治っていたそうだ。ということは時間差で少し立てば治るということ? 是もピンク頭は1週間以上彼の地でやっていたはずなのに。何故だ?
「性格が悪かったからじゃないの?」
普通にミニアンちゃんが言ってくれるんだけど、そんな事がありえるのか?
というか、ヒルッカさんが治ったんだったらフィル様もあの後、治ったんだろうか?
でも、フィル様はもう、スカンディーナの王女との婚約が決まったのだ。
今更考えても仕方がないことだ。
でも、私のヒールで治っていたら、私、婚約破棄される必要はなかったんじゃないの?
「アン、もうあんな最低の奴らのことなんて考える必要はないわ」
ミニアンちゃんは言ってくれるんだけど、そんなのすぐに切り替えられるわけはないじゃない。最も私がアンネローゼでフィル様の婚約者だって知ってからまだ半年経っていないけれど。
でも、私の心はフィル様にあったのだ。
それをスカンディーナのいや、ブルーノのせいで追い出されてしまったのだ。
フィル様と私の敵のブルーノの娘が婚約者になったってことはひょっとして、フィル様と私も敵同士になったってことだろうか?
そう考えて私は唖然とした。
フィル様が私と戦いに来るの? そんな未来は私には想像できないんだけど。
そんな事になったらどうしよう?
私は呆然とした。
「アン、何言っているのよ。そんな恩知らずのことをフィルがやったら返り討ちにしたら良いのよ。そもそも、可愛いあなたを振るなんてあり得ないわ」
ミニアンちゃんが言ってくれるんだけど。
でも、フィル様と戦うなんて嫌だ。
そんなふうになったら私はもう生きていけない。
でも、オースティン軍がブルーノに言われて攻め込んできたら、どうしよう?
私にはその最悪の未来は想像も出来なかった。
というか、そんな事考える暇もないほど忙しくなったのだ。
私がヒルッカさんを治したことが判ると村長の態度は180度変わったのだ。
下にも置かない歓待ぶりだった。最も食事が少し豪勢になっただけだったが。
「アン様。その、なんとか、他の病人も治していただけないでしょうか」
そう言ってきたのだ。
「あんた、何言っているのよ。さっきまでは後ろ手に縛ってご飯も這いつくばって食べろってアンに言っていたくせに」
私の代わりにミニアンちゃんが文句を言ってくれたのだ。
「あんたたち、そんな事、聖女様に言ったのかい」
かわいそうにハッリさんは奥さん連中皆にシバかれていた。
「いや、これは村長さんに言われて」
「いや、私はそんなことは言っておらんぞ」
言った言わないの争いになっているんだけど。
最近色々酷いことばかりされていたので、私は少し意地悪になっていたみたいだ。でも、病気の人は高熱を出して苦しんでいるのだ。こんなところで不毛なことばかり言っていても仕方がないだろう。
取り敢えず、村長の家に病気の人を連れてきてもらって、私がヒールをかけることにした。
20人くらいの人が布団ごと一同に集められた。
私は皆が元気になりますようにと心の中で祈って、右手を上げた。
「ヒール!」
そう叫ぶと私から皆に金色の光リが飛んでいく。
果たしてうまいこと言ったかどうかは判らないけれど、ある程度はうまくいったはずだ。
「凄い、アンさん」
お手伝いに来ているイリヤが感激して言った。
多くの皆もそれを感激して見ていた。
「これで半日寝てれば完全に治るよ」
経験者のヒルッカさんが太鼓判を推してくれた。
「これも全て聖女様のおかげです」
ヒルッカさんが言ってくれるんだけど、
「ヒルッカさん。私は聖女じゃないので今まで通りアンで良いんです」
「何言っておられるんですか。疫病を治せるのは聖女様だけです。貴方様は聖女様に違いありません」
ヒルッカさんはそう言って聖女様というのを止めてくれなかった。
そんなところへ、多くの蹄の音がして、一団が村長宅にやってきた。
「村長大変だ。伯爵様がいらっしゃった」
「は、伯爵様が。聖女様を見にいらっしゃったのか」
私は村長らの言葉に嫌な予感がした。
「村長。聖女様が現れたというのは本当か」
足音うるさく、伯爵が入ってきた。
「これは伯爵様。ようこそおいでくだされました」
皆が伯爵に頭を下げる。
「それで、聖女様は」
「伯爵様。こちらが赤髪の聖女、アン様です」
村長が私を紹介してくれた。いつから赤髪の聖女になったんだろう?
「これは聖女様。ようこそわが領内においで頂きました」
しかし、伯爵は私を見つけるや頭を下げてきた。
「いえ、そのような、私は単なる旅人で、聖女ではないんです」
私は誤魔化そうとした時だ。
「あ、アンネローゼ様」
伯爵の後ろから声がかかった。
そこには伯爵の息子の二クラスや私の騎士のメルケルが驚いた顔をして立っていたのだ。
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