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王太子にダンスを教わりました

次の授業は礼儀作法の時間だった。


今学期は学園で夏にサマーパーティーが開かれるので、礼儀作法の時間を使って、それまでに1曲踊れるようになる事を目指すようだ。


「どうしよう、エルダ。私、踊ったことなんて全然無いんだけど」

私はダンス室に入る前にエルダにすがりついていた。


「大丈夫よ。先生もいきなり踊れとは言わないわよ」

「でも、殆どの人がお貴族様だから、踊ったことがあるでしょう。無いの私くらいじゃない?」

「商人の娘のメリーがいるんじゃないかしら」

「男連中は5人位、平民出身者がいるわよ」

私はエルダとイングリッドに慰められたけど、それはぬか喜びだったのが直ぐに判明した。



「はい、今学期は学期の終わりにサマーパーティーがあるので、ダンスの練習を主にします。それで、このクラスは貴族の方も多いから最初に聞きますが、全く踊ったことのない人は何人いますか」

こう聞かれたら私は手を挙げるしか無い。おずおずと手を挙げると・・・・他に手が上がらない。


「えっ。私、一人だけ?」

私は唖然とした。

「判りました。シャーリーさんだけが踊ったことがないのですね。ではまず、見本を見せていただきましょうか。では、殿下とオールソンさん。お願いできますか」

「はい」

二人は前に出た。何か、エルダはあんまり乗り気じゃないみたいなんだけど、何故? 私は踊る事が出来たら絶対に殿下と踊りたいのに! 練習したら殿下と踊れるようになるんだろうか?


魔道具の音楽が鳴り出して、二人が踊りだす。もう、二人はすごく上手かった。息もぴったりだった。それに踊るのが優雅なこと。踊った事の無い私にも、それが伝わってきた。


私は見麗しい二人の踊るさまを思う存分堪能した。

二人は踊り終えた時に、ピタリと止まってくれた。


「凄ーーーい」

私は思いっきり拍手をしていた。皆私に釣られたように拍手する。

私はゲームの一シーンを見たように堪能していた。相手はヒロインの聖女じゃないけれど、エルダはモブにもなれない私と違って、ヒロインを張れるほどに整った顔立ちをしているのだ。二人の踊る姿は本当に美しかった。

もう本当に眼福だったのだ。


「もう本当に素晴らしかったわ。エルダ、本当に殿下と息もぴったりって感じだし」

「そうよね。本当にお似合いだったわ」

私とイングリッドが褒めそやす。


「ちょっとそこ二人。違うでしょ。私はまだまだよ。殿下と息なんて全然あっていなかったし」

帰ってきたエルダは私達に文句を言った。


「えええ! そうかな?」

私には良く判らなかった。

「そうよ。アン。あれが息ぴったりに見えるならまだまだよ」

「それは私は踊ったことが無いから良く判らないけれど」


「はいはい、皆さん静粛に」

ルンド先生が手をたたく。皆話すのを止めて先生を見た。


「まあオールソンさんが言うように、まだ改良の余地はありますが、あれだけ踊れれば、良いでしょう! シャーリーさんは今のオールソンさんを目指してね」


「はあ」

私は到底出来るとは思えなかった。


「返事は『はい』よ」

「はいっ」

私は慌てて言い直した。


「じゃあ、皆、アンさん以外はペアを組んで。一度踊ってみましょう!」

「先生、なんならその間、私がアンさんにステップ教えてましょうか?」

「えっ」

私はフィル様の言葉に固まってしまった


「そんな、畏れ多いです」

「そうね。お願いできる」

「判りました」

私の言葉は無視された。フィル様がなんか不敵な笑みを浮かべてくれた。


「さあ、アンさん。人参の時は色々お世話になったからね、今度は俺がお返しをする番だよね」

ヒェぇぇぇ、何かフィル様の目が怖いんだけど。


でも、私なんかがフィル様に教えて頂いて良いんだろうか? 何か周りのみんなの目が怖いんだけど。それにフィル様に少しは慣れたと言っても、実際にこんなに間近で見るととても緊張するんだけど。


「じゃあ、アンさん。まずダンスの基本形からいくよ」

「はい」

なんかメチャクチャフィル様が近いんだけど。


「じゃあまず俺の左手に君の右手を添えて」

「えっ」

憧れのフィル様の手を触るの? そんなの無理。


「さ、早く。恥ずかしがっていてはダンスは出来ないよ」

「は、はい」

私の気持ちなんて関係なしに、フィル様が指示を飛ばしてくる。

私は右手をフィル様の手に添えた。

嘘ーーー! 憧れのフィル様の手に触れた。私は天にも昇る気持ちだった。


でも、それだけじゃなかった。

「そんなに離れていたら、踊れないから、もっと近づいて」

「えっ」

手を添えるだけでも、死にかけなのに、そんなの絶対に無理ーーーーー。


「さ、早く」

強引に抱き寄せられるような感じで、前に出された。


嘘ーーーー、フィル様に、抱かれている! 私は真っ赤になってしまった。

もう死んでも良い!

何しろ夢にまで見た生フィル様に抱かれているのだ。こんなことになるなんて思ってもいなかった。モブですらない平民の少女Aに過ぎない私が、なんと王太子殿下に抱かれるように踊りの練習をしているのだ。

それからが大変だった。それでなくても憧れのフィル様が近いのだ。と言うか、服越しに体が触れるし、手は握り合っているし、もう片方のフィル様の手は肩にかかっているし、もうパニック状態だった。それで、ステップを踏むなんて無理なのだ。

それだけでも、死にそうなのに。これからステップを踏むなんて、そんなの無理。


でも、フィル様はそんな私にも容赦なく、次々に指示を出してきたのだ。


私はもう、恥ずかしいなんて思っている余裕もなくて、フィル様の指示の下ひたすら練習させられたのだった・・・・。






ここまで読んで頂いてありがとうございました。

モブにも転生できなかった平民のアンはついに憧れのフィル様とダンスしました。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

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はこちら

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私の

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「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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