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大魔術師が転移の魔術を教えてくれました

ここまで読んで頂いてありがとうございます。


王女はそれから私には接触してこなかった。それが何か不気味だったが、魔術訓練や王太子妃教育、演劇の練習も大変で、私はそれどころではなかったのだ。


その週の、魔術実技の時間、定刻前に珍しくガーブリエル様がいらっしゃったのだ。

いつも絶対に遅れていたのに・・・・。私が定刻にグランドに行くと、ガーブリエル様が待っておられのだ。それも不機嫌そうにして・・・・。


「すいません。こんなに早くいらっしゃるとは思ってもいなくて」

私はすぐに謝った。


「アンも、まだまだじゃの」

ぶすっとガーブリエル様が言われるんだけど・・・・。でも、自慢じゃないけど、前までは早めに来ていたのだ。でも、ガーブリエル様が時間通りにいらっしゃることなんて一度もなくて、そのたびにルンド先生の所に頼みに行っていたのだ。それが続くと流石に少し遅めに行ったほうが良いとなるではないか。私的には・・・・。


でも、せっかく火の玉が降りまくり、天の岩戸状態の魔術の塔の部屋からガーブリエル様を引きずり出して、皆に感謝されたばかりだ。ここでへそを曲げられて、また籠もられると下手したら王宮中に火の玉が振って大変なことになる。


「すみません」

私はとりあえず謝るしか無かった。


「ふんっ、まあ、良いわ。今日はどうしようか悩んだのじゃが、その方に転移の魔術を教えようと思っての」

「えっ、転移ですか」

私は驚いた。


「何じゃ、嫌なのか」

「いえ、それは習いたいです! でも、私の魔力で大丈夫なのですか」

ガーブリエル様が不機嫌になったので、私は慌てて言い切った。転移が習えるなら、それほど便利なことはないし、王宮への行き来も、フィル様やエルダ達に頼る必要がなくなるのだ。迷惑をかけたくない私としてはこれほど嬉しい事はなかった。


「その方なら大丈夫だろう。この魔術は転移している途中に邪なことを考えると座標が狂うことがある。それさえ気をつければ問題はない」

ガーブリエル様がおっしゃるんだけど。そんなものだろうか?


「転移はその方の母も得意とした魔術じゃ。その娘のアンも問題なく習得できよう」

母様が死ぬ前に私を転移で逃してくれた事は、皆から聞いていた。でも、出来たらその時に一緒に逃げてくれたら良かったのに、と私的には思わないでもなかったのだが・・・・。


「良いか。アン、この魔術を使う時は他のことを考えてはいかん。まず、場所か人を思い浮かべるのじゃ」

「はい」

「そうじゃな。まず、見える所での。まず、あの校舎の傍の桜の木の下が良かろう」

「はい」

「思い描けたか」

「はい」

「次いで『転移!』と叫ぶのじゃ。イメージ的には瞬間で移動する事を念じるのじゃ」

「はい」

なかなか難しそうだ。


「ではまず儂がやってみるぞ。アンは見ておれ」

「はい」

私は頷いた。


ガーブリエル様が瞳を閉じると「転移」

と叫ばれた。


一瞬でガーブリエル様は消えられて100メートルくらい離れた桜の木の下に転移された。


何度見ても凄い!



そして、また、一瞬で帰ってこられた。


「どうじゃ」

「凄いです!」

私は掛け値なしに称賛していた。


「そうかの。こんなのは大したことではないが」

満更でもなさそうにガーブリエル様が頭をかかれた。


「まあ、詠唱は必要はないが、慣れるまではできる限りしたほうが良かろう」

「はい」

私はガーブリエル様の言葉に頷いた。


「まあ、この転移は難しいからの。その方の母は出来るまで一ヶ月くらいかかりおった。ヴィルマルなど何回練習しても未だに出来ぬ奴もおるし、出来ぬでも落ち込むでないぞ」

自慢タラタラガーブリエル様がおっしゃっていらっしゃる中で、私はやってみることにした。


桜の木の下を思い描いてワープの要領で「転移!」と大声で叫んでしまった。


ぐにゃっと空間が歪む感じがして次の瞬間には桜の木の下に立っていた。


「やった出来た。出来ました」

私は授業中にもかかわらず、喜び勇んで叫んでいた。


「シャーリーさん。授業中です。静かに」

教室の窓が開いて、ルンド先生が注意してきた。

「す、すいません」

私は慌てて頭を下げた。


そして、そのまま、ガーブリエル様の前を思い描いて「転移!」

と叫んでいたのだ。


「シャーリーさん」

窓から再度、顔を出したルンド先生は私がいないので慌ててそこらをみて、私がグランドの中央にいるのに唖然としていたが。


「えっ?」

私の目の前には呆然と突っ立っていたガーブリエル様がいた。


「ガーブリエル様、出来ました」

私は抱きつかんばかりにガーブリエル様に寄った。


「な、なんと・・・・儂でも出来るまでに1週間かかったのに、瞬時に出来るようになるとは・・・・」

ぶつぶつガーブリエル様が言っている。


「これも、ガーブリエル様の教え方がお上手だからですわ」

珍しく私はヨイショが出来た。いつもはたまには先生にヨイショしなさいよとエルダとかに注意されているんだけど。


「そうじゃの。師である儂が優秀じゃからじゃ。うん。そうに違いない」

ガーブリエル様が何か懸命におっしゃっていらっしゃるんだけど、私は転移ができた嬉しさでそれどころではなくはしゃぎまくっていた。


後でルンド先生に「はしゃぎすぎです」とお小言を小一時間拝聴する羽目になるほどに・・・・




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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

この続きの物語

はこちら

『転生して悲劇の王女になったつもりが魔王でした! 勇者から斬りつけられて素手で殴り返した、前世コミュ障引き籠りだった弱小王国王女の帝国建国物語』

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ついにブルーノとの決戦です。

私の

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「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
― 新着の感想 ―
転移と書いてあったら『wizardry』における転移呪文 MALOR マロール って読んでしまいます。。 うっかりして *いしのなかにいる* にならないようにね。
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